MM総研大賞2021 〈スマートソリューション部門〉 次世代社会インフラ分野 最優秀賞「IOWN 構想」
IOWN Global Forum

2021年07月19日

光の技術で次世代の通信・コンピューティング融合インフラを実現

 

現実世界の人やモノの膨大なデータを収集し、仮想空間でシミュレーションして将来を予測するサイバーフィジカルシステム。社会課題の解決や新ビジネスの創出などに活用が進められているが、データ量・処理量・電力消費量の爆発的増加やネットワークの遅延などの問題が顕在化している。光電融合技術、光通信技術で、従来のインフラの限界を超えた高速大容量通信、大規模高速処理を可能とする計算リソースの提供を実現するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想。次世代のコミュニケーション基盤としての将来性が高く評価され、スマートソリューション部門の次世代社会インフラ分野で最優秀賞を受賞した。  

 

 

IOWNのユースケースとテクノロジーコンポーネント

サイバーフィジカルシステムを構築

IoTなどで収集した現実世界の膨大なデータを処理し、仮想空間に再現するデジタルツイン。仮想空間上でシミュレートした結果を現実世界にフィードバックして社会や産業の課題を解決する。このサイバーフィジカルシステムを従来のインターネットやクラウドで構築すると、サーバインフラの肥大化やネットワークのパフォーマンス不足が生じる。

光電融合技術、光通信技術の革新により、ネットワークを進化させる方法が見えてきた。IOWN構想では、ネットワークから端末まで、すべてに光の技術を導入し、オールフォトニクス・ネットワークを実現する。ユーザーごとに光の波長パスを作り、ネットワークにつながる端末までダイレクトに提供。さらに、端末の中のコンピューティングユニットにも光の技術を使い高速大容量、低遅延の通信を実現。電力消費量も大幅に削減できる。サイバーフィジカルシステムを構築する上で、TCP/IPネットワークやPCI-Expressコンピュータアーキテクチャが抱える課題を解決するものだ。

TCP/IPネットワークは、バケツリレー方式のネットワークで、多数の端末とAny to Anyに自由にデータ交換する際に便利な仕組みだ。ただし、決まった相手とデータを送受信するような場合は、Point to Pointでリンクを張りパイプライン輸送のようにデータを送る方が効率的だ。このコネクションオリエンテッドなネットワークがIOWNのデータ伝送の仕組み。

端末に近いエッジネットワークではPoint to Point のリンクの方が合理的なユースケースが増えている。例えば、商業施設で800 台のカメラを運用するケース。800 台の映像データをクラウドでAI 分析するには48Gbps のネットワークが必要。全ての映像データを送信するのは難しいので、画質を落としたり、分析対象のカメラを減らしている。これではデジタルツインで高精度の予測を行うことはできない。IOWN ならAI 分析に必要な高精細映像を圧縮せずに送信できるようになる。

2030年の本格的な普及をめざす

2020年1月NTT、インテル、ソニーが、コミュニケーションの未来をめざして「IOWN Global Forum」を設立した。あらゆるものがつながるスマートな世界を実現するために、新規技術、フレームワーク、技術仕様、リファレンスアーキテクチャを開発し、新たなコミュニケーション基盤の実現と普及をめざす。現在、アジア、米州、欧州の58企業・団体(2021年6月時点)が加盟。ボードメンバーには通信事業者の中華電信、オレンジをはじめ、通信機器メーカーのエリクソン、富士通、IT・クラウドサービスのデル、マイクロソフトが名を連ねる。通信、コンピューターアーキテクチャ、クラウド、センシングデバイスなど、幅広い分野のテクノロジー企業とトヨタ自動車、味の素、日揮などのユーザー企業が参加している。

IOWN構想を実現するための技術開発を推進するとともに、ユースケースを作り、リファレンス実装モデルを示していく。2021年2月と6月にユースケース文書の中間レポートをリリースし、2021年4月に技術文書をリリースした。また、12月には新たなアーキテクチャを定義し、今年度中にIOWNのリファレンス実装モデルを示していく予定だ。ユースケースとしては、スマートシティ、スマートファクトリー、エンターテインメントが期待される。2025年に第一次成長期を作り、2030年には本格的な普及をめざしている。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。