MM総研大賞2022 話題賞デジタルインボイス推進協議会

2022年07月22日

バックオフィス業務のDXを支援

 

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が2023年10月に導入される。デジタルインボイス推進協議会は日本の事業者が安価で簡便に利用できるデジタルインボイスの構築および普及を通じ、商取引をはじめとしたバックオフィス業務全般のデジタル化を目指して活動している。こうした一連の取り組みが評価され、「話題賞」を受賞した。

 

電子化ではなくデジタル化をめざして

デジタルインボイス推進協議会の母体は、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社が、2019年12月に立ち上げた「社会的システム・デジタル化研究会」だ。同研究会は、2020年6月に「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」をまとめた。ここでいう社会的システムとは、年末調整や確定申告などのような、社会を構成する企業や個人事業主などが広く影響を受ける仕組みやシステムのことだ。これまでは紙を前提として、その一部の「電子化」(Digitization)を進めてきたが、今後はデジタルを前提とし、業務のあり方を見直す「デジタル化」(Digitalization)を目指すべきというのが基本的な考えだ。

この提言の中で、2023年10月のインボイス制度の開始に際し、デジタルインボイスを前提とし、デジタルで最適化された業務プロセスを構築すべきことを強調。この実現をめざし、2020年7月に「電子インボイス推進協議会」を設立した。加盟企業数は2022年5月末時点で179社・8名で、弥生が代表幹事法人となっている。2022年6月1日に名称を現在の 「デジタルインボイス推進協議会」(E-InvoicePromotion Association、以下EIPA)に変更した。

法令改正への対応と業務のデジタル化

EIPAではその活動において、「法令改正への対応」と「業務のデジタル化」という2つの目標を掲げている。1つ目の法令改正への対応は、日本で活動している事業者が法令である「適格請求書等保存方式」に対応できるようにするということだ。2023年10月以降、保存が求められる請求書等については「適格請求書」であることが仕入税額控除を受けるための要件となる。従来の請求書等と比べ記載しなければいけない事項が増えており、その代表例が「登録番号」(事業者を表す番号)だ。適格請求書はこの登録番号を交付された登録事業者のみ発行できる。この「適格請求書発行事業者」以外の事業者が発行した請求書等では仕入税額控除ができなくなり、企業間取引に大きな影響を及ぼすことになる。法令に従い、請求書を正しく発行し、正しく受け取り、正しく保存できるようにすること、これを紙ではなくデジタルで対応していくこと、加えて月締め請求書や合算請求書と呼ぶような日本固有の業務にあわせて対応しなければいけない。このための支援を行うことがEIPAのミッションとなっている。

2つ目の目標である「業務のデジタル化」は、インボイス制度への対応の中で、デジタル化を通じた業務全体の効率化を支援するということだ。特に中小企業では、一部の業務はデジタル化しているが、それ以外は紙をベースとしたアナログ処理が多く存在している。このためデータ連携ができず、販売や会計など、それぞれのシステムに同じ情報を手入力するという状況だ。売り手と買い手との間でも、デジタルで作成したものが一旦紙になって、もう一方がそのデータを再入力するといった非効率なことが日常的に行われている。こうした状況を変えていくことがEIPAの目的であり、今回の法令改正は、業務プロセス全体のデジタル化を図る大きなチャンスだととらえている。

この実現のための鍵がPeppolという仕組みだ。電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様であり、もともとは欧州発祥の仕組みだ。Peppolをベースに国際標準規格として策定が進んでいるPINT(Peppol International Invoice Model)を日本の標準仕様として普及させるべく動いているのが2021年9月に創設されたデジタル庁であり、民間の立場からその支援を行っているのがEIPAだ。EIPAが目指しているのは幅広い事業者が、負担のない快適なUI / UXで、低コストで容易に利用できる仕組みとすることだ。

インボイス制度の開始まであと1年半を切った。この法令改正に対し、紙で対応していくのか、デジタルを活用するのか。EIPAでは日本社会の大きな分岐点になるとしている。大事なことは法令改正への対応にとどまらず、デジタル化を通じ業務効率化を実現し、日々の業務が楽になったと実感できるようになること。そのための支援をEIPAでは今後も積極的に行っていく。

 

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2022年度の今回が19回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。