FTTH市場では10G利用者が100万件を突破
「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2025年3月末時点)
2025年06月11日
■2024年度通期のFTTH純増数は前年度比16.5%減の68.8万件
■FTTHの10Gbpsサービスの利用者は初めて100万件を超えた
■固定ブロードバンドシェアはワイヤレスを伸ばしたNTTドコモが首位を維持
■2025年度通期のFTTH純増数は前年度比14.0%減の59.2万件を予測
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2024年度通期(2024年4月~2025年3月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2025年3月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は4104.8万件で、年間で68.8万件(前年度比16.5%減)の純増となった(データ1)。
コロナ禍の在宅勤務の広がりなどで2020年度から2年程度で普及が加速したFTTH市場は、その後成長の鈍化が鮮明となったが、2024年度の純増数の落ち込みは緩やかになり下げ止まりつつある。CATVアクセスのFTTH化や集合住宅向け(全戸一括型)の安定した需要に加え、NTT東西を中心に10Gbpsサービスの提供エリアの全国的な広がりが市場を下支えした。2025年度のFTTHの年間純増数は前年度比14.0%減の59.2万件を予測する。10Gbpsサービスの契約者数は2025年3月末に111.7万件となり、初めて100万件を超えた。また、ワイヤレスの契約者数は2025年3月末にCATVアクセスの規模を初めて上回った(データ4)。
【データ1】 FTTH契約数の純増数推移
NTTは東西ともに純増し首位を維持するも、シェアは低下
FTTH事業者の契約件数シェア(2025年3月末)では、NTTの光回線(フレッツ光及びコラボ光)契約数が東西合計で2378.6万件(シェア57.9%)となった(データ2)。年間では計画を上回る13万件超の純増となったが、シェアは58.6%から0.7ポイント低下した。
通信回線事業者などがNTT東西の光回線を借りて自社ブランドで展開するコラボ光の2025年3月末の総契約数は1748.5万件で、FTTH市場全体に占める割合は42.6%、NTTの光回線に占める割合は73.5%となった。コラボ光の契約数シェアでは、NTTドコモがシェア首位を維持した。
光回線事業者の中で順調に契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。10Gbpsサービスに対応したNURO光は、2024年4月に福島県、山形県でエリアを拡大し、2025年2月に提供を開始した新プラン「NURO 光 One」なども純増に貢献した。シェアは3.9%(前年度末比0.1ポイント上昇)を獲得。市場全体の純増数が落ち込むなかで、高品質・大容量の回線を前面に打ち出した積極的な販促施策が奏功した。
アルテリア・ネットワークスは主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が大型物件でも進み、シェア1.9%を維持した。10Gbpsなど高品質サービスの訴求で新築分譲物件への導入案件を安定的に獲得したほか、賃貸物件においても獲得が好調だった。
【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2025年3月末)
※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる
NTTドコモが約3年ぶりに光の純減を食い止める
固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場全体では、NTTドコモがシェア16.9%で1位を維持した(データ3)。「ドコモ光」(FTTH)は2022年度下期から純減が続いていたが、2024年8月下旬から開始した「10ギガ基本料金最大6か月間ワンコインキャンペーン」の効果などもあり、2023年度末から横ばいで推移。「home 5G」(ワイヤレス)も2024年度通期で28万件増加し、首位を維持した。
シェア2位のソフトバンクは、ADSLサービスの提供が2024年3月末で終了したことで、NTTドコモとのシェアの差が2024年9月末時点で1.0ポイント差に広がったが、モバイルと「ソフトバンク光」(FTTH)のセット販売や「10ギガ500円ではじめよう」キャンペーンなどにより光回線が好調に推移。「SoftBank Air」(ワイヤレス)も新機種の訴求で増加し、0.9ポイント差に縮めた。
JCOMは、固定回線サービスを軸とした販売にシフトし回線数が増加。これまで提供してきた同軸ケーブルからFTTHへの転換も順調に進み、シェアを着実に伸ばしている。老舗ISPのビッグローブもコラボ光を好調に伸ばし、シェアはソニーネットワークコミュニケーションズに並んだ。
*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない
【データ3】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2025年3月末)
※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる
FTTHは緩やかな増加が続く中、10Gサービスが急成長
固定ブロードバンド市場全体は緩やかな成長が続く見込みである。ADSLは2026年1月末にNTT西日本がサービス提供を終了するのに伴い終息に向かう。CATVアクセスはFTTH化が進み、契約数の減少が継続する。FTTHとワイヤレスの市場は継続的に拡大する見込みで、固定ブロードバンド市場の2025年3月末から2028年3月末までの3年間の年平均成長率は1.5%と予測する(データ4)。
【データ4】固定ブロードバンド契約数の推移・予測
※2026年3月末以降は予測値
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない
2025年度(2025年4月~2026年3月)のFTTHの年間純増数は前年度比14.0%減の59.2万件を予測する。2024年度の年間純増数68.8万件を下回るものの、減速ペースは緩やかになりつつある。CATVアクセスのFTTH化や集合住宅の全戸一括型での導入が引き続き堅調に進んでいるほか、通信速度が最大10Gbpsサービスの提供エリアが全国的に広がり、新たな需要を創出しつつある。10Gbpsサービスは2025年3月末に111.7万件となり、初めて100万件を超えた。FTTH市場に占める比率は2.7%とまだ少ないものの、2028年3月末時点では400万件超と今後3年間で約1割を占めるまでに成長すると予測する。
中期的にもワイヤレスがFTTHの潜在需要層の一部を取り込む流れが続く一方で、CATVの光回線化や集合住宅の全戸一括型導入、ワイヤレスからの一定数の移行が続き、2025年度以降の3年間のFTTH市場の年平均成長率は1.2%と緩やかな成長が継続すると予測する。FTTH事業者間では、今後主力となる10Gbpsサービスのエリア拡大が顧客獲得競争を一層強めると分析している。ワイヤレス市場は、工事不要で手軽に導入できるメリットや5G対応の広がりで堅調に拡大している。2025年3月末時点でCATVアクセスの規模を初めて上回った。今後3年間の年平均成長率は7.7%と予測する。
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