個人向けサービスの多様化と法人IoTの拡大で成長を継続
「国内MVNO市場調査」(2025年9月末時点)
2025年12月17日
■2025年9月末の独自サービス型SIM回線契約数は1382.9万回線(前年同月末比4.3%増)
■首位のインターネットイニシアティブはIoT向けが好調でシェアを32.8%に拡大
■携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの比率は6.0%で変わらず
■2026年3月末の回線契約数は1440万回線と予想(同5.6%増)
概要
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は国内MVNO(仮想移動体通信事業者)市場の2025年9月末時点での実績をまとめた。独自サービス型SIM※1の回線契約数は1382.9万回線で前年同月末比4.3%増となった。IoT向け用途や対面販売を重視する個人向けMVNOの伸長により微増となった(データ1)。携帯電話(3G、LTE、5G)契約数に占める独自サービス型SIMの契約数比率は、2024年3月末と同じ6.0%で推移した(データ2)。
2025年9月末時点での事業者シェア1位は「IIJmio」などを提供するインターネットイニシアティブ(IIJ)。ネットワークカメラなどのデバイス接続の需要が伸び、法人向けIoTが好調で回線数を伸ばした。2位は関西電力グループのオプテージ(大阪市)、3位はNTTドコモ※2、4位はJCOM(東京都千代田区)、5位はイオンリテールだった(データ3)。
MM総研では2026年3月末の独自サービス型SIMの回線契約数を1440万回線(前年同月末比5.6%増)と予測する。ネットワークカメラなどの法人向けIoT用途のSIMが主力となり、引き続き市場が拡大すると予想する(データ4)。

※1独自サービス型SIM : MVNOがSIMカード(契約者情報記録カード)を活用して独自の料金プランで提供する回線サービス(プリペイドは含まない)
※2 NTTレゾナントは2023年7月1日、事業再編によりNTTドコモに吸収合併されたため、本調査ではNTTレゾナントが提供していたOCNモバイルONE及びNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)が提供する一部法人回線を含んでNTTドコモ提供分として定義する
サブブランドの拡大が続く中、独自サービス型SIM市場もサービス拡充が進む
2025年9月末時点の携帯電話(3G、LTE、5G)契約数は2億2962万回線。うち独自サービス型SIMの契約数比率は6.0%で、前年同月末比横ばいとなった(データ2)。
MNO(移動体通信事業者)のサブブランド(ソフトバンクの「Y!mobile」、KDDIの「UQ mobile」)はメインブランドからの移行ユーザーを効率よく獲得しており、回線数は引き続き増加した。2025年9月末時点のサブブランドの契約数比率は携帯電話(3G、LTE、5G)契約数の10.6%(前年同月末比0.7ポイント増)まで拡大した。また、MNO各社のオンライン専用プラン(NTTドコモの「ahamo」、KDDIの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」)の契約数比率も5%弱にまで拡大し、独自サービス型SIMの対抗軸となるサービスが好調で、MVNO市場は横ばいを維持する結果となった。
独自サービス型SIM市場では、IIJやオプテージを中心に通信容量の拡充、料金の見直し、速度改善策、新ブランドの参入、さらに動画配信との連携サービスなどが一斉に進み、利用価値そのものが底上げされている。2025年12月には、オプテージが容量無制限系のオプション強化や高速化のトライアルを導入するなど、ユーザーが日常的に大容量通信を使いやすい環境が整いつつある。こうした多方面での施策が重なったことで、市場全体の競争力と成長の勢いが強まっている。

首位のIIJは法人IoTとギガプラン強化でシェア拡大
2025年9月末時点で独自サービス型SIM市場の事業者シェア1位は「IIJmio」「BIC SIM」などを提供するIIJ。2位は「mineo」を提供するオプテージ。3位はNTTドコモ。4位は「J:COM MOBILE」を提供するJCOM、5位は「イオンモバイル」を提供するイオンリテールとなった。

