MM総研大賞2023 <スマートソリューション部門>リテールテック分野 最優秀賞ネコ型配膳ロボット「BellaBot」
Pudu Robotics

2023年09月01日

確かな技術力と「可愛らしさ」で

業界を席巻

Pudu Robotics は配膳、配送、清掃ロボットを数多く手掛けるロボティクスメーカーだ。ネコ型配膳ロボット「BellaBot」は2019年に開発、そのキュートな外観から世界中で導入が進み、日本ではすかいらーくグループに採用されたことで大きく認知度を高めた。愛らしい外見に加え、最新のAI音声機能、無指向性3D障害物回避機能、SLAM(自己位置推定および地図作製)技術を搭載するなど、高い技術力も備える。今回の受賞は、その独自性に加え、品質・信頼性の高さが評価された。

人手不足をテクノロジーで解決

Pudu Roboticsは、現CEOの張涛(Felix Zhang)氏が2016年に中国・深圳市で創業した企業だ。張氏は2016年時点でロボティクス業界に10年以上身を置き、商用サービスロボット市場も成長期に差し掛かっていたことから、ロボティクスメーカーでの起業を検討していた。その中で配膳、配送ロボットに着目したのは、従業員の賃金が低く、成長機会も限定的で、その上どこも人手不足という飲食業界の抱える深刻な問題を「テクノロジーの力で打開したい」と考えたためだ。

ネコ型配膳ロボット「BellaBot」は、創業時から一貫して磨いてきた高い技術力に加え、「人と対話できる、温かみのあるロボット」の提供を目的に開発した製品だ。ネコ型にしたのは、独自の市場調査結果に加え、当時中国では猫をペットとして飼う家庭が増えていたことなど、多角的な情報に基づいて決定した。約1年の開発期間を経て2019年12月に提供し始めたが、リリース直後から世界中で注目を集め、2023年6月時点で60カ国以上600以上の都市に導入が進んでいる。サービス業界の人手不足問題がベースにあったものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による無接触配膳のニーズが急激に高まったことも要因として大きい。また、愛らしい外見、自然で親しみやすいインタラクション(対話)を備えた配膳ロボットは圧倒的な人気を博した。

「BellaBot」は同社最大のヒット商品となり、Puduが提供する全10製品の売上高の中で、グローバルでは「BellaBot」が40%以上、日本一国では50%の以上を占めている。創業7年で世界中にサービス拠点を設置、全10製品のグローバル累計出荷台数は6万台を超えるなど、商用サービスロボット分野でグローバルリーダーに上り詰めた。

世界中で700以上の特許を取得

日本では「ご注文ありがとにゃ。」「料理もってきましたニャン!」「充電してにゃああ!!」など、可愛らしくおしゃべりする様子がSNS、ネット上で反響を呼んだが、確かな技術力があってこそ成り立っている。Puduは自社開発技術をソフトウエア、ハードウエアの両面で蓄積しており、世界中で700以上の特許を取得、中国国内でも商用ロボット市場をリードする立場にある。

「BellaBot」の安全かつ安定した動きを担保する代表的な技術として、①ロボットの位置を決める「SLAM(ビジョンSLAM/レーザーSLAM)」②障害物を解析して自動的に回避する「無指向性3D障害物回避機能」③複数のロボットが限られた環境内で効率的な動きを実現する「PUDU SACHDULER」④ロボットの店舗管理機能やロボットの使用状況(ロボットの走行距離、タスク完了数、配送テーブル数、配送トレイ数など)のデータを保管し分析する「PUDU CLOUD」―などが挙げられる。可愛らしさや猫らしさを表現する技術としては、簡単な会話ができる「AI音声モジュール」、耳や頭を触ったら反応する「フィードバックのタッチ」、数十種類の表情を使い分けて感情を表現する「スマートな表情」などが該当する。ユーザーの要望、ビジネスシーンに応じて表情や音声をカスタマイズすることも可能だ。

代理店経由で円滑に導入可能

日本では、すかいらーくグループが全国2300店舗に3000台を導入したことが大きなインパクトとなり、飲食業界に限らずホテル業界、小売業、病院/クリニック/介護施設などでも導入が進んでいる。多様な業界から引き合いがあることから、各業界に精通する複数の代理店と提携し、迅速に市場をカバーする態勢を整えている。代理店に製品と技術サービスを提供し、代理店の技術担当スタッフがエンドユーザーに対して技術サポート、使用トレーニングを提供している。購入したエンドユーザーは通常、自ら設定する必要はなくすぐに利用できる。

BellaBotは現在、機能やパフォーマンスをより一層向上させ、使いやすさ、安定性、効率性の向上に努めるとともに、異なる産業シーンでのニーズに対し個別に応える新機能の設計・開発も進めている。BellaBotの進化に加え、新たな製品展開も計画しており、今後のロボット市場拡大も革新的な技術によってけん引していく意向だ。