教員の校務での生成AI利用率が過半数を超える GIGAスクールで普及したクラウドで安全な生成AI利用を望む
「公立小中高における教員向け生成AI利用環境調査」(2025年12月時点)
2026年03月05日
- 教員の校務での生成AI利用率は2025年度に急伸し、56%と過半数超え
- 利用方式はGWSやMS365などクラウドに標準搭載の生成AI活用が68%と最多
- 教育現場への個人無料版ChatGPTなどの持ち込み(BYOAI)を抑制
- 授業クラウドではGWSが利用率69%、校務ではMS365が53%と最多に
- 生成AI利用時には「文部科学省のガイドラインへの準拠を重視する」が69%と最多
- 81%がAI利活用に課題あり、「セキュリティ」「著作権リスク」など課題への対応強化も必要
教員の生成AI利用率は56%、2025年度から急伸
教育委員会が「教員が校務などで生成AIを利用している」と回答した割合は、合計では56%、公立小中学校は55%、高校は91%となった(データ1-1)。いずれも過半数を超えたが、特に校務DXと教員の負担軽減の観点で都道府県教育委員会の取り組みが先行しており、結果として公立高校教員の利用率が高い状況にあると分析する。例えば、東京都は2025年5月から都立学校すべての教職員・児童生徒が利用できるAI基盤を整備した。宮城県は2025年3月に「生成AI活用研修ガイドブック」を発行。大阪府は2025年12月に教員含む行政職員の負担軽減を目的とした「大阪府行政AIエージェントコンソーシアム」を立ち上げるなど、2025年は自治体でも利活用関連の発表が盛んであった。
【データ1-1】教員向け生成AIツールの利用率
MM総研が実施した過去の調査をもとに小中学校教員の生成AI利用率の推移をみると、2025年度に入ってから急激に伸びていることがわかる(データ1-2)。
OECDが2024年3月に学校教員を対象に実施したアンケート調査「国際教員指導環境調査(TALIS)」では、小中学校教員の生成AI利用率は日本が16~17%と、OECD平均の36~37%に遅れをとっていた。文部科学省は2023年度から継続して生成AIパイロット校を指定し、生成AIの検証をしてきた。2025年度には実証から面展開が進み、利用率の上昇に影響を与えたと考えられる。実際に、生成AIを利用している教育委員会はStuDX StyleやリーディングDXスクールなど文部科学省Webサイトで情報収集している比率も高く、利活用を後押ししているとみられる。
【データ1-2】小中学校教員の生成AI利用率推移
GWSやMS365など教育用クラウドでのAI利用が68%、個人版ChatGPTなど教員の持ち込み(BYOAI)を抑制
教育委員会としての生成AIツール利用方針は、Google Workspace for Education(以下GWS)やMicrosoft 365 Education(以下MS365)に標準搭載された生成AIを利用すると回答した自治体が68%と多数を占め、「都道府県が提供するAIを利用」が13%と続いた(データ2-1)。他方で、個人版などのChatGPTは1%にとどまった。複数の教員向け調査から、教員個人は手軽さもあり無償版のChatGPTの利用も多いと推測されるが、教育委員会は教員が個人用の生成AIアカウントを持ち込むBYOAI(Bring Your Own AI)運用を抑制し、教育用クラウド上で管理する生成AIツールを利用してもらう方針とみられる。
【データ2-1】教育委員会としての生成AIツール利用方針(n=1287) 単数回答
授業クラウドではGWSが利用率69%、校務ではMS365が53%とそれぞれ最多に
GWSやMS365 は、GIGAスクール構想で全国の教育委員会が端末と一体で整備したクラウドの教育用アプリケーションである。このほかにMS365は教員の校務用として自治体が別途配備したクラウドとしても普及している。特に教育用のクラウドは、データ保護とプライバシー、年齢とアクセス制御、モニタリング機能など教育環境に適した生成AIのセキュリティ対策機能を標準で備えていることが高い利用率の背景にあると考えられる。よく授業で利用する教育用クラウド※としてGWSが69%、校務用ではMS365が53%という回答結果となった(データ2₋2、データ2₋3)。
