OpenAIの著作権保護方針、日本の大学生は反対派が約4割に ~脱BYOAIへ向け、大学の教育情報基盤のルール更新が急務~

「大学生の生成AI活用状況と利活用意識に関する調査」

2025年12月02日

  • 米OpenAI社のコンテンツ著作権保護方針に反対の大学生は37%。賛成27%を上回る
  • 大学生の生成AI活用は日常化しており、8割が利用し、うち9割が利便性を実感
  • 大学のルール整備は学生のAI活用を後押し
  • 大学がベンダーの権利保護方針などでAIを絞り込んでも、学生の活用率に差は生じない
  • 大学の教育基盤として安心・安全なAI活用が求められる

大学生の生成AI(人工知能)利用は活発だが、依存対策や著作権保護への評価はどうか。ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称 MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、日本の大学に通う大学生や大学院生などを対象にアンケート調査を実施し、大学生のAI活用状況と利活用意識に関する調査結果をまとめた。調査は2025年11月に実施し、利用率、満足度などの評価と大学での活用ルールや生成AIベンダーの権利保護などの方針に対する意見を尋ね、2463人の回答結果をまとめた(一部回答を含む。詳細は調査概要を参照)。

 著作権保護で冷静な反応を示す日本の大学生、技術や利便性だけを優先しない姿勢

生成AIは便利だが、技術発展だけを優先し、既存の秩序や考え方を後回しにはしない方がよいと考える大学生も多いという調査結果が明らかとなった。OpenAI社が9月に発表した動画・画像生成AI 「Sora2 」の著作権保護方針※1について尋ねると、OpenAI社の方針に反対する大学生は37%で、賛成を10ポイント上回った。利用者の本音を交えた議論なきAIの活用推進に懸念が残る結果となった。回答全体を通じて大学生の本音は「その技術的卓越度と相反して日本社会、経済に与えるインパクトをよく吟味し活用を推進すべきだ」という示唆が垣間見える。

 【データ1】OpenAI社の画像生成AI・コンテンツ著作権保護方針に対する大学生の意識(n=2012)

大学生の生成AI活用は日常化、ルール整備が活用を後押し

大学生世代の生成AI活用状況をみると、無料版を主体とする個人向け生成AIの利用は進むようだが、大学側のルールやAI整備は遅れていることが明らかとなった。パソコン利用はBYOD(Bring Your Own Device)を中心に進み、生成AIの利用率は78%、便利と感じる比率は93%に達するなど、大学生は日常的に生成AIを利用していることがうかがえる。しかし大学のルール整備は59%、学内AIの整備は11%にとどまり、現時点ではBYOAI(Bring Your Own AI:大学生個人が個人向けAIを学内に持ち込む)の状況となっているとみられる(データ2)。

【データ2】大学生のデバイスや生成AIの活用度と大学側の対応状況

生成AIのような革新的技術を大学生が利活用するには学内ルールの整備が欠かせず、それが利用拡大の後押しとなりそうだ。生成AI活用ルールがある大学に通う学生は、ルールがない大学に通う学生と比べ、課題作成や論文作成、学習や論文執筆の支援など質問したすべての項目で活用比率が高いことが明らかとなった(データ3)

 【データ3】 生成AIの用途別利用率と大学のルール整備の関係

大学のAI活用ルール策定は大学生の生成AI利用に建設的な影響を与える

今後の活用意向でも大学がAI活用のルールを定めた方が、大学生は積極的に生成AIを活用する傾向にありそうだ。「授業や課題提出で生成AIを積極的に活用したい」 が49%、「就職活動で生成AIを活用することは重要だと思う 」が51%、「大学生のうちに生成AIのスキルアップをしておきたい」 が66%など、いずれもルールがある大学に通う学生の活用意向はルールがない大学に通う学生を10ポイントから20ポイント近く上回る結果となった。また大学に公認の生成AIがあった方がよいという学生もルールがある大学では53%と過半数を占めた。

 【データ4】大学AI活用ルール策定と学生の意識の関係

大学がベンダーの権利保護方針などで製品を絞り込んでも、学生の活用率に差はなし

生成AIの急速な利用拡大によりAIベンダー間の普及競争も激化し、権利保護方針などのスタンスに違いや変化がみられる。「大学教育の情報基盤整備戦略では、BYOAI状態からAIガバナンスをより利かせる段階に来ている」とMM総研は考える。今回の調査では、大学が運用管理やAIベンダーの利用規約を選定評価に組み込みAIを取捨選択しても、学生のAI活用意向を削がないのではないかと推測される結果となった。実際、学生側の意識として生成AIベンダーの著作権保護方針の賛否と活用率にほとんど差が生じなかった(データ5)

 【データ5】OpenAI社の著作権保護方針への賛否と学生の生成AI活用率の関係

大学の教育基盤として安心・安全なAI活用が求められる

大学生は技術性能や機能を優先するのか、モラルや社会秩序などへの配慮を優先するのかという意向によらず、生成AIを新しい技術として受け入れ、活用する姿勢だ。一方、BYOAIのみの運用では、情報漏えい対策や権利保護、また将来的には評価への活用などを続けることは難しい段階に来ている。特に多くの研究成果や著作物を取り扱う大学教育現場は、大学が保有する情報資産を適切に守りながらAIを活用する戦略が求められ、製品規約やその背景にあるAIベンダーのコンテンツ著作権保護やモラル対策などへの方針をよく比較検討して利用判断することが必要だ。学生の意向を踏まえると、現在はAI活用定着に向けBYOAIに頼らない基盤戦略を整備し、大学運営にとっても、学生にとっても「安心・安全なAI活用と情報基盤運用」を目指す好機であるとMM総研は考える。
                                             以上

※1:回答者には以下のような説明をしたうえで、質問をし、選択肢型で回答を得ている。また、総回答者2463人のうち「よくわからない」と回答した451人を除き、2012人で集計している。

 【データ1 説明文および質問文】
ChatGPTを提供するOpenAI社が新しく発表した「Sora2」という画像生成AIが、ユーザーのプロンプト(指示文)に従い、日本のゲームやアニメキャラクターに酷似した画像生成をしてしまうという事態が起きました。日米の主要コンテンツメーカーは、OpenAI社に著作権侵害の懸念を伝え、自社のキャラクターに似た画像を生成できないように生成AIを修正すべきだと抗議しましたが、OpenAI社はオプトアウト(コンテンツメーカーが自社コンテンツを学習や生成対象から除外するようにOpenAI社に「事前申請」することで、類似コンテンツの生成を防ぐ)方式を採用していることを論拠に、自社は権利侵害の責任はないと反論しています。オプトアウトしない状態で仮に権利侵害があれば、私たち生成AI利用者とコンテンツメーカーの間で争うべきという考えとも取れます。この点について生成AI利用者の立場から、OpenAI社の考えについてあなたの意見に最も近いものを選択肢の中から一つお選びください。

調査概要
1.調査対象:全国の国立、公立、私立大学に通う大学生、大学院生、博士課程に在籍中の学生
2.回答件数:2463人 ※一部回答含む
3.調査方法:インターネットによるアンケート調査(サンプル抽出は無作為)
4.調査時期:2025年11月
5.回答者属性:総計2463人(国公立大学810人/私立大学1653人)
                 :総計2463人(学部生2293人/大学院生170人/博士課程17人)
                 :学部分布やエリア分布の割り付け処理は実施していないが、参考として文系が1623人、理系が
       8840人出現する結果となっている。

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