MM総研大賞2021 大賞 受賞 <スマートソリューション部門>モバイル通信サービス分野 最優秀賞「ahamo」株式会社NTTドコモ
2021年07月19日
シンプルな料金プランで大幅な値下げを実現
NTTドコモ(以下、ドコモ)の新料金プラン「ahamo(アハモ)」は、月間データ容量20GBで月額2,970円(税込、以下同)。従来の大容量プランに比べ大幅な値下げを実現した。サービス開始からわずか1カ月あまりでネットに慣れた“デジタルネイティブ世代”を中心に100万契約を達成。これをきっかけとして、他の大手キャリアやMVNO各社が相次いで割安料金プランを後追い導入するなど、携帯市場に大きなインパクトを与えた点が高く評価された。 |
契約手続きからサポートまでオンラインで完結
ahamoは5分以内の国内通話が定額の上、82カ国・地域の国際ローミングが追加料金無しで利用できる。国内通話については別途1,100円で無制限かけ放題だ。ネットワークはドコモの他プランと同じ帯域を活用しており、4Gだけでなく5G通信にも対応している。データ通信では20GB超過後は最大1Mbpsで通信可能だ。「ahamo」という名前には、「未知の物事を瞬時に理解すること」を意味する「アハモーメント」、「なるほど」という相づちの英語表現「Aha」、「楽しい時にアハハと笑う」感嘆詞としての「アハ」という3つの意味が込められている。
大きな特徴は契約手続きから契約後のサポートまでオンラインで完結する点で、ネットを使い慣れたデジタルネイティブ世代をターゲットとする。ドコモは既存ユーザーの高齢化が進み、若年層のシェアが低いという課題を抱えていた。他社がサブブランドを通して若年層の獲得を進める中、顧客基盤の拡大を意識して同社にはまだなかった中容量帯プランの発表に至ったという。
ユーザーの声を反映した「5分以内の通話定額」
重視したのはシンプルさだ。家族から独り立ちする新社会人を念頭に置き、単独で契約しても割安な価格で利用できるようにした。そのため、従来プランにあるような期間限定割引や長期割引、家族利用や固定回線とのセットによる金額割引はない。新規契約事務手数料や解約金などの各種手数料も全て撤廃し、ユーザーが気軽に契約できるようにした。オンライン手続きに一本化したのも、手続きの簡易化やコスダウンを図る狙いからだ。
20代の声も多く取り入れている。プラン設計時には、社内および社外の若年層に広くインタビューを実施。5 分以内の国内通話定額を無料にしたのも、「病院や役所などに電話をかける際に必要」という声が多かったためだ。キャリアメールの撤廃にも、こうした若者の意見が反映されている。
現在の対応機種はAndroid が82 機種、iPhone が21機種(6月14日時点、ドコモ販売機種のみ対象)。端末は、ahamo 専用Webサイト/アプリとドコモオンラインショップの2系統で販売している。専用Webサイト/アプリでは、おすすめ商品の「iPhone 11(64GB /128GB /256GB)」「Galaxy S20 5G SC-51A」・「Xperia 1 II SO-51A」の3 機種を購入できる。ドコモオンラインショップではドコモが提供するXi / 5G端末の購入が可能。ただ、eSIM 専用端末の利用はできない。また、ドコモオンラインショップからは回線契約ができないため、新規契約時はまずオンラインショップで希望の端末を購入する必要がある。こうした手続き上の制約はあるものの、ドコモの他プランと同等のラインアップから端末を選べる。
業界の料金引き下げを先導
新プランを発表したのは2020年12月3日。政府の携帯電話料金引き下げ要請への回答として多くのメディアに取り上げられ、業界全体に衝撃を与えた。発表直後から他キャリアやMVNO各社が相次いで低価格な新プランを発表するなど、携帯市場の料金体系を変えるきっかけにもなった。
Twitterでもahamoに関するツイートが9万件を超え、トレンド1位を記録するなど大きな反響を呼んだという。その影響もあり、事前エントリーは250万件の申し込みが殺到。当初想定を大きく上回る結果となった。
発売日の3月26日までにさまざまな問い合わせがあり、顧客の声にはいつになく耳を傾けた。中にはなるほどと思える意見もあったことから、条件の改定に至ったケースも。例えば、当初は「みんなドコモ割」から外していたahamo回線を割引のカウント対象に入れ直したことだ。ドコモ割は回線数によって割引額が変動するため、家族のメンバーがahamoに移行すると割引額が減額されてしまう。少しでも携帯料金を引き下げたい家庭にとっては痛しかゆしで、さっそく市場の声を受け止めた。ほかにも、光回線のペア回線として登録できるようにするなど、従来プランとahamoを組み合わせても不利益にならないよう配慮している。
契約者数は100万回線超え、半数が30代以下
契約者数は4月末時点で100万回線に達しており、その後も堅調に推移している。他キャリアからの移行も多く手ごたえを感じているようだ。購入者の世代は30代以下が50%超を占めており、同社の従来プランと比較しても若い世代の比率は高い。手続きの手軽さやコストパフォーマンスの良さが高い評価につながっている。
プランの話題性の高さから、当初ターゲットとして想定していなかった中高年層からも多くの反応があった。ドコモショップの来店者の中には中高年を中心に「ahamoを使ってみたいがどうすればよいか」との問い合わせが多かったという。そうした声を受け、4月22日からドコモショップでの有償サポートを開始した。オンライン手続きという形態は変えず、スタッフのアドバイスを受けつつ消費者がスマホを自分で操作し手続きする。サービスメニューは、新規契約やプラン変更などを支援する「ahamo WEBお申込みサポート」と、契約後の各種手続きを支援する「ahamo WEBお手続きサポート」。料金はいずれも、一件あたり3,300円。「デジタル手続きに慣れてもらう」というミッションのもと、サポートの提供開始を決めた。
今後は中高年向けの支援体制も強化し、ショップで実施しているスマホ教室でahamoに関する講座を設ける予定だ。
ユーザーからは故障時のサポート体制が不安という声も挙がる。このため、店頭での修理受付も開始した。補償サービスには、スマートフォンの故障や水濡れ、紛失などのトラブルの際に代替機を利用できる「ケータイ補償サービス」(月額825円)とAppleによるハードウェア保証が延長される「AppleCare + for iPhone」(月額770円)の2つを取り揃える。
「シンプル設計」のコンセプトは営業姿勢にも
これまでのドコモの販売戦略では、リアル店舗での販売が主戦場だった。しかし、新プランはオンラインに特化しているためデジタルの場でのマーケティングがカギとなる。今後はdポイント加盟店との連携施策を手始めに、dポイントのパートナー基盤や顧客基盤を生かしたキャンペーンで利用促進を図る考えだ。
dカードとの連携も進める。今年9月からahamoの料金を「dカード」もしくは「dカードGOLD」で支払うと、毎月のデータ増量特典が付く予定だ。通常のdカードの場合は1GB、dカードGOLDの場合は5GBを付与する。ahamoは20GBを超過した場合、データ容量の追加に1GBあたり550円かかる。dカードは年会費無料で利用できるため、dポイントに加えデータ特典も付くとなると紐づけるメリットは大きいだろう。
ahamoは若年層の声に耳を傾け、シンプルさを重視したプランを作り上げてきた。それは、営業姿勢にも反映されている。4月1日付で発足したahamo推進室では「押し付けない、迷わせない、隠さない」という3つの行動原則を大切にする。プラン設計の見直しや拡販の際には、この原則に照らし合わせながら行動していくという。
MM総研大賞について
「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2021年度の今回が18回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。
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