MM総研大賞2020 〈スマートソリューション部門〉モバイルネットワーク分野「完全仮想化ネットワーク」
楽天モバイル株式会社

2020年09月11日

グローバル展開も見据えた 新世代モバイルネットワーク

 

楽天モバイル株式会社の「完全仮想化ネットワーク」は、無線アクセスネットワークから コアネットワークまでのエンドツーエンドが、世界で初めて完全に仮想化※され、ネットワー クとオペレーション双方が自動化したクラウドネイティブモバイルネットワーク。他の通信 事業者が仮想化ネットワークを構築するためのプラットフォームソリューション「Rakuten Communications Platform」として、グローバルに展開する計画も進めている。
※大規模商用モバイルネットワークとして(2019年10月1日時点)/ステラアソシエ調べ

自社エリアの全国展開も好調に進む見通し

2020年4月8日に携帯キャリアサービスを本格開始した楽天モバイルは、月額2,980円(税抜)で楽天回線エリア内でのデータ通信と、「Rakuten Link」を使用した国内通話が無料で利用できる「Rakuten UNLIMIT」プランや、eSIMやFeliCa搭載のオリジナル端末「Rakuten Mini」、300万人限定で1年間の月額料金無料キャンペーンなどで注目を集め、6月30日には申込者数が累計100万回線を突破した。20年秋には5Gサービスを提供開始する予定だ。

自社回線エリアは東名阪を中心に展開し、カバーできていないエリアはパートナー回線に接続するかたちでサービスを提供しているが、基地局は6月末時点で5,739局が開設・電波発射済みで、さらに7,487局が契約締結済みとなっている。基地局の建設ペースは2021年3月までに人口カバー率70%、同年夏ごろには96%をめざす。

ネットワークの完全仮想化により

5Gレディの高い柔軟性を実現同社の通信ネットワークは無線アクセスネットワークからコアネットワークまでエンドツーエンドで完全に仮想化し、ネットワークとオペレーション双方を自動化している。ネットワークを完全仮想化することには大きく①専用ハードウェアからの脱却、②シンプルで柔軟性の高い基地局構成、③5Gへ迅速に移行できるシステム構造――というメリットがある。

従来、携帯キャリアがネットワークを構築する際は専用のハードウェアが必要だったが、仮想化技術によりソフトウェア化し、汎用のハードウェアをソフトウェアで稼働させる仕組みを構築した。これにより、ハードウェアにかかるコストを抑えつつ冗長性を備えたネットワークを構成できるため、一部のハードウェアに障害が発生しても自動的に代替機へと切り替わり安定してサービスを提供できる。

基地局を設置する場合も同様で、複数の専用ハードウェアが必要な無線アクセス機能をエッジデータセンターに移行することで、設備数を抑えた小型で省スペースな基地局構成を実現。建設と運用にかかる時間やコスト削減につなげている。また、ハードとソフトを分離させたことにより、コアネットワークや無線ネットワークのソフトウェアアップデートを行うだけで4Gから5Gへと移行できる。5Gサービスで求められる超高速・大容量・低遅延通信を仮想化技術によるマルチアクセスエッジコンピューティングやエンドツーエンドのネットワークスライシングによって提供していく。

米社買収などグローバル展開動き出す

自ら構築する完全仮想化ネットワークのシステム自体をプラットフォームサービスソリューション「Rakuten Communications Platform(RCP)」として提供する仕組みを開発している。提供内容は仮想化モバイルネットワークの構築技術や知見、ネットワーク運用支援システム、ビジネス支援システム、エッジコンピューティング技術などで、顧客としては世界中の政府や自治体、他の通信事業者などを想定している。

サービスのグローバル展開に向けた開発強化の一環として2020年5月にクラウドプラットフォームの自動化システムなどを提供する米イノアイ社を買収し、ネットワーク運用ソフトウェアの開発技術と開発チームを取得。同6月にはNECとコンテナ技術を導入したスタンドアローン方式の5Gコアネットワークの共同開発をすすめることや、シンガポールに携帯キャリアサービスの国際サービス提供拠点と、RCPの開発センターおよびグローバルでの販売・マーケティング本社として子会社を設立することを明らかにした。今後米国における販売・マーケティング拠点としてカリフォルニア州に子会社を設立する予定だ。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2020年度の今回が17回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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