国内クラウド市場は2024年に5兆円超え

「国内クラウドサービス需要動向調査」(2020年5月時点)

2020年06月18日

■ 2019年度のクラウドサービスの市場規模は2兆3572億円

■ 大手クラウド3社の利用が拡大する中、AzureがAWSを猛追

■ 新型コロナで企業の約3割が「Web会議」をSaaSとして追加導入

概要

ICT 市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は企業の情報システム担当者を対象にWebアンケート調査を実施し、2020年5月時点の国内クラウドサービスの市場動向をまとめた。対象は国内企業39,115社。そのうちクラウドサービスを導入済み、もしくは導入を検討している1,741社については、さらに詳しく分析した。 

調査結果を基にした拡大推計によると、2019年度のクラウドサービスの市場規模は2兆3572億円で、前年度比21.4%増と大きく拡大した。2024年までの市場全体の年平均成長率(CAGR)は18.4%と高水準になる見通しである(データ1)。オンプレミスからクラウドへの移行が進むにつれて、クラウド利用を前提としたシステム開発を進める環境が整い、クラウドシフトに弾みがつく。大手企業ほどその傾向が顕著となっている。

  【データ1】 国内クラウド市場 実績と予測

データ1

また、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platformの大手クラウド3社のサービスを利用する企業は、引き続き増加した。特に2位のMicrosoft Azureが提供するPaaS(Platform as a Service)の導入企業が全体の39.0%となり、首位Amazon Web Servicesの48.3%との差を縮めた。

2019年度クラウドサービス市場2兆3572億円のうち、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)などパブリッククラウドの市場規模は8121億円と推計した。2020年度以降も市場拡大の勢いは止まらず、2024年にはパブリッククラウドの市場規模が約2.4兆円に達すると予測する。2024年までのCAGRは24.4%と高水準になる見通しで、パブリッククラウド市場だけで2019年クラウド市場全体と同規模にまで拡大することになる。オンプレミス環境をそのまま移行してから最適化するリフトアンドシフト方式の普及や、コロナ後の働き方の変化に伴うSaaS需要の高まりなど複数の要因による相乗効果が働くと見られる。

一方、プライベートクラウド(コミュニティクラウド、デディケイテッドクラウドなど)の2019年市場規模は1兆5451億円、2024年には約3.0兆円、CAGRは14.0%と予測した。

アナリストレビュー

「企業のリフトアンドシフトが進む中、新型コロナが促す働き方改革がクラウド市場成長の原動力となることが鮮明になっている。国内市場規模は2019年度にようやく2兆円に到達したが、そこからさらに2兆円を上積みするのに必要な期間は今までよりもはるかに短いものになると予想される」

詳細

◆大企業の87.2%がクラウド環境を利用したシステム開発を推進
今回の調査では、従業員規模に関わらず、7割を超える企業が新規システム構築に何らかの形でクラウドを利用すると回答した。また、旧来型の非クラウド(オンプレミス)環境だけで新たにシステム構築を行うとする企業は大企業(従業員1000人以上)では12.8%に留まり、クラウドサービスの活用が国内企業にも広く浸透していることを示す結果となった(データ2)

この背景には、政府調達での「クラウド・バイ・デフォルト原則」や金融機関での導入進展などにより、当初最大の懸念点とされたセキュリティへの不安が民間企業でも払拭され始めたことがある。また、仮想的に独立環境を作るコンテナ化技術やクラウドとオンプレミスを組み合わせて最適に使い分けるハイブリッドクラウド技術といった仮想化技術の発展もプラス要因である。

【データ2】 新規システムの構成方針データ2

◆AWS、Azure、GCP主要3ブランドの利用がさらに増加
Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure(Azure)、Google Cloud Platform(GCP)の大手クラウド3社の利用がさらに増加した(データ3)

PaaS市場では、3社すべての利用企業が増加した。特に2位のAzure、3位のGCPがともに前回の2018年度調査と比較して6.2ポイントずつ利用率を高めた。Azureは首位のAWSとの差を縮めた。PaaSは一般的に、クラウドネイティブな新規システム開発時のインフラとして選択される。

また、IaaS市場では、首位のAWSが前回調査から4.8ポイント利用率を高めて51.9%に達した。国内でIaaSを導入している企業のうち、半数以上がAWSを導入しているということになる。また、Azure、GCPもそれぞれIaaS利用率を高めた。IaaSは一般的に、オンプレミス環境からの移行先として利用されることが多い。

この3社に共通する点として、顧客ニーズに対応した継続的な商品開発を行い、カスタマーサクセスを重視した提案活動を展開していることが挙げられる。3社は昨年の調査でも多くの企業が利用していたが、今年はさらに上積みし、勢いに衰えを見せない。国内企業が3社のサービスを利用する割合は今後もさらに高まるものと予想される。

1社当たりのクラウドサービス導入数を見ると、顧客が複数のパブリッククラウドをそれぞれの特徴に合わせて使い分けるマルチクラウド化の傾向が見て取れる。PaaSの1社導入数平均は2019年の1.77が2020年には1.88に、IaaSは1.50から1.61に上昇した。  

【データ3】 AWS、Azure、GCPの企業利用率の推移

データ3 

◆新型コロナで約3割の企業が「Web会議」を導入・増強
新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、新たに導入、もしくは増強したSaaSで最も多かったものは「Web会議」で、回答企業の約3割を占めた(データ4)。以下、「グループウェア・ビジネスチャット」が12.6%、「仮想デスクトップ」と「緊急連絡・安否確認」が9.4%と続いた。外出自粛が要請される中、コミュニケーションチャネルの確保のためにSaaSの導入・活用が進んだ。 

これまで比較的多く利用されてきたSaaSとしては、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)など通常業務を円滑に進めるためのサービスや、労務・勤怠管理や財務会計などスタッフ部門の業務効率化のためのサービスが中心だった。ここに情報共有やコミュニケーションに関するサービスが加わったことで、オフィス内に閉じた利用からオフィス・組織の枠を超えた利用へとフェーズが変わった。働き方改革、生産性向上、人と企業と社会の関わり方などに大きな影響を与えると考えられる。

 【データ4】 新型コロナウィルス感染症に伴い増強したSaaSデータ4

 ■調査概要
1.調査対象:国内法人ユーザー
                        ―情報システム・ネットワークの管理・運用業務担当者
                          ―情報システム等の導入にあたって、決裁や選定に関与する担当者
                        ―ソフトウェアやシステムの開発業務担当者
2.回答件数:予備調査…39,115社、本調査…1,741社
3.調査方法:Webアンケート
4.調査期間:2020年5月1日~7日

同調査の概要は下記のURLで公開しています。
https://www.m2ri.jp/report/market/detail.html?id=57

 

 


■注意事項
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