MM総研大賞2020 〈スマートソリューション部門〉MaaS分野「新幹線eチケットサービス」
東日本旅客鉄道株式会社、北海道旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社

2020年09月10日

チケットレス対応で切符の受け取りを解消、スムーズな乗車を実現

 JR 東日本、JR 北海道、JR 西日本のJR3 社が共同で導入した「新幹線e チケットサービス」は予約サイトに登録した交通系IC カードで新幹線に乗車できるサービスだ。駅で切符を受け取ることなく、そのまま乗車できる手軽さでビジネス客を中心に好評を得ている。JR 東日本では、切符を含めた全体に占める利用率は20 %を超える。今後は一般旅行者などへも訴求していきたいという。


JR東日本・JR北海道予約サイト「えきねっと」


JR西日本予約サイト「e5489」

モバイルSuicaほか交通系ICカード10種類に対応

JR東日本、JR北海道は「えきねっと」、JR西日本は「e5489」とそれぞれの予約サイトから手持ちの交通系ICカードを事前に登録する。利用エリアは東北・北海道、上越、北陸、山形、秋田の各新幹線。駅で切符を購入する手間や窓口の混雑を気にせず、スムーズに乗車できる。新規の予約や変更は、直前までスマートフォンから可能。予約は最大6 人分まで。新幹線eチケットは乗車券・料金券が一体となった商品で、指定席を購入した場合は、切符の合計額から一律200円引きとなる。サービスを開始したのは今年3月14日と新型コロナの感染が広がり始めた時期に重なったが、「指定席券売機や人の手を介さずに、オンラインですべての手続きができるため、ソーシャルディスタンス対応という意味からも意義あるものになった」という。

準備は2~3年前から始まった。指定席券売機や窓口で切符を購入・受け取りをする手間を解消したいという思いでサービス開発に至った。JR東日本はチケットレスサービスの「モバイルSuica特急券」をすでに導入していたが、新サービスはモバイルSuica特急券を吸収するとともに、合計10種類の交通系ICカードに利用の裾野を広げた。

センターサーバ方式採用で改札機の位置づけが変革

JR東日本では、現在の利用率は20%を超える。コロナの影響を考慮しても滑り出しは順調といえる。昨年同時期のモバイルSuica特急券の利用率は7%程度だったからだ。2022年度末には自社新幹線のチケットレス利用率を50%まで引き上げたいという。

利用者からは便利だという声が多く寄せられている。「えきねっと」や「e5489」でもオンラインで切符を購入できるが、乗車前に指定席券売機や窓口へ出向いて切符を受け取る必要があった。新サービスでは受け取りの手間を省きICカードで乗車ができる。この手軽さがユーザーに最も響いているそうだ。

同サービスの仕組みはセンターサーバで予約情報の管理から認証処理までを行うセンターサーバ照会方式を採用している。ICカードを自動改札機にタッチすると、通信ネットワークを介して予約情報をサーバに照会し、その結果をもとに自動改札機の開閉を行う仕組みだ。切符の場合、自動改札機は効力の判定や回収など高度な機能を必要とし、相応のメンテナンスを行う必要があった。このサービスでは改札機での処理を最小限にしたため、今後新幹線eチケットサービスで新しい機能を付加した場合でも改札機の改修コストを抑えることができる。
センターサーバー方式のシステムイメージ

「えきねっと」リニューアルで利用者拡大をねらう

現状、「スマートEX」などの他のチケットレスサービスとの統合は考えていない。「えきねっと」の会員は1200万人に達しており、広く定着した観がある。地域によってはひとつの予約サイトだけを利用している人も多いと思われ、それだけに統合すると、新しく会員登録が発生するなど顧客への負担が懸念されるからだ。むしろ、両サービスの共存路線を狙っているようだ。

現在は、ビジネス客を中心に利用されているが、今後は旅行客などにも強く訴求する考え。また、従来から使いやすさの観点での改善要望があった「えきねっと」は2021年夏をめどにリニューアルを予定している。画面の操作性の改善や取り扱う商品の拡大を行う計画。リニューアル後の「えきねっと」では、「大人の休日倶楽部」など割引切符の予約・購入に対応する。使いやすさに磨きをかけ、さらなる飛躍をめざす。

MM総研大賞について

「MM総研大賞」は、ICT分野の市場、産業の発展を促すきっかけとなることを目的に、MM総研が2004年に創設した表彰制度です。2020年度の今回が17回目になります。優れたICT技術で積極的に新商品、新市場の開拓に取り組んでいる企業を表彰するものです。

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