MM総研大賞2021 〈スマートソリューション部門〉 セキュリティ分野 最優秀賞本人確認サービス「Digital KYC」
日本電気株式会社

2021年07月19日

顔認証技術をスマホユーザーすべてに普及めざす

 

NECの「Digital KYC」は、世界No.1の精度を誇るNECの顔認証技術をベースにした、スマートフォン完結型の本人確認サービスだ。コロナ禍で完全リモート対応の重要度が増す中、他社に先駆けて2019年4月に開始した同サービスは信頼性の高さも実証済みで、今やキャッシュレス決済サービスで広く利用されるようになってきたことが高く評価された。

 

モバイル通信キャリア3社が採用

「Digital KYC」の特徴は3点―①認証精度で世界No.1の顔認証エンジンを搭載(※米国国立
標準技術研究所(NIST)による顔認証技術の性能評価で第1位を5回獲得)、②ライブネス判定による不正防止対策、③本人照合処理をスマートフォン内で完結の3つだ。ライブネス判定とは、利用開始時に本人のライブ画像と免許証などの本人確認書類の顔画像を照合するもので、スマホ画面に顔画像2つを同時に撮影しながら、「右向いて」「左向いて」などとランダムで指示してスマホの前で動いてもらい、録画や静止画などでないことを確認する。企画段階から金融庁と意見交換し、2018年11月に「犯罪収益移転防止法」にオンラインで完結する方法が新設されることを踏まえ、仕様を決めたという。

その甲斐あって、利用企業は金融機関をはじめ、開始2年で20社弱に達する。中でもスマホ利用ということで、エンドユーザー数拡大に大きく貢献するのがモバイル通信キャリアだ。auじぶん銀行の口座開設時、NTTドコモの「d払い」で銀行口座の連携時、楽天モバイルの携帯キャリアサービス契約時。いずれもオンライン完結で本人確認をする際に利用されている。導入企業におけるエンドユーザー数は全体で延べ700万人に達する。

スマホ端末にアプリで顔認証エンジンをダウンロード

各社に採用されたのは、個人情報をサーバーに預けない仕組みにしたことが大きいという。NECは顔認証エンジンをSDK(ソフトウェアキット)で提供しており、スマホに処理エンジンを置く。主に事業者アプリに組込み、利用者がダウンロードして使う。スマホ端末側で本人確認(照合処理)して、キャリアに照合結果データと本人情報だけを送る仕組みのため、NECを含め第三者には一切データが流れない。また、端末側で適した良い顔画像を自動で選ぶことを含め、ほとんどの処理を端末側で実施するため、通信状況・品質に影響されずスムーズにサービスを受けられる。この他、生体情報などの個人情報はスマホ内で完結し、外には送らないといったメリットもある。顔認証を使った本人確認サービスでは、競合はベンチャー企業などになるが、端末側に処理エンジンを置くのはNECのみという(NEC調べ)。

今後はシェアリングなど非金融サービス系にも拡大

販売目標は年間10~15社の新規利用事業者の獲得に置く。今年度末には1.5~2倍弱の社数に増える計算になる。エンドユーザー数では現在の延べ700万人からさらに拡大し、ゆくゆくは日本の全国民に1回は使ってもらうのが目標だ。それに向け利用事業者のターゲットも拡大。現在は金融サービス系が中心だが、今後は行政サービスや他の民間サービス事業者、更には本人確認のシーンがあるシェアリング事業者やマッチング事業者、派遣会社など、非金融サービス系にも広げていく。

課金は年間利用料の形式で、新規口座開設等において実施する本人確認の利用想定件数に応じて設定する。1件あたりで見れば少額な組込みサービスだが、過去のパソコンや携帯電話端末に比べ、強い競合ベンダーが少ない市場環境ということを考えると、高い人口普及率になる可能性も十分秘めていると言えよう。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■MM総研について
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