パブリッククラウドの国内市場は1兆円を突破

「国内クラウドサービス需要動向調査」(2021年6月時点)

2021年07月15日

■2020年度のクラウドサービスの市場規模は前年度比22%増の2兆8750億円

■このうち、パブリッククラウドは1兆円超す

■顧客へのサービス提供基盤として50%超の企業が「AWSを利用」と回答

■オフィス外での利用を想定したセキュリティへのニーズが高まる

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は企業の情報システム担当者を対象にWebアンケート調査を実施し、2021年6月時点の国内クラウドサービスの市場動向をまとめた。対象は国内企業28,868社。その中から、パブリッククラウドサービス(PaaSもしくはIaaS)を導入済み、もしくは導入を検討している1,182社については、さらに詳しく分析した。

 調査結果を基にした拡大推計によると、2020年度のクラウドサービスの市場規模は2兆8750億円で、前年度比22.0%増と拡大基調が続いている(データ1)。昨年に引き続きオンプレミスからクラウドへの移行に加え、クラウドネイティブなシステム開発が盛んに進められ、市場全体で高い成長率を維持することとなった。

 【データ1】国内クラウド市場 実績と予測

2020年度クラウドサービス市場2兆8750億円のうち、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)などパブリッククラウドの市場規模は1兆932億円となり、はじめて1兆円を突破した。パブリッククラウドの活用機会が増え、マルチクラウド・ハイブリッドクラウド化が進展している。今後は企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の本格化が予想されており、パブリッククラウドへの移行が一層進むと見られる。2025年度にはパブリッククラウドの市場規模が約3.1兆円に達すると予測する。一方、プライベートクラウド(コミュニティクラウド、デディケイテッドクラウドなど)の2020年度市場規模は1兆7818億円となった。また、2025年には約3.5兆円、年平均成長率(CAGR)は14.5%と予測した。 

顧客へのサービス提供基盤でのAWS、Azure、GCPの利用拡大が進む

PaaS利用者全体のうち、AWSを使用しているとの回答は37.4%、Azureは30.6%、GCPは15.9%という結果となった。IaaS利用者全体ではAWSが40.3%、Azureが26.3%、GCPが13.7%という結果で、大手クラウド3社の利用率の高さが目立った。 

企業が主にPaaS/IaaSを利用して開発・運用するシステムを5種類(※)に分類し、それぞれにどのクラウド事業者のサービスをより多く利用しているかを分析した。大手クラウド3社の利用率比較では、特に「顧客へのサービス提供基盤」の場合、PaaSではAWSが53.4%、Azureが37.1%、GCPが19.0%という結果となった。また、IaaSではAWSが61.7%、Azureが39.3%、GCPが15.9%であった。(データ2)。一方、「基幹系財務会計システム」や「基幹系人事給与システム」といった企業活動の根幹を支えるシステムには、大手クラウド3社の利用率が比較的低いという結果が示された。大手クラウド3社にとっては、企業活動の中核を担う基幹系システムへの採用に向けた戦略が今後は重要になる。 

(※)「基幹系財務会計システム」、「基幹系人事給与システム」・「基幹系生産・販売・調達システム」、「情報系システム」、「顧客へのサービス提供基盤」の5種類に分類した。


 【データ2】主にPaaS/IaaSを利用するシステムへのAWS、Azure、GCP利用率

 

 自社単独でのPaaS/IaaS運用には現場レベルで課題

PaaS/IaaSの運用・保守に関しては、約3分の2の企業が各システムの運用・保守業務の全部もしくは一部を外注している。これは、マルチクラウド・パブリッククラウドの普及よりシステム全体の管理・運用・保守業務が複雑化しており、現場レベルの対応では一部限界が見えているためだ。 

自社単独でクラウドを運用する場合に企業が課題に感じていることを確認すると、「PaaS/IaaS運用のノウハウ不足」が33.4%と最も多い。次いで、「社内の運用・保守リソースの不足」が26.8%、「障害発生時に相談できる相手がいない」が18.0%との結果になった (データ3) 。 

これらの結果から、リーズナブルな運用プランの新規開発や、PaaS/IaaSの運用・保守業務を支援する関連サービス市場の拡大などが予想される。

  【データ3】自社でクラウドを運用するときの企業が抱える課題(n=422)

 オフィス外でのクラウド利用を想定したセキュリティが強化される

クラウドサービスの利用拡大に伴い、約11%の企業がネットワークおよびセキュリティに対する支出額を10%以上増やしたと回答している。クラウドサービスに関わるセキュリティについては「従来より導入中のセキュリティ」として、53.3%の企業が「アンチウイルス導入」を、27.2%が「クラウドプロキシ/セキュアWebゲートウェイ(SWG)」を挙げている(データ4)。 

一方、「導入を検討しているセキュリティ」では、これらの項目の比率が低下するのとは対照的に、リモートワークなどに対応するセキュリティ対策の比率が高まった。具体的には「モバイルデバイス管理/シャドウIT可視化」が10.2%、「アップロード時のセキュリティ対策」が10.4%などである。セキュリティ上の境界が明確なオフィス外でのクラウド利用を想定し、従来の境界型セキュリティとは異なるアプローチによる対策が進むと考えられる。

 【データ4】 クラウド利用に伴い導入済みのセキュリティ機能と今後検討するセキュリティ機能 

 

■調査概要

1.調査対象:国内法人ユーザー
                  ―情報システム・ネットワークの管理・運用業務担当者
       ―情報システム等の導入にあたって、決裁や選定に関与する担当者
       ―ソフトウェアやシステムの開発業務担当者
2.回答件数:予備調査…28,868社、本調査…1,182社
3.調査方法:Webアンケート
4.調査期間:2021年6月18日~25日

※ 2021年9月3日に詳しい調査結果を含む「国内クラウドサービス需要動向調査(2021年度版)」の販売を開始しました。
https://www.m2ri.jp/report/market/detail.html?id=64

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