MM総研大賞2022 話題賞電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」
株式会社Luup

2022年07月22日

密度を高めることで圧倒的な利便性を実現

 

公共交通機関の空白地域における利便性をいかに高めるか。長年の課題に対するひとつの解として、自転車や電動キックボードのシェアリングサービスの普及が全国各地で始まっている。その中でもとりわけ話題を集めているのが電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」だ。全国5都市の都心部に約1,300カ所のポートを設置。競合他社を圧倒するポートの密度でユーザーから高い評価を受けている。

展開エリアにおける「ポート密度」を重視

Luup(東京都渋谷区)の代表取締役社長 兼 CEOである岡井大輝氏 は大学在学当時より、日本の少子高齢化によって発生する諸問題を解決するビジネスを展開したいと考えていた。試行錯誤の結果たどり着いたのが電動マイクロモビリティのシェアリングサービスだった。日本の都市は鉄道を中心に発展している。そのため駅から離れたところに住む高齢者は交通弱者になりがちだ。そうした高齢者でも手軽に利用できる移動手段を提供できれば、住民生活の質を高められるのではないか―。このアイディアをサービスとして具現化したのが「LUUP」となる。2020年5月に電動アシスト自転車のシェアリングサービスからスタートし、翌2021年4月には実証実験として電動キックボードの導入を開始した。

「LUUP」が最もこだわっているのは展開エリア内における「ポート密度」だ。マイクロモビリティの発着拠点となるポートはサービスの利用者数、利用頻度を高めるために最も重要だと同社は認識している。出発地や目的地の近くにポートが無ければ結局徒歩の距離が長くなり、マイクロモビリティを利用する意味は薄れるからだ。ポートの数だけ増やしても、他のポートと離れすぎていたり、利用者がほとんどいない場所に設置しても意味はない。そのためまずは都心部に高密度にポートを設置することに注力したという。現在「LUUP」は全国5都市の都心部に約1,300のポートを設置している。この方針はユーザーからも支持を集めており、同社が独自に行ったアンケート調査でも「LUUP」を利用している理由の第1位として「ポート数が多いから」が挙げられている。

安全な交通インフラをめざした施策を展開

2022年4月に道路交通法の改正が国会で成立。一定要件を満たす電動キックボードが「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分に位置付けられることとなった。これによって16歳以上であれば、免許不要で乗車が可能となるなど、「LUUP」をはじめとした電動キックボードのシェアリングサービスの普及に弾みがつくことが期待される。

一方でこのルール整備によって、危険運転や交通事故が増えるのではないかという不安の声が上がっているのも事実だ。「LUUP」ではこうした懸念を払拭すべく、様々な施策を実施している。具体的には全利用者に対して事前に警察などが作った安全講習テストを「LUUP」のアプリ上で実施しており、全問正解しないと利用できない仕組みを取り入れている。また、実際に「LUUP」利用中に悪質な違反を行った利用者に対しては、警察と連携して違反行為の確認が取れ次第、一発でアカウントを永久凍結する措置を取っている。さらに展開エリアの住民を対象とし、地元警察などと連携し実施している安全講習会や、人通りの多いポートにスタッフが常駐し、乗り方やルールを案内する「ポートガイド」を定期的に実施している。同社は安全な交通インフラの実現に向けた施策を今後も継続していく予定だ。

全ての人が利用可能な新しい交通インフラをめざす

現在「LUUP」のサービス展開は都心部のみに留まっており、利用年齢層も20~30代の若年層が比較的多い。構想当時に理想とした高齢者も利用できる交通インフラになっているとは言い難い。今後は高齢者も含めた全ての人が利用可能な新しい交通インフラを実現すべく、取り組みを進めていく計画だ。

まずは展開エリアの拡大である。都心部のサービス展開で得たデータや知見を活かし、今後は郊外や地方都市、観光地などへも順次サービス展開地域を広げていく。人口や季節に合わせて需給のバランスを柔軟に整えられるというマイクロモビリティの強みを最大限に発揮したい考えだ。

将来的には、利用者一人ひとりに合わせた機体・走行条件にすることが可能なユニバーサルなマイクロモビリティ機体の導入も検討していく。年齢に応じて最高速度などが変化したり、足腰に不安のある高齢者は椅子に座して乗車可能な機体を構想している。

 

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2022年度の今回が19回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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