MM総研大賞2021 審査委員賞「Smart City Platform」
ソフトバンク株式会社

2021年07月19日

本社ビルから竹芝地区全体のスマートシティ化をめざす

 

労働人口減、インフラ老朽化、交通事故、食品廃棄、自然災害など都市が抱える諸問題に対して、デジタル技術を活用しマネジメント(計画・整備・管理・運営)することで、全体を最適化し、かつ持続可能な都市や地域にする街づくりをスマートシティという。ソフトバンクはスマートシティへの取り組みの一環として、本社を竹芝に移し、日本でも類を見ない大規模なスマートビルの取り組みをスタートした。スマートビルから竹芝地区全体、他都市へとスマート化を広げていこうという取り組みやその将来性が評価され審査委員賞を受賞した。

 

本社ビルに約1,400のセンサー

現在ソフトバンクが東急不動産との共創により注力しているスマートシティへの取り組みの中核となるのが、プラットフォーム「Smart City Takeshiba」の活用だ。竹芝から始まるこのスマートシティ構想はフェーズ3まで想定している。

フェーズ1では同社が2021年1月に本社を移転した「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー(以下、ポートシティ竹芝)」にAIやIoTなどの最新テクノロジーを導入している。ポートシティ竹芝は全館で5Gネットワークに対応する。また約1,400のセンサーを設置しており、リアルタイムで情報を集め、分析し、アウトプットするところまで成功している。

たとえば飲食店などでAIカメラに映った人数から混雑率を計算し、ビル内のデジタルサイネージに表示することができる。トイレの混雑状況も可視化し、30分以上個室にいるユーザーがいると防災センターに通知される。またオフィスエリアでは、入口で顔認証システムと社員情報がエレベーターのシステムと連携されており、勤務フロアまで効率的に移動できるエレベーターが表示される。自身が行く階のボタンを押す必要もなく、オフィスのある階まで運んでくれるという。

センサーによる情報の取得において、プライバシーの問題はクリアしている。たとえばカメラの映像は、人流や混雑率、人の属性などを分析するデータとして活用しており、個人情報を取得するものではない。竹芝地区での取り組みのフェーズ2は、竹芝地区内のビル間の連携や竹芝地区全体のスマート化を広げ、フェーズ3では竹芝地区と他都市との連携を視野に入れている。

情報を集約するSmart City Platform

ポートシティ竹芝の特徴は、ソフトバンクが出資する米国VANTIQの技術を活用した「Smart City Platform」でさまざまな情報を集約・分析・リアルタイム配信するインフラを整えたことだ。従来のスマートシティへの取り組みでは、ばらばらに得られた情報をばらばらに利用していたため、情報を最大限に活用できていなかった。

もうひとつの特徴は専門的な知識や技術を持ったエンジニアでなくても、SmartCityPlatformを活用できる点だ。たとえば飲食店は、雨の日に混雑率が20%以下になると自動的にクーポンをデジタルサイネージやアプリに配信する設定にするなど、混雑率や天気、時間帯などのさまざまな情報を組み合わせた活用ができる。

情報を届けるタッチポイント

日本全国でスマートシティの取り組みが進む中、多くの自治体や企業が課題としているのは情報発信の手段だ。さまざまな団体が広報誌やウェブサイト、SNSなどのアプリでそれぞれ情報発信しているが、地域の住民や労働者、観光客などのエンドユーザーに上手く届いていないのが現状だ。ソフトバンクは携帯電話サービスのほか、グループ会社を含めると「LINE」、「Yahoo!JAPAN」、「PayPay」といった全国に多くユーザーを抱えるサービスを運営しており、膨大なユーザータッチポイントを有している。これらのサービスを活用して多くの人に情報を届けることができればスマートシティの取り組みがより活発になるだろう。

これまでは室内温度の自動管理など、ビルの管理運営者が必要とするソリューションが主流だったが、ソフトバンクのスマートビルはビル訪問者、ビル管理者、テナント管理者・従業員、レジデンスエリアの住民まで含めた、ビル利用者全てが恩恵を受けられる形となっている。今後は街全体、都市間へと、さらに大規模にスマート化を広げていく計画だ。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
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