MM総研大賞2021 〈スマートソリューション部門〉 デジタルツイン分野 最優秀賞AIデータプラットフォーム「Cognite Data Fusion」
Cognite株式会社

2021年07月19日

分断されたデータの統合・紐づけを実現しデジタルツインの構築を支援

 

現存する工場や製造設備などをそのまま仮想空間上に再現させる技術が“デジタルツイン”だ。製造現場などにおけるプロセスの最適化や遠隔監視を実現するソリューションとして世界中で導入に向けた動きが加速している。このデジタルツイン分野で最優秀賞を獲得したのがCogniteのAI データプラットフォーム「Cognite Data Fusion」だ。石油・電力などのエネルギー産業を中心に世界的に導入が進んでおり、日本でも導入に向けた動きが本格化しつつある。

 

遠隔地にいるロボットの撮影データを利用して、デジタルツイン上で運用保守している

欧州SaaS系企業として最大級の資金調達

Cogniteは2016年にノルウェーで誕生した産業向けのソフトウェア開発会社だ。創業者のジョン・マーカス・ラービック氏は大手企業向けに検索エンジンを提供するファストサーチ社(後にマイクロソフトが買収)の創業者などを歴任している。親会社はノルウェーの石油大手Aker BPで、石油価格の長期低迷の中、デジタル化に活路を見出そうと考えていた。この親会社向けにCogniteが独自開発したのがデジタルツインの構築を可能とするAIデータプラットフォーム「Cognite Data Fusion」(以下、CDF)だ。

Aker BP向けの導入から現在では石油メジャーのBP、エクソンモービルに加え、Saudi Aramco, HESSなどのエネルギー企業や製造業などを中心に導入企業が増加。世界のGDPの20~30%を占める重厚長大産業のデジタル化への動きが加速する中で、Cogniteが提供するソリューションへの期待と評価は年々高まっている。2021年5月には、未公開企業向けの世界的な投資機関TCVより1億5,000万ドルの投資を獲得。この投資額は欧州のSaaS企業としては最大級であり、母国ノルウェーでも大きな話題となっている。

分断された膨大なデータの統合・紐づけを実現

Cogniteが提供するCDFの最大の特徴は工場などに存在する分断されたデータの統合、紐づけを実現する点だ。製造現場では個々の工場単位や複数の工場にまたがってデータが存在する。管理するシステムも非常に多岐にわたる。提供ベンダーも複数存在し、フォーマットもバラバラだ。

この分断された膨大なデータを集約・統合し、紐付けを実現するのがCDFだ。データの集約では、既存のCADデータなどに加え、現地作業員、ドローンや無人の自走ロボットなどが撮影した写真・映像データなども利用可能でデジタル技術により3次元化する。この3次元化されたモデルへ各種機器の情報を紐付ける。これによりベンダーの垣根を越えて、各種設備の稼働状況を把握できるようになる。CDFではこれらのデータをリアルタイムに可視化するダッシュボードやAI分析ツールの提供に加え、ほかのアプリケーションでもデータを活用できるようにAPIなどを公開している。

デジタルツインの構築で得られるデータはさまざまな分野で活用できる。その一つがメンテナンス業務の効率化だ。機器の状態をリアルタイムに把握することで故障の予兆を察知し、事前に部品を交換することや、効率的なメンテナンス計画も立てやすくなる。親会社のAker BPでは、Cogniteのソリューションを導入し、北海油田にある原油採掘現場の遠隔監視を実現。ノルウェー沖にある現場までエンジニアが行く機会を大幅に削減した。メンテンナスも従来の定期的に耐用年数が来たら部品を交換するやり方から、装置の動作状況などから故障の予兆を察知し、事前に交換するというやり方に変わった。これにより無駄なパーツ交換や偶発的な停止も削減でき、メンテナンスコストを大幅に低減させることに成功したという。

日本市場での展開

日本法人の設立は2019年11月で、Cogniteの海外拠点としては米国テキサスに次ぐ拠点となる。日本市場では、大手総合商社とその関連するプラントエンジニアリング会社との協業を軸にした事業展開を推進している。グローバルでの実績もある石油・化学プラント向けを手始めに、製造業や通信業などターゲットとした事業展開を進めていく方針だ。日本の産業界におけるDXの動きをけん引し、競争力強化や生産性向上につながるソリューションを提供する企業として、世界市場と同様に日本での存在感を高めていくだろう。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。