【データ2-2】教員が主に授業で利用するクラウド※(n=1338) 複数回答
【データ2-3】教員が主に校務で利用するクラウド※(n=1338) 複数回答
※本設問では、データ見出しの通り、教員が主に授業もしくは校務で利用している教育用クラウドは何かを教育委員会に尋ねており、いわゆる学習者ソフトや校務用パッケージソフトなどの個別機能を提供するソフト群の利用率を測るものではない。
生成AI利用には文部科学省のガイドラインへの準拠を重視するが69%
教育委員会が教員に生成AIツールの利用環境を整備する際に重視する項目として「文部科学省の生成AIガイドラインへの準拠」が69%と多数を占めた(データ3)。自治体が整備している生成AIに関する文章や研修資料を参照すると、その多くで、利用する生成AIツールと利用方法には政府ガイドライン※への準拠が必要となるとの考えが記載されている。教育委員会は、無償版の個人向け生成AIツールでは組織的な利用管理を想定しておらず、ガイドラインに準拠した運用が困難であると判断していると考えられる。
※文部科学省 初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関するガイドライン Ver2.0 2024年12月
【データ3】教員の生成AIツール利用環境を整備する際に重視する点(n=1316) 複数回答
81%がAI利活用に課題あり、「セキュリティ」「著作権リスク」など課題への対応強化も必要
生成AIの利用にあたって「課題あり」との回答は81%にのぼった(データ4)。上位の課題に大きな差はなく、「セキュリティ対策(42%)」「著作権侵害のリスク回避(41%)」「利用のためのルール整備※(39%)」「ハルシネーション(誤った情報が生成される)リスク(37%)」などへの対応が求められているが、「生成AIに詳しい人がいない(36%)」「教育での事例やノウハウなど情報が足りない(30%)」といった状況にある。教育委員会は安心安全な利用環境を整備するために多様な課題に直面しており、安全性の観点からGIGAスクール構想で普及したクラウド上での活用が増加していると考えられる。
※文部科学省のガイドラインを守ったうえで教育委員会が定める利用ルールやガイドライン
【データ4】生成AIを利用するうえでの課題 単数/複数回答
MM総研取締役研究部長の中村成希は調査結果を以下のように総括する。
「教員の働き方改革とGIGAスクール構想を支えるツールとして、生成AIの活用余地は大きい。今後は授業での活用に向け、アナログ教材との使い分けや用途別コントロールなどの運用ノウハウの蓄積が重要ではないか。校務での利用率急上昇は、GIGAで整備したクラウド教育アプリとの連携によるところが大きいと考えられ、安心安全な利用には、教育組織の管理・制御が鍵となろう」
今後の生成AI利活用については、以下のように展望する。
「文部科学省はガイドラインで年齢一律禁止を避け、小学校低学年から活用の道筋を示した。発達段階を考慮した慎重な見極めを促し、情報モラルを含む能力育成が期待される。授業で高い利用率となったGWSや、校務でのMS365は追加費用なく生成AIを利用でき、教育組織はこのような状況をうまく活かせる可能性がある。多様な教材やツールを、自らの意思で取捨選択できることを大前提としてクラウド基盤を活用することで、利用シーンによって教育環境に対して標準的な生成AIと、利用シーンに最適化したAIを使い分けるなど、より戦略的な運用が期待できる」
■調査概要
1.調査対象:
高校:全国の都道府県47の教育委員会 / 小中学校:市区町村1,741の教育委員会(1,738団体)
2.回答件数:1333団体(都道府県 34団体、市区町村 1299団体) ※一部回答含む
3.調査方法:電話による聞き取り、一部e-mailやFAXによる調査票の送付・回収を併用
4.調査時期:2025年11 ~12月
■レポート発刊のお知らせ
本調査結果を掲載したレポートを発刊いたします。詳細については担当(高橋)までお問合せください。
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