4カ月で利用者は30倍に

Zoomは数あるオンライン会議システムの中でも飛びぬけて利用者が増えている。2019年12月時点のグローバルでの会議参加者数は1 日あたり1000万人程度だったが、2020年4月には3億人と4カ月で30倍になった。国内では特に教育分野での利用が目立ち、遠隔での授業やホームルームを支援した。1社で有料ライセンスを10タイトル以上購入している国内企業も15,000社にまで増えている。

Zoomの利用者が急速に増えた理由について、佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーは「使いやすさにある」と言う。「他社製品はサーバー側で処理するものが多い。そのため人数が増えるほど負荷がかかり、遅延や通信の途切れ、最悪の場合つながらなかったりする。Zoomは端末側で一部の映像処理をしており、サーバーの負荷を少なくできるため、安定稼働できる」。PCやスマートフォンなど端末の処理能力が高まったことをうまく利用した。音や映像が途切れた場合も会話の隙間を詰めるようにデータ転送するなど、会話をスムーズに継続できるような仕組みがいくつも取り入れられている。

■ エンジニア1,000人でセキュリティ対策

本社のZoom Video Communications（本社：米カリフォルニア州、エリック・ユアンCEO）は2011年の設立で、ちょうど普及し始めたクラウドの考えを積極的に取り入れた。事業展開しているエリアではアジアに注力しており、特に働き方改革推進の流れを受けた日本はユーザー数の伸び率が最も高いという。

利用者の拡大につれ、セキュリティを懸念する声も一部出てきた。特に無料で利用している個人ユーザーで問題が起きた。Zoomには標準のセキュリティ機能が搭載されているが、個人ユーザーはこれらの機能をうまく使いこなせないケースもあったようだ。解決のため今年の4月から6月にかけては、全社のエンジニア1,000人がセキュリティ対策に専念したという。

■ ビデオ会議、PBXにも事業の広がりを見せる

日本国内の事業は順調だ。Zoom Japan設立から4年間で達成をめざした年商100億円の目標も2020年中には達成しそうな勢いだ。「日本は欧米と比べオンラインでの会議が一般的ではなかった。その分伸びしろはまだまだある」と佐賀氏は意欲的だ。グローバルの売上高で見れば北米が約70％を占めるため、日本を含むアジアはこれからの成長市場として期待できそうだ。

次に狙うのはオフィスで外部との間をつなぐビデオ会議の市場。コロナ禍でも完全テレワークではなく、出社する人も一定数おり、そこにニーズがあるとみている。ビデオ会議用のライセンスとして「Zoom Rooms」を用意した。この市場を狙う上で、パートナーとの協業も強化している。機材の面ではPolyやロジクールなどの機器メーカーと連携する。販売の面では従来からパートナーのSIerに加え、2020年2月からディストリビューターのSB C&Sをパートナーに迎えた。出社率が比較的高い中小企業や地方企業への接点を増やしていきたい考えだ。

オフィスのPBX（電話交換機）をクラウド経由で実現するZoom Phoneも年内に提供開始する。内線通話をIP化し、管理および利用をZoom MeetingやZoom Roomsと一体化できる。外線通話機能についても同様だ。Zoomの主要機能であるWeb会議でも、文字起こし機能、翻訳機能などを拡充してきている。企業のコミュニケーションプラットフォームとして成長を続ける構えだ。

MM総研大賞について

「ＭＭ総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、ＭＭ総研が2004年に創設した表彰制度です。2020年度の今回が17回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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■ＭＭ総研について
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