MM総研大賞2022 話題賞「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」
デジタル庁

2022年07月22日

ユーザーの声で日々進化を続けるアプリ

 

2021年12月20日、日本政府が公式に提供する新型コロナワクチン接種証明書を取得できるスマートフォンアプリがApp StoreおよびGoogle Playで公開された。マイナンバーカードの活用により取得に掛かる手間と時間を大幅に減らしたこと、誰もが使える直感的な操作性が評価され、「話題賞」を受賞した。


新型コロナワクチン接種証明書アプリ

約半年で790万回電子証明を発行

接種証明書電子発行件数は、2022年6月12日時点で790万468件。書面での発行件数は、2022年5月31日時点で119万2725件とおよそ電子の7分の1に留まる。「アプリがなかった場合、電子発行分も自治体窓口の事務になっていたことを考えると、効果は十分にあった。」とデジタル庁の小泉英之氏は言う。デジタル庁は2021年9月1日に創設、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のデジタルトランスフォーメーション(DX)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指している。

ハイスピードな実施計画と開発を実現

「新型コロナワクチン接種証明書」の電子取得プロジェクトは、デジタル庁の前身組織である内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室で2021年5月からスタート。各自治体で「紙」のワクチン接種証明書の発行が開始した同年7月には、具体的にどういった方式で電子取得を可能にするかの検討が始められ、9月にアプリでの発行を決定、開発がスタートするという政府システム開発としてこれまでにないスピード感で進められた。

電子証明書発行に際し、スマートフォンアプリを選択したのは、マイナンバーカードを利用してワクチン接種記録システム(VRS)から接種記録を取得するという設計に適していると判断したためだ。そもそも国民の接種記録はIT総合戦略室で設計構築したVRSに各市町村が管理する形でマイナンバーに紐づき保管されていた。また政府として、デジタル環境での本人確認にはマイナンバーカードの活用が最上位に位置付けられており、接種証明書の電子取得にはマイナンバーカードの読み取り機能が必須であった。スマートフォンであれば、マイナンバーカードをかざし、4ケタのパスワードを入力するだけで本人確認及びVRSとの連携が可能である。

ユーザーの声をアプリに素早く反映

ユーザーの声、自治体職員の声を拾い上げながら、月に2回~3回ペースでUI、UXの改善がなされている点もこれまでの政府システムにはなかった特徴といえよう。公開時には1日で数千件、現在でも1日に数十件ある問い合わせに対し、デジタル庁のミッション「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」に従い、直感的に分かりやすいUIではなく、説明重視で誰にでも分かりやすいUIへ日々更新をしている。

民間や地域行政と開発運用チームを構成

「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」がハイスピードで開発され、より使いやすく更新されていっている背景には、開発運用を担当する「国民向けサービスグループワクチン班接種証明書アプリ担当チーム」の構成がある。

チームメンバーは7人で、国家公務員、セコムやIBM、内田洋行といった民間企業からの出向者、福岡市等の自治体からの出向者など、産官から集った多様な人材で構成されている。民間企業が持っているサービス開発や運用ノウハウ、自治体から集約された現場課題や事務ノウハウを持ち寄ることで、契約、開発、運用、全てにおいて利がある状態を作り出せている。加えてデジタル庁にはデザインチームがあり、民間企業でUIデザインを専門としてきた人材がいる。庁内でデザインの検討を行えるのは大きな強みとなっている。

開庁から1年にも満たないデジタル庁には、今後も様々なDX推進プロジェクトが要望されるだろう。産官学がチームとして集い、ユーザ(国民)の声を拾い上げていく「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」のプロジェクト構成が、デジタル庁が目指す開発運用のベストプラクティスとして広がることを期待したい。

 

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2022年度の今回が19回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。