MM総研大賞2020 〈スマートソリューション部門〉ローカル5G分野「ローカル5Gサービス」
日本電気株式会社

2020年09月11日

ローカル5G市場で攻勢、 共創で生み出す新たな世界

 

2020年3月に一部帯域で商用化がスタートしたローカル5Gは年内に全帯域での制度化が完了、2021年から本格運用に入る予定だ。現在34の事業者が参入しているが、NECは事業者の中で最も先行し、積極的な動きを見せる。通信キャリア向けビジネスの実績とネットワークの知見、多様な業種へのITソリューション提供で培った業種ノウハウを強みに、ローカル5G市場を牽引していく構えだ。

経営計画で「DX 推進のキーテクノロジー」と位置づける

NECが通信キャリア以外へ通信機器を供給するローカル5Gサービスの提供に至った経緯は、2018年にスタートした「2020中期経営計画」が明かしてくれる。従来の移動通信システムは通信キャリア向けモバイルブロードバンドのみだったが、5G時代には各産業への応用・利用が進むと展望。これによりネットワークのニーズは多様化、複雑化し、社会が大きく変化すると見た。そこでNECは、企業との共創を通じて新たな社会を創造する“DXの推進役”となる企業使命を掲げた。同社は、ローカル5GをDXを進めるキーテクノロジーとして「デジタルプラットフォーム」の一つに位置づけた。

低遅延の特徴を活かした「適応遠隔制御技術」が武器に

企業が抱える課題やニーズを把握し、同社がもつローカル5G始め新たなテクノロジーを組み合わせ、最適なモデルを創造して要件を生み出すことが、「ローカル5G普及にあたり最も難しく、苦労している点だ」という。

実証を重ねるうちに、5Gの「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」という3つのメリットの中で、「ローカル5Gに最もニーズがあるのは低遅延」との確証を得た。特に産業用ロボットの遠隔操作や建機の遠隔操作など、人手不足を解消するリモートコントロールのニーズが高いという。このニーズに応えるため、さらに細かなズレや遅延をなくす技術として「適応遠隔制御技術」を開発した。無線通信で必ず生じる通信の揺らぎをAIが予測し確実に制御、遅延があっても安定的な遠隔制御や自動操縦などを実現できるNECの独自技術だ。

同社はこの技術を活用して、建設現場や土木現場で使用されるバックホウやクレーンといった重機を、ネットワーク経由によってリモートから操縦、あるいはリモートから自動運転を可能にする取り組みを行っている。ここで重要なのは、1台1台の重機を単独で操縦するのではなく、複数の重機を協調して動作させることだ。NECは、「適応遠隔制御技術」やAI技術を使ってこの複数重機の協調動作の実用化に向けた取り組みを進めている。

ユーザー負荷を軽減する

クラウド型、マネージドサービス型を想定NECのローカル5Gサービスの特徴は以下の3つ。

①キャリア向けに培った機器供給の実績をもって個別のニーズに即したネットワークが構築できる点だ。また総合電機メーカーとして国内の各産業に対する知見やアプリケーションを有していることから、トータルでDXサービスを提供できることが、海外通信機器ベンダーと最も差別化できる強みだという。

②クラウドから5Gのコアサービスを提供していく点だ。クラウド化によりユーザーの必要なタイミング、かつ短時間でのローカル5Gサービス提供を実現、コストも安価に抑えることができる。すでにAWSにコアを載せる実証は完了していることから、商用化までは秒読みだという。

③システム・運用を全てNECがマネージドサービス型で提供する点だ。ローカル5Gの導入を検討する企業にとって、保守運用の技術的ハードルが高い。NECは運用を一手に引き受けるマネージド型で供給し、機器もNECが資産で持つことを想定している。

2023年度までに100社以上の導入をめざす

2020年3月にローカル5Gを実際に体感し、検証できる施設として同社玉川事業所に「ローカル5Gラボ」を設置、利用拡大に努めている。8月末時点で、ローカル5Gへの問い合わせ件数は数百社を数え、うち実証を行っているのは計画中の案件も含めて数十社にのぼる。

今後の事業計画としては、製造、建設、交通、流通、パブリックの5つの業界を中心に2023年度までに100社以上の導入をめざす方針だ。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2020年度の今回が17回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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