公共放送から公共メディアへ

NHKプラスは地上波放送（NHK総合とEテレ）の同時配信と見逃し番組配信をインターネット回線上で実現した。7月末時点でID登録申請は約84万件、登録完了は約70万件と大きく利用者数を増加させている。

同協会は現3か年計画の重点方針として「（放送を太い幹とした情報サービスを提供する）公共メディアへの進化」を標ぼうしている。これを実現するために重視しているのが放送に加えインターネットや新しい技術を積極活用し、情報の社会的基盤としての役割を果たすこと。そのために世の中の課題や最新情報、信頼できる情報を、早く深くわかりやすく提供したい、新しいプラスの価値を体験してもらいたいとの思いがNHKプラスには込められている。

■ 通信との融合で新機能を実現

NHKプラスでは地上波放送（NHK総合とEテレ）のリアルタイム視聴、見逃し視聴に加え、追いかけ視聴も利用できる。現在は1日18時間程度のネット同時配信だが、今後24時間常時同時配信への拡張も可能性がある。

実際の利用方法はリアルタイム視聴に限れば、パソコンのブラウザでアクセスするかスマートフォンアプリのダウンロードが済めばすぐに利用できる。しかし画面の1/4ほどは利用登録を促すメッセージが重なり、フルサービスでの利用は放送受信契約者と、同一生計の家族などが対象者になる。アプリもしくはブラウザ上の登録画面で必要事項を入力すると見逃し配信を含むフルサービスの利用ができ、契約住所に確認コードが記載されたはがきが届き、これを入力することで登録が完了する。サービスを利用する上での追加料金は発生しない。家族で利用する場合は、NHKプラスのIDとパスワードを共有し、各自スマホアプリやPCサイトから入力することで視聴できる（同時視聴上限は5画面まで）。映像の解像度は最大で960 × 540ドット、通信速度では1.5Mbps と、モバイル回線からでも十分閲覧可能な容量だ。

「見逃し視聴」「追いかけ視聴」機能はNHKプラスの強みといえる。「見逃し視聴」は、番組放送終了後から7日間、録画なしにその番組を、いつでも何度でも視聴できる。「追いかけ視聴」は、番組開始後、好きな場面から視聴できる。これらの機能にも追加料金はかからない。テレビでは実現できなかった番組視聴の形を新たに「プラス」し、視聴者の体験を向上させることが狙いだ。また一部のニュースの見逃し番組では、ニュース項目を選んで視聴することもできる（画像参照）。番組検索もジャンル別やキーワード入力、カレンダータップと多様な種類を用意しているが、これらをタッチパネルのスマートフォンで直感的に動作可能だ。こうした機能は通信と放送が融合したからこそ実現した機能といえるだろう。

■ 視聴者に寄り添った機能開発へ

今回のNHKプラスの実現は試験的な提供・検証を重ね5年もの歳月をかけ産み出された。ローンチに至る苦労もインターネット活用業務実施基準の改定、設備の調達、アプリの開発などさまざまな面で生じたが、それらの準備を放送、技術、営業など幅広い部門がオールNHKとなり、サービスインの目標を共有して取り組むことで解決した。特にこだわったのはテレビ放送で実施した字幕・副音声をNHKプラスでも同様に提供すること。このほか、見逃し番組を放送時刻表に合わせて提供するだけではなく、視聴者の関心に合わせて、さまざまな軸で編成できるプレイリストを導入し、日々更新するなど視聴者に寄り添った運用を心がけた。

課題は人によってID登録が難しいと感じてしまう点。NHKではこの点をよりわかりやすいものに改善していく構えだ。今後は番組ホームページ上のドラマの役柄説明や番組の内容理解に役立つ情報などのさまざまな補足情報から関連する番組の同時・見逃し配信に容易にアクセスできるようにしていくことを検討している。NHKプラスでは視聴者の意見に寄り添った新機能サービスを充実させ未来の放送の在り方を模索する。

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「ＭＭ総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、ＭＭ総研が2004年に創設した表彰制度です。2020年度の今回が17回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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