MM総研大賞2020 〈スマートソリューション部門〉次世代ネットワークサービス分野「モバイル空間統計」
株式会社NTTドコモ

2020年09月10日

いつ、どんな人々が、ドコから、ドコに動いたかがわかる
新たな人口統計

 

NTTドコモの「モバイル空間統計」は携帯電話ネットワークの仕組みを利用した人口増減を示す人口動態情報だ。1時間ごとの人口を24時間365日把握できる。調査エリアに「いつ」「どんな」人がいるか、その人たちは「どこ(居住地)から」「どこに」移動したかなどがわかる。ドコモの国内契約台数約8000万台のデータに加え、訪日外国人約1,200万台の運用データを元に日本全国の人口統計情報を作成している。新型コロナウイルス感染症対策としてエリアごとの人口増減率を公表し注目を浴び将来性が高く評価された。

防災計画、地域活性化、まちづくりを目的として開発

モバイル空間統計は、ドコモ基地局の運用データを活用して、地域ごとの人口の分布や性別、年代、居住地を把握できる高精度な人口統計情報。携帯電話ネットワークは電話やメールなどをいつでもどこでも利用できるように、各基地局は携帯電話の在圏状況を把握している。この仕組みを利用して携帯電話の台数を集計。ドコモの普及率を加味することで人口を推計している。利用するデータは、利用者のプライバシーを守るために秘匿処理を済ませて活用している。1時間ごとの人口を24時間365日500mメッシュ(都市部は125~250mメッシュ)から把握できる。訪日外国人についてはローミング情報を元にどこの国から来てどこに移動しているかを把握可能だ。

2010年頃から大学や自治体などと連携し実証実験を続けてきた。主に、防災計画、地域活性化、まちづくりの3つの分野にフォーカスを当てそれぞれの有識者と一緒に有用性を探ってきた。工学院大学(本部新宿区)との防災計画に関する共同研究や自治体との帰宅困難者数調査、商業実態調査、観光客の実態調査などの実証実験を積み重ねた結果、有用性がわかり2013年10月にサービス開始した。特徴はドコモの国内契約台数約8000万台、訪日外国人約1200万台という圧倒的なサンプルサイズに支えられた統計的信頼性の高さだ。

新型コロナウイルス感染症拡大対策で活用

新型コロナウイルス感染症対策特設サイトは全国主要エリアの人口増減率を日次で掲載するほか、その関連データをダウンロードできる。5月には検索開始から1時間前の人口分布状況がわかる人口マップを公開した。前年同月との比較が可能となっており、全国約1500エリアではさらに詳細な統計情報が閲覧できる。公開は2021年3月31日までを予定しており、無料で閲覧できる。あわせて、都道府県をまたぐ移動自粛解除後の土日を対象に、居住地情報の都道府県と異なる地域に「滞在」していた人口を集計し、「県間移動人口」として分析、レポートを公開している。

内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策HPにデータを提供して公開しているほか、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議でもクラスター対策班でモバイル空間統計を用いたエリア/時間帯/年齢接触頻度減少率の分析を実施し公開している。統計の活用で人々の動きがどのように変わったのかを客観的数字で示せるようになった。訪日外国人の増減などを客観的数字で把握し、経済活動の回復度合いを調べることにも活用できるだろう。

タクシー需要予測などソリューションも提供

人口統計のデータのみではなく、ソリューション提供にも力を入れている。人口統計を活用しタクシーの需要予測をしている。モバイル空間統計の国内人口分布統計リアルタイム版にタクシー運行データなど多様なデータをドコモのAI技術により分析し、需要を予測する。需要予測により効率的な運行を実現している。実証実験では売り上げが向上した。現在は日本全国で拡大提供中。

まだ実証実験中ではあるが、AIによる渋滞予知も始めた。行楽地等への人出の多さが「帰りの渋滞」の発生有無や規模などの交通状態に影響をあたえることに着目。「国内人口分布統計(リアルタイム版)」に基づいて、交通状態を予測する。人口と交通状態の関係を学習してパターン化した「交通状態予知モデル」に当日の人口分布を当てはめることにより、帰宅時間帯の交通状態を予測する。今後は、パートナー企業のビッグデータと連動させるなど、AI技術を掛け合わせることで新たなソリューションを創出していく。

● 新型コロナウイルス感染症対策特設サイト
https://mobaku.jp/covid-19/

● モバイル空間統計人口マップ
https://mobakumap.jp

● 都道府県をまたぐ移動自粛解除後の県間移動人口分析

https://mobaku.jp/covid-19/download_kenkan/20200621_kenkan_report.pdf

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2020年度の今回が17回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。