MM総研大賞2021 話題賞「PLATEAU(プラトー)」
国土交通省

2021年07月19日

3D都市モデルでまちづくりのDXを推進

 

PLATEAUは国土交通省(以下、国交省)が主導する、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト。まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(UDX)を推進する事業として、2020年夏に活動を開始した。仮想世界に現実の都市空間を再現した「3D都市モデル」を基にまちづくりのDXを推進し、都市計画立案の高度化や防災、新たな都市サービスの創出をめざす。開始1年で全国56都市のモデルを構築するなど実績が評価された。

 

左:ジオメトリのみ、右:ジオメトリとセマンティクスの統合型

規格統一した1万㎢ 規模の3D都市モデル

PLATEAUではデジタル技術を活用して、ハードとソフトの両面から都市生活を便利にすることをミッションに掲げ、2020年夏から始動した。諸外国と比べて、これまでの日本はデジタル人材の不足も相まって活用が十分進んでいるとは言えなかったが、同プロジェクトの発足により急激に3D都市モデル“先進国”へと成長した。約40社のパートナー企業と共に3D都市モデルの整備・活用を加速させ、開始1年で全国56都市、約1万km2のモデルを整備した。これほど大規模で、規格が統一された3D都市モデルは世界的にも類を見ない。

国交省は3D都市モデルを整備するにあたり、各自治体が保有する縮尺2500分の1の「都市計画基本図」に着目した。都市計画基本図に記載されている建物や道路、街区などの“都市の図形情報”と航空測量による“建物・地形の高さや形状の3次元情報”を掛け合わせて作成する。しかし、国土地理院の測量の基準によって最低限の精度や情報が統一されているものの、自治体によってはデータの精度や更新する頻度・範囲が異なるという。3Dモデルの作成を前提に測量をしていないため、データの品質に揺れが出てしまう。国交省は3D都市モデルの整備に関するルールの策定が必要だとして、今後は測量やモデリングの手順について研究し、マニュアルや標準仕様の策定を進めることで全国のデータ品質の統一をさらに進めていく。

地図上に組み込む属性情報が肝

国際的にもPLATEAUの注目度は高い。日本の都市(主に東京都23区)は諸外国と比べて建物が密集しており複雑な形状をしているが、こうした都市空間を緻密に再現できる点は日本が誇る職人技とも言える。

一見、他の3D地図と変わらないが、いったい何が違うのか。それは3Dデータの中に属性情報が組み込まれている点にある。一般的な商用3D地図のほとんどは、ジオメトリモデルと呼ばれる、単に都市空間の形状を再現したデータフォーマットで、地形と建物にデータ上の区別はない。それに対して今回整備する3D都市モデルは、建物や街路などを個別に定義した上で、それに名称や用途、建築年、構造といった情報を付与することで、データに意味付けをする。これをセマンティクス(意味論)という。PLATEAUの3D都市モデルは、ジオメトリモデルとセマンティクスモデルの統合型で、都市空間の“形”にその中身の情報も付与している点が大きな特徴だ。これにより地図上の建物がオフィスビルなのか病院なのか、住宅なのか、それらがどのような形状・構造なのかが判別できるようになり、人流の把握や災害時のシミュレーション、都市計画の立案などに活用できる。

セマンティクスの活用にあたり、地理空間情報分野の国際標準化団体OGC(Open Geospatial Consortium)の「CityGML」というデータフォーマットを採用した。CityGMLが持つLOD(LevelofDetails)という概念を導入し、詳細度の異なる情報を統合的に管する。詳細度は4段階(LOD1~LOD4)に分けられ、3D都市モデルの活用方法に応じて使い分けている。3D都市モデルの整備は、パートナーである国際航業(株)、アジア航測(株)、(株)パスコ、朝日航洋(株)の4社が担い、データ作成の実証を行いながら日本版CityGMLの仕様を決めている。

2021年度は「自動運転」と「カーボンニュートラル」

2020年度はデータの基礎的な標準仕様の策定に力を入れてきたが、3D都市モデルの整備で終わりではない。活用することが重要であるため、今後はユースケースを拡充していく。現在は国交省が主導で進めているが、追々は全国の自治体や民間企業が自主的に3D都市モデルの整備・活用ができるように、エコシステムの創出にも力を入れる。2021年度以降も引き続き3D都市モデルの持続可能な整備・更新のエコシステムを構築し、自動運転やカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)などのテーマでユースケース開発に注力する。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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