企業の衛星データ利用、「関心がある」12.1%

衛星リモートセンシングデータの利用意向調査(2024 年12 月時点)

2025年01月27日

◼ 衛星データへの関心が高い業種は「第1 次産業」
◼ 気象情報など一部で認知進むも、衛星データ利用の理解は道半ば
◼ データ提供事業者から利用者への、わかりやすく具体的な活用シーンの訴求が重要
◼ 災害対応に加え、マーケティング領域での活用にも期待

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は企業・団体従業者に対してWeb アンケート調査を実施し、2024 年12 月末時点の企業・団体による衛星データの利用意向状況をまとめた。自らの属する企業・団体における観測衛星データ利活用への関心度は「とても関心がある」と「関心がある」を合わせ12.1%となった(データ1)

衛星リモートセンシングデータ(以下、衛星データ)の利活用は、早期の市場立ち上がりが期待されている分野だ。衛星データとは、人工衛星に載せた専用のセンサーで地球を観測した際に得られるデータ(地表の画像データや海面水温など)のこと。国の宇宙戦略基金では、2030 年代早期までに、衛星データを利用したサービスを国内外で新たに30 件以上立ち上げることを目標に掲げている。これを実現するためには「非宇宙企業・団体」における衛星データの認知向上と利活用に向けた啓蒙活動を国や宇宙企業・団体が推進していく必要があるだろう。


【データ1】 衛星データ利用への関心度

衛星データへの関心が高い業種は「第1次産業」

業種別に関心度を見ると、20%以上が「関心がある」と回答したのは第1次産業を中心とする「林業」「漁業」「鉱業、採石業、砂利採取業」「農業」のほか、「学術研究」の5 業種だった(データ2)。第1次産業での関心の高さには、活用事例のわかりやすさが影響していると考えられる。農作物の生育状況の把握などはその代表例といえるだろう。

【データ2】衛星データ利用への関心度(業種別)

気象情報など一部で認知進むも、衛星データ利用の理解は道半ば

衛星データ利用事例を示し、知っているものを聞くと「知っているものはない」との回答が62.5%となった
(データ3)。知っている事例としては「天気予報アプリでの気象情報提供」が24.2%と最も多かった。認知率が10%以上の事例を見ると、「地震・火山噴火・土砂崩れ前後の地形画像を比較した被害状況把握」(14.4%)のように災害や環境問題に関係する事例が2 位から4 位までに並んだ。


【データ3】観測衛星データ利用事例の認知(複数回答)

わかりやすく具体的な活用シーンの訴求が重要

現在、観測衛星データを用いた付加価値サービスやアプリケーションサービスの開発を検討していない企業・団体の従業者に、衛星データの利用を採用・検討しない理由を確認したところ、半数の回答者が「自社のビジネスモデルに合わない」とし、次いで「顧客ニーズがない」も35.3%となるなど、自社のビジネスには必要ないと考える層が最も多いことが分かった(データ4)。「具体的な活用方法がイメージできない」(21.7%)、「費用感がわからない」(16.2%)など、具体的な利用イメージが理解できないとする理由も上位となるなど、企業における衛星データ活用への理解がまだ限定的であることがわかった。

【データ4】 衛星データを採用・検討しない理由

災害対応に加え、マーケティング領域での活用にも期待

製品・サービス開発に必要なデータの購入に関与している企業・団体の従業者に、衛星データを使って実現したいことを聞くと「災害発生時の迅速な対応」が27.2%と最多だった(データ5)。この他には「新規顧客・市場の開拓」(19.7%)、「顧客提案力の強化」(17.7%)、「新規サービス開発・商品の高付加価値化」(15.4%)など、災害対応に次いで、製品サービスのマーケティング活動への効果を期待する回答が上位に挙がった。


【データ5】 衛星データを使って実現したいこと(複数回答)

効果を実感することで導入検討が進む

衛星データの利用を検討したことがある企業・団体の従業者を対象に、衛星データを利用するために「あると検討しやすくなる」と思うものを聞いたところ、「無料トライアルがある」(15.0%)が最多となった(データ6)。実際に自社・団体で衛星データを活用できるものかを確認したいという試用ニーズがあり、利用を検討する際の呼び水となることが期待される。

 
【データ6】 衛星データ導入のために「あると検討しやすくなる」と思うもの(複数回答)

実務的な価値のある「データの選択肢のひとつ」へ

宇宙から情報を取得する衛星は技術にフォーカスして語られることが多い。しかし今回のアンケートでは、具体的な活用方法やメリットがイメージできないという意見が上位に挙がった。衛星データの提供者側が技術的な特徴を重視した説明に注力してきたことで、ユーザー側では実用的な利用場面を描きにくい状況となっていると考えられる。

また近年、衛星データを組み込んだサービス提供事業者の間でAI(人工知能)が注目されている。解析の精度が向上するだけでなく、用途の幅が広がることも期待できるからだ。例えば、森林の樹種把握などでは、AI を活用することで衛星による「広範囲の観測」という長所を伸ばすことができる。利用事業者から見ても、衛星データの長所が理解しやすいサービスは興味を持ちやすくなるだろう。

今後は衛星データが企業の意思決定や業務効率化を支援する「データの選択肢のひとつ」として認識されるよう、衛星データサービス提供事業者はより実務的な視点での情報を提供することが望まれる。導入効果を定量的に示すことや、実務での活用シーンを平易に説明していく取り組みが重要だ。無料トライアルの提供は自社業務への有効性を確認する機会として一案となるだろう。社会での認知が進み、衛星データ市場の裾野が一層広がることに期待したい。


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