平均単価上昇続くも、出荷金額は5%の減少に
「2024年度国内PCサーバー出荷台数調査」
2025年06月30日
■出荷金額は前年度比5%減の2697億円と3年ぶりに減少
■出荷台数は同7.6%減の31万6343台と、2018年度から6年連続で減少
■平均単価は同2.9%上昇し85.3万円、2025年度も89.6万円と引き続き上昇へ
概要
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2024年度の国内PCサーバー出荷状況を調査しその概要をまとめた。2024年度の国内PCサーバー出荷金額は2697億円(前年度比5%減)と、2021年度以来3年ぶりの減少となった(データ1)。エンタープライズ向けのAI(人工知能)需要とオフィス用途のクラウド移行の端境期にあたり、クラウドシフトによるオフィスサーバーの需要減を、クラウドに持ち出しにくい社内データをオンプレミスサーバー※でAI活用するエンタープライズAI用途がカバーするまでにはいたらなかった。
※オンプレミスサーバー・・・サーバー利用者が管理する施設内(社内のサーバールームやデータセンターなど)に設置、運用されているサーバーのこと
【データ1】2024年度国内PCサーバー出荷金額および平均単価実績と予測
詳細
◆サーバー所有は基幹業務にシフト
2024年度は出荷台数が前年度比7.6%減の31万6343台と、2018年度から6年連続で減少した。グループウエア、ファイル、プリントサーバーなどオフィスに設置するサーバーの需要は減少し、Microsoft365などパブリッククラウド上のSaaS(Software as a Service)利用が進む。一方で、企業財務会計や受発注情報などを処理する基幹システムは、企業自らがサーバーを所有してプライベートクラウドとして構築するなど、すみ分けが進んでいたが、サーバーを構成する仮想化ソフトウエアの価格改定により企業のサーバー入れ替え時の負担金額が増加したことが重荷となり、出荷台数、金額ともに伸び悩んだ。一方、仮想化ソフト大手のVMWareの値上げにより、Microsoft、Nutanix社をはじめとする他の仮想化基盤への移行も進んできており、今後は、クラウド化によるファイルやストレージなどのオフィス用途の需要減退をエンタープライズAIの用途でどれだけ補えるかがサーバー需要の鍵となろう。
【データ2】2024年度 国内PCサーバー出荷台数実績と予測
2024年度の出荷金額は、前年度比5%減の2697億円にとどまったものの、年間2500億円以上の規模を維持している。一方、平均単価は85.3万円で、上昇傾向が続いている(データ1)。企業での生成AIの活用は、オンプレミスサーバーの市場規模を今後拡大させる可能性を秘める。現在生成AIは、クラウドから展開される大規模モデルやマルチモーダルと呼ばれるモデルの利用が中心だが、2024年後半より「蒸留」などの手法を活用した軽量モデル、用途特化モデルの開発が盛んになっている。これにより製造業のラインや開発現場などにサーバーやワークステーション級の産業用パソコンとAIを組み合わせた現場活用に向けて期待が広がる。ロボットや工場内物流機器などへのAI組み込み用途も実証が活発となろう。
【データ3】2024年度 国内PCサーバー出荷金額実績と予測
◆2025年度の出荷金額は2678億円と横ばいを見込む
2025年度の出荷台数は29万8960台と減少を予測する(データ2)。一方、出荷金額はほぼ横ばいの2678億円、平均単価は89.6万円と引き続きの上昇を見込む。業務でのAI活用は「2025年の崖」といわれる基幹系システムの近代化(モダナイゼーション)後に本格化すると予測する。オンプレミスサーバーの需要では、Windows Server 2025でもGPU(画像処理半導体)仮想化がサポートされ、VDI(仮想デスクトップ環境)での利用やAIの製造現場や研究開発利用を後押しすることとなろう。最先端AIの学習は、最新GPUを集積して活用する必要がありデータセンター運用が前提だが、現場での生成AI活用(推論)では、保有するサーバーやパソコンでの処理で十分というケースが今後増加する。特に製造業や社会インフラ業と呼ばれる交通・電力・公共施設・医療などを中心にAIはクラウドで学習、推論(実用)ではオンプレミスという実装の使い分けが、基幹系モダナイゼーションがピーク迎える2025年を境にトレンドとなろう。
【PCサーバーの定義】
・PCサーバーとは32bitベースの汎用CPUと汎用OSを組み合わせた企業向けサーバーを指す。従来は企業内システムでのファイル・プリンター共有など情報系システムを中心に活用されてきた。現在ではCPU性能と製品全般の堅牢性・信頼性の向上に伴い、独自OS(基本ソフト)・独自64bitCPUで構成するUNIXサーバーの牙城であったDBサーバーなどの基幹系システムにも浸透。金額ベースで全サーバー出荷金額の50%以上、台数ベースでは95%を占める。
・本統計にはメガクラウド事業者などがODM(相手先ブランドによる設計・製造)メーカーなどから調達する自社専用設計のPCサーバーを含んでいない。
■報道関係お問い合わせ
(株)MM総研
担当:中村、長尾
所在地:105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー
電話番号:03-5777-0161 ホームページ:www.m2ri.jp
■報道に際しての注意事項
1.本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析について、報道機関限定で詳細データを提供するものです。
2.出典を「MM総研」と明記して下さい(MMは全角)。
3.数値などは表ではなくグラフ化して掲載して下さい。
4.MM総研の独自調査結果であり、公的機関の統計や企業の公表数値などと異なることがあります。また、作成時点におけるものであり、今後予告なしに変更されることがあります。
5.本データを報道以外の以下用途で無断利用することを固く禁じます。
-プロモーション(広告・販促資料・ホームページ掲載・チラシなど外部に発信する資料・データ)
-セミナー・講演会
-その他、営業目的・営利目的での使用
6.調査の詳細、研究員コメント、データ利活用などについては、担当者までお問い合わせ下さい。
■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。
本件に関するお問い合わせ先
(株)MM総研
担 当 : 中村、長尾
所在地 : 105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー
連絡先 : 03-5777-0161