固定ブロードバンド市場、緩やかな成長続く
「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2025年9月末時点)
2025年12月10日
■2025年度上期のFTTH純増数は前年度同期比28.9%減の26.8万件
■固定ブロードバンドシェアはビッグローブが4位に浮上
■2025年度通期のFTTH純増数は前年度比22.8%減の53.1万件を予測
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2025年度上期(2025年4~9月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2025年9月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は4131.6万件で、上期で26.8万件(前年度同期比28.9%減)の純増となった(データ1)。固定ブロードバンド全体の契約数は2025年9月末時点で5352.2万件となった。
CATVアクセスのFTTH化や集合住宅向け(全戸一括型)の需要がFTTH市場の純増を下支えしたものの、普及率の高まりを受けて市場の成長性は低下傾向が続いた。市場では新規需要の獲得よりもブロードバンドサービス事業者による乗り換え顧客の獲得競争が支配的で、コロナ禍前の水準に戻ってきている。各社の10Gbps光サービス投入も競争を促し、提供エリアの広がりとともに激化の様相を呈している。2025年度のFTTHの年間純増数は前年度比22.8%減の53.1万件を予測する(データ4)。
【データ1】 FTTH契約数の純増数推移
NTT東西が「フレッツ光クロス」のエリア拡大で順調な獲得
FTTH事業者の契約件数シェア(2025年9月末)では、NTTの光回線(フレッツ光及びコラボ光)契約数が東西合計で2389.8万件(シェア57.8%)となった(データ2)。10Gbpsの高速回線サービス「フレッツ光クロス」のエリア拡大に伴う契約獲得が進み、2025年3月末時点から11.1万件純増した。
通信回線事業者などがNTT東西の光回線を借りて自社ブランドで展開するコラボ光の2025年9月末の総契約数は1771.1万件で、FTTH市場全体に占める割合は42.9%、NTTの光回線に占める割合は74.1%となった。コラボ光の契約数シェアでは、NTTドコモがシェア首位を維持した。
光回線事業者の中で順調に契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。10Gbpsサービスに対応した「NURO光」は、市場全体の純増数が落ち込むなかで、高品質・大容量の回線を前面に打ち出した積極的な販促施策を展開。「2か月無料体験」(現在は終了)などのキャンペーンも貢献し、シェアは4.0%(2025年3月末比0.1ポイント上昇)となった。
アルテリア・ネットワークスは主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が大型物件でも進み、シェアは2.4%となった。新築分譲物件の供給数が減りつつある中、10Gbpsなど高品質サービスの訴求により、継続的に取引しているデベロッパーを中心に導入案件を安定的に獲得した。
【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2025年9月末)
※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる
※アルテリア・ネットワークスはつなぐネットに提供している件数が含まれる
※四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある
ビッグローブがシェア4位に浮上
固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場全体では、NTTドコモがシェア16.7%で1位を維持した(データ3)。「ドコモ光」(FTTH)は2022年度下期から純減が続いていたが、2024年8月下旬から開始した「10ギガ基本料金最大6か月間ワンコインキャンペーン」の効果などもあり、2023年度末から横ばい、2024年度末からは純増に転じ、そのペースを維持。「home 5G」(ワイヤレス)も2025年度上期で12万件増加し、首位を維持した。
シェア2位のソフトバンクは、モバイルと「ソフトバンク光」(FTTH)のセット販売や、月額基本料金が3カ月無料となる「めちゃトク割」キャンペーンなどにより光回線が好調に推移。NTTドコモとの差を0.8ポイント差に縮めた。
JCOMは、固定回線サービスを軸とした販売にシフトし回線数が増加。これまで提供してきた同軸ケーブルからFTTHへの転換も順調に進み、シェアを着実に伸ばしている。老舗インターネット接続事業者(ISP)のビッグローブも、継続的なキャッシュバックや月額基本料金割引キャンペーンなど厚みのある施策でコラボ光を伸ばし、シェアではソニーネットワークコミュニケーションズを抜いて4位に浮上した。
*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない
【データ3】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2025年9月末)
※NTTドコモにはNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)が提供する分が一部含まれる
※四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある
固定ブロードバンド市場は緩やかな増加が続く
固定ブロードバンド市場全体は緩やかな成長が続く見込みである。ADSLは2026年1月末にNTT西日本がサービス提供を終了するのに伴い終息に向かう。CATVアクセスはFTTH化が進み、契約数の減少が継続する。FTTHとワイヤレスの市場は継続的に拡大する見込みで、固定ブロードバンド市場の2025年3月末から2028年3月末までの3年間の年平均成長率は1.4%と予測する(データ4)。
【データ4】固定ブロードバンド契約数の推移・予測
※2026年3月末以降は予測値
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない
2025年度(2025年4月~2026年3月)のFTTHの年間純増数は前年度比22.8%減の53.1万件を予測する。CATVアクセスのFTTH化や集合住宅の全戸一括型での導入が引き続き堅調に進んでいるが、世帯お及び事業所におけるブロードバンド導入率の高まりを背景に純増ペースは緩やかに鈍化していくと見込む。2025年度以降の3年間のFTTH市場の年平均成長率は1.1%を予測する。2025年度上期の実績を踏まえ、前回2025年6月発表時の予測から下方修正した。市場全体の純増数が鈍化しているなかで、FTTH事業者は10Gbps回線を標準的なサービスとして注力し始めており、対応エリアの拡大とともに顧客獲得競争は一層強まると分析している。
ワイヤレス市場は、工事不要で手軽に導入できるメリットや高速通信規格「5G」対応の広がりで堅調に拡大している。2025 年度以降の3年間の年平均成長率は7.0%を予測する。
1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析から一部または全部を抜粋したものです。
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