シェア1位のIIJはネットワークカメラやデバイス接続などの法人向けのIoT関連が好調で、回線数を1年間で65万回線以上伸ばした。個人向けは2025年4月に提供を開始した「JALモバイル」が好調だったほか、「ギガプラン」のデータ増量や月額料金割引キャンペーンも奏功し、堅調に契約数を伸ばした。
2位のオプテージは法人向けモバイルの好調が続き、回線数を着実に積み増した。個人向けの「mineo」では、2025年2~6月に実施した「マイピタ1~20GB 最大6カ月間990円キャンペーン」が一定の訴求効果を発揮し、2025年2月以降に新設した50GBコースや「マイそく」プレミアムの通信速度強化に伴う春のキャンペーンも好調で、9月末時点の回線数が純増した。
3位のNTTドコモは2023年7月に吸収したNTTレゾナントが提供していた「OCNモバイルONE」の新規受け付け停止により、「ドコモMAX」や「ドコモポイ活プラン」などメインブランドやオンライン専用プランへの乗り換えキャンペーンを実施した結果、ユーザーが流出し、独自サービス型SIMのシェアは2025年3月末に比べて低下した。
4位のJCOMは「J:COM MOBILE」利用者の9割がケーブルテレビや固定回線をセットで利用した場合にスマートフォンのデータ容量を増量する「データ盛」の適用者で、ケーブルテレビや固定回線利用者の獲得が好調だった。訪問販売などで対面によるサポートを受けられる点が利用者に好評で回線数が純増し、シェアは2025年3月末に比べて増加した。
5位のイオンリテールは全国のイオンモバイル店舗で対面契約やサポートが受けられる強みを活かし、イオン経済圏を活用した戦略で契約数を伸ばした。MNP(番号持ち運び制度)と同時にシェアプラン契約をするとSIMカード代金が半額になるキャンペーンや、大容量プランのデータ容量を家族でシェアする「シェアプラン」でファミリー層にアプローチした結果、回線数が純増した。
MVNO市場は、MNOとの競争環境にさらされ、特に個人向け領域では厳しい状況が続いている。一方で、IoT回線を含む法人向け需要が市場を下支え・けん引する構図は、現時点でも大きくは変化していない。
足元では、MNOにおける競争軸に変化がみられる。ここ数年続いてきた、サブブランドやオンライン専用プランの拡大を通じた実質的な値下げ競争から、付加価値競争へと重点が移りつつある。通信サービスに加え、ポイント還元、決済特典、動画などのコンテンツ配信、海外利用時の体験改善といった要素を料金プランに組み込み、料金を単なる回線対価ではなく、サービスパッケージとして再定義する動きが強まっている。MNOは価格のみで競争するのではなく、日常的に利用される周辺サービスを含めた総合的な利用価値を高めることで、ARPU(1契約当たりの月間平均収入)の維持・向上を図る方向へと舵を切っている。
この変化は、MVNOにとって一見すると追い風となる可能性がある。MNOが高付加価値化を進め、結果として実質的な値上げに向かう場合、月額料金の低さを重視する層に対してMVNOの低価格は強みとなるためである。一方で、MNOはコンテンツ、決済、固定回線などを組み合わせたセット施策を通じて、利用者のスイッチングコスト(乗り換え費用)を高める戦略を強化しており、この点はMVNOにとって逆風となる可能性もはらんでいる。
MVNO市場は総じて低価格を起点としつつ、付加価値によって利用者を定着させる局面へと移行しつつある。MNOのパッケージ化・高付加価値化が進むほど、MVNOの低価格という強みは相対的に際立つと考えられるが、低価格を起点として、どれだけ明確な利用価値と継続動機を設計できるかが今後のMVNO市場の成長を左右する主要な要因となる可能性が高い。
IoT向けSIM回線比率は今後60%を超える見込み
2026年3月末時点の独自サービス型SIM市場は1440万回線になると予測する(データ4)。ネットワークカメラなどの法人向けIoT用途のSIMが主力になっていき、2029年3月末時点のIoT向け回線比率は67.4%に達すると予測する。

■注意事項
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