2040年までに1万台以上の導入が必要不可欠

公共交通(乗合)における自動運転バスの導入台数予測(2025年1月時点)

2025年01月21日

■自動運転バスの導入は2030年に1200台、2040年には7000台と予測

■バス運転手の不足で2035年以降、乗合バスサービスの需給バランスが崩壊する可能性

■2040年までに約1万3000台の自動運転バスを導入する必要あり

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は 、公共交通における自動運転バスの導入台数の推移・予測を発表した。近年、バス運転手の不足が顕在化し、各地で廃路廃線や減便が相次ぐ中、一部地域では自動運転車両導入の実証実験が進められている。本格導入が進めば、運転手不足の課題に対して大きな効果が期待できる。MM総研では、国や各種関係団体、事業者、学術関係者への取材などに基づき、2040年までの自動運転バス※1の導入台数を予測した。

※1:公道を走る乗合バスで自動運転「レベル4」(※2)以上に対応可能な車両。現在レベル4以上で走行しているかは限定しない
※2:特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施する完全自動運転

MM総研の調べでは、2024年に延べ100台の自動運転バスが走行しており、2030年には1200台と予測する。国のデジタル田園都市国家構想戦略では地域限定型の無人自動運転移動サービスを2027年度までに100カ所以上で実現するとしている。その目標達成に向けて導入台数は増えていくものとみられるが、まずは1地域で1台、多くて数台の導入となるだろう。導入が進むとデータが蓄積され、それに伴い安全性なども改良されていくことで導入がさらに進み、2040年には7000台に達すると予測する(データ1)

一方、自動運転は車両単体で完結する「自律型※3」も存在するが、インフラとの協調も必要になってくる(路車協調型※4)。信号やスマートポール※5との連携や、自動運転専用道路の設置などといったインフラ側の整備も、自動運転車両の普及に向けて解決しなければならない課題としてのしかかる。

※3:車載カメラやセンサーと高精度3次元地図などの活用で、車両単独で走行可能な自動運転システム
※4:車載センサーでの感知以外に、歩行者や他の車両などの状況を外部との通信によって事前に把握し、インフラ側と車両側が協調する自動運転システム
※5:専用柱の設置や既存の柱(電柱など)へのセンサー取り付けによって道路上の情報を集め、通信により車両などにその情報を提供するもの

【データ1】公共交通(乗合)における自動運転バスの導入台数推移・予測

 2040年には約1万3000台の自動運転車両導入が必要に

運転手の減少予測を基に、乗合バスにおける非自動運転車両の減少予測と、利用者が現在と同程度にサービスを利用できるために必要なバス車両数を算出し、そのギャップを明らかにした。このギャップが本来導入するべき自動運転車両数とみることができ、2035年末には約4000台、2040年末には約1万3000台のギャップが生じると予測。MM総研が2040年時点の予測として算出した7000台(データ1)を差し引いたとしても、2040年末で約6000台のギャップが残る(データ2)

日本の総人口が2008年をピークに減少し続けていることに伴い、必要なバス車両総数も減少するが、特に2035年以降はその傾向以上に現在のバス運転手の大部分が定年、引退を迎える。仮に非自動運転車両の減少傾向がデータ2の予測値より緩やかであったとしても、運転手の稼働に限界があり、いずれにせよ、このままでは路線の統廃合や減便でも対応できない状況に陥るだろう。

【データ2】乗合バスにおける非自動運転車と必要な自動運転車の推移・予測

実証実験のより一層の加速と、地域の公共交通全体の枠組みからの課題解決が必要

現在でもバスの廃路廃線や減便によって公共交通サービスを満足に利用できない地域もあることから、2040年で約1万3000台を必要とする予測はあくまで「最低限」必要になる台数であり、この数値以上の導入が求められるであろう。また、この数値は、人が運転する乗合バスと同じクオリティ、スペックで公共交通サービスとして提供できることを前提としている。実証実験で現在走っている自動運転バスは、そのクオリティには達していない。今回算出したギャップを埋めていくためには、現状の進捗では間に合わない可能性が高く、今からでもより多くの実証実験を実施していく必要がある。一方、2024年12月に米Googleの親会社であるAlphabet傘下のWaymoが、2025年から東京で自動運転車の実証実験を開始することを発表するなど、外資参入を起点に社会全体が変容していくことも考えられるだろう。

自動運転車の普及が、公共交通の担い手不足という課題解決に向けて大きな役割を持つことは間違いないが、既存のバス路線を自動運転に単純に置き換えるだけで地域の移動課題がすべて解決するわけではない。従来型のバスなどに比べ、速達性や定時性、輸送力を向上させ、乗降の容易性も高めるBRT※6やLRT※7などの幹線となり得る公共交通の整備や、移動の「目的」となる領域との連携、それらを束ねるMaaS※8の普及などの要素も必要だ。地域の実情を俯瞰(ふかん)的に捉え、それに合わせた移動サービスの提供を考えていかなければならない。

※6:Bus Rapid Transit。バス専用走行空間設置などの工夫で、従来のバスよりも速達性や定時性、輸送力を高度化し、他の交通機関との接続性を高めるなど、高い利便性を提供するバスシステム
※7:Light Rail Transit。低床式車両の活用や軌道、電車停留所の改良による乗降の容易性、定時性、速達性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システム
※8:Mobility as a Service。地域住民や旅行者一人ひとりのトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行うサービス

【バス型自動運転車両(乗合)の定義】以下を条件にMM総研による分類
①公道を走る且つ自動運転「レベル4」以上に対応
②自動運転「レベル4」で現在走行しているかは問わない
②電動カート型、ロボットタクシーは含まない
注:今後の状況などにより変更する可能性があります


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■MM総研について
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