MM総研大賞2021 審査委員賞「AI体操採点システム」
富士通株式会社

2021年07月19日

AIを活用した採点システムの開発により体操競技の採点の公平性に貢献

 

富士通が開発した「AI体操採点システム」は、3Dセンサーでのデータ取得、骨格認識、「技の辞書(データベース)」とのマッチングまでの一連の処理が可能なシステムで、2019年より国際体操連盟で正式採用されている。高度な審判技術を必要とする体操競技では、技の複雑化に伴い「人間の目」だけでは公正な判断が難しいケースが増えている。そのため、富士通では審判員の判断を支援するAIを活用した採点システムの開発を推進。体操競技の採点の公平性に貢献する点が、審査委員に高く評価され審査委員賞を受賞した。

 

三次元データをDBと照合して、自動採点を実現

AI体操採点システムは、選手の身体にマーカーを取り付けることなく計測できるのが大きな特徴だ。取得した選手の3Dデータから骨格を当てはめるアルゴリズムを独自開発し、関節位置の三次元データを取得。それを技の辞書(データベース)と照合することでAIによる採点を実現している。

技の辞書(データベース)は、まず国際体操連盟や日本体操協会協力のもと、国内外のトップアスリートのデータを各種の大会や練習場所で収集した。そして国際体操連盟の審判長とエンジニアの合同チームが採点規則のデジタル化や見るべきポイントの可視化をし、それをもとに富士通が完成させた。

これまでは目視で確認していた体操競技の採点を審判員側の採点シートUIに自動表示させることで、公平な採点をサポートするほか、練習時にも選手の身体角度の細かな確認が可能になった。

同システムは、2019年に体操5種目対応のシステムをリリースし、2024年までにさらに5種目を追加することで、合計で体操10種目に対応させる計画だ。2020年11月に東京都渋谷区の国立代々木競技場で開催された国際大会では、実際に同システムが自動で採点した結果を審判に提供し、公平な採点の実現に貢献した。

富士通はレーザー照射をコントロールする独自技術を保有しており、その技術が同システムにも採用されている。世界初の取り組みを迅速に世の中にリリースしていくためには、研究分野の技術者とマーケットに接しているエンジニアが、一体となって開発に取り組むことが重要だ。

スポーツ領域で国際標準化を推進、社会課題解決にも

スポーツには「する、観る、支える」という3つの関わり方がある。AI体操採点システムは、まずは「支える」部分から貢献している。スポーツは国際的なルールが決まれば全世界へシステムを提供することができる。スポーツの肝は採点であり、そこからしっかりと導入を進めていくことが、DX推進という意味でも重要だと富士通は認識している。システムによる採点が進めば、リモートによる国際大会の開催も可能となり、あらゆる国の選手に競技への参加機会を広げることができる。今後は、採点利用に加え、各国のナショナルトレーニングセンターや、全世界の大学・クラブチーム向けにもトレーニング用途、すなわち「する」という部分でもシステムの提供を予定している。「観る」という部分では、観戦者へ競技の魅力を判り易く伝えるために、システムから得られたデータを活用していく計画だ。こうした一連の流れがスポーツの産業化推進のために重要だと考えている。国際体操連盟に加入している世界146カ国への統一した仕組みのオファリングは、富士通の中でもこれまであまりなかった取り組みだ。

スポーツ領域において国際標準化や日々の練習におけるデータ活用の普及を図りながら、さまざまな企業、分野に拡大させていくことが、社会課題解決に向けた富士通の役割だと考えている。富士通は、スポーツのインテグリティを向上させ、全世界に普及させていくことと同時に、スポーツを取り巻く市場全体に貢献していく考え。

富士通グループのパーパスである、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、社会に対する約束であり、社会の動きに対する社員の共感を高めるために設定したテーマだ。今後も富士通は、技術によって社会に信頼をもたらし、持続可能な社会の実現に貢献していく。同システムもスポーツ領域に加え、他分野(教育・産業現場・ウェルビーイング・アウェアネスなど)への拡大を幅広く進めていき、次世代のスマート社会の実現に貢献していく考えだ。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。