個人事業主のクラウド会計利用率は33.7%へ、引き続き拡大基調

「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2024年3月末)」

2024年04月25日

■クラウド会計ソフトの利用率は33.7%、前年比2.7ポイント増と引き続き拡大基調
■インボイス制度の開始を含めた行政手続きのデジタル化がクラウド利用を後押し
■クラウド会計ソフトの事業者別シェアは弥生が53.6%、freeeが24.9%

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施し、2024年3月末時点のクラウド会計ソフトの利用状況をまとめた。本調査では2023年(令和5年)分の確定申告を実施した個人事業主(24,878事業者)を対象とした。調査結果によると会計ソフトを利用している個人事業主は40.2%となった。そのうち、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフト※1の利用率は33.7%で、前回調査(2023年3月)の31.0%から2.7ポイント増加した。クラウド会計利用率は引き続き拡大基調にある(データ1・2・3)

クラウド会計ソフト市場は、その利便性の高さが広く認知され始め、市場の裾野を着実に広げている。市場拡大を後押しするのが政府による行政手続きのデジタル化だ。特に、2021年の確定申告から青色申告特別控除が65万円から55万円に減額されたが、インターネットで電子申告するなら65万円の控除が適用される制度が継続。加えて、2023年10月から開始されたインボイス制度も追い風となった。会計ソフト事業者もこの電子申告のメリットやインボイス制度対応、確定申告書作成の簡単さを積極的に訴求し、クラウド会計ソフトの拡販や機能強化、サポート強化に取り組んだ。今後も行政手続きのデジタル化が更に進む見通しであり、クラウド会計ソフト市場の拡大に大きな追い風となるだろう。

クラウド会計ソフトの事業者別シェアでは大手3社による寡占状況が続いている。弥生(東京都千代田区)が53.6%、次いでfreee(フリー)が24.9%、マネーフォワードが15.2%で、上位3社で93.8%を占めた(データ4)

【データ1】会計ソフトの利用率と利用形態

※1. クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用できるソフトのこと。
パソコンに会計ソフトをインストールしたもの、会計データのみをインターネット上に保管するソフトは含まない。
※上記の構成比は小数点第2位を四捨五入しているため、100%にならない場合がある。

クラウド利用率は33.7%に拡大、前年比2.7ポイント増と引き続き拡大基調

多くの個人事業主は1~12月の1年間の「所得」を確定させ、翌年2月から3月にかけて税務署に「申告」する、いわゆる「確定申告」を行っている。そのため第12回目となる今回の調査(2024年3月調査)では、2024年2月から3月にかけて確定申告を実施した個人事業主 (24,878事業者)を対象とした。調査時期は期限日当日の3月15日(金)の夜~19日とした。

上記に該当する個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施したところ、「会計ソフトを利用している」との回答は40.2%(10,010事業者)となった(データ1)。この会計ソフト利用者に、利用している会計ソフトを確認したところ、パソコンにインストールして利用するPCインストール型の会計ソフト(※会計データのみをクラウド上で保管するものを含む)が49.8%を占めた。クラウド会計ソフトを利用している個人事業主は33.7%で、2023年の31.0%から2.7ポイントの増加となった(データ2)。電子申告にすれば65万円控除から減額されない条件に変更となった2021年と翌2022年は需要の先食いで5.0ポイント増、3.5ポイント増と伸びが大きかったため、2023年は一旦その反動で1.2ポイント増に鈍化したが、今回調査では再び2.7ポイント増と拡大基調が強まった(データ3)

【データ2】会計ソフトの利用形態


データ3】会計ソフトに占めるクラウド会計ソフトの利用率の推移 

一方、「会計ソフトを利用していない」と回答した個人事業主は51.8%(12,891事業者)となった(データ1)。この非利用者に会計ソフトの代わりに利用しているものを確認したところ、「市販の帳簿やノートなどへの手書き」が38.4%、「エクセルなどの表計算ソフトに入力」が38.0%で多く、次いで「税理士や会計事務所への外部委託」が20.7%となった。

弥生がトップシェアで53.6%、freeeが24.9%で2位

クラウド会計ソフトを利用している個人事業主に、実際に利用しているクラウド会計ソフトを回答してもらったところ、事業者別では弥生が53.6%で最も多く、次いでfreeeが24.9%、マネーフォワードが15.2%の順となった(データ4)

【データ4】クラウド会計ソフトの事業者別シェアの推移

※対象ソフト
 ・弥生              ・・・「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」
 ・freee       ・・・「freee会計(確定申告)」
 ・マネーフォワード ・・・「マネーフォワード クラウド確定申告」
 ※上記シェアは小数点第2位を四捨五入しているため、100%にならない場合がある


トップの弥生のシェアは53.6%で、前年に比べ僅かだが0.8ポイント増加した。調査開始以来、首位を維持しており、個人事業主から安定した評価を得ている。2位のfreeeは24.9%で、1.1ポイント低下。3位のマネーフォワードは15.2%で、0.1ポイント低下した。上昇したのは弥生のみだが、3社ともシェアの変動幅は小さかった。
2024年3月調査の上位3社の合計シェアは93.8%に達した。個人事業主におけるクラウド会計ソフト市場で半数以上のシェアを持つ最大手の弥生と、ベンチャー系のfreee、マネーフォワードが市場をけん引しており、上位3社による寡占状態が続いている。

インボイス制度の開始を含めた行政手続きのデジタル化がクラウド利用を後押し

会計ソフト利用者に占めるクラウド利用率は年々上昇し、今回調査では33.7%にまで拡大した。ここ数年でクラウド会計ソフト市場は、その利便性の高さが広く認知され始め、市場の裾野を着実に広げている。この市場拡大を後押ししているのが政府による行政手続きのデジタル化だ。政府は2019年に成立した「デジタル手続法」に基づき、2024年度中に行政手続きの9割を電子化する方針を掲げ、様々な施策を打ち出している。税務面では青色申告特別控除の制度変更もその一環となっている。青色申告特別控除の金額は2021年の確定申告から、従来の紙をベースとした申告では65万円から55万円に減額されたが、インターネット経由で確定申告書を提出する(e-Tax利用)か、もしくは電子帳簿保存に対応したソフトを導入すれば65万円控除の優遇措置を引き続き受けられることとなった。この税制改正は個人事業主に対し、デジタル化のメリットをより明確にしたといえる。会計ソフト事業者もこの点を積極的に訴求し、電子申告に対応したクラウド会計ソフトの拡販を強化した。こうした一連の動きがクラウド利用率の拡大につながったと見られる。

また、2023年10月のインボイス制度開始も追い風になっている。大手取引先などから電子化されたインボイスでの交付を希望された場合、個人事業主側もその形式での発行・保存を検討することになるため、個人事業主側の日々の請求業務の電子化が進み(少なくとも手書きでは対応しきれなくなる)、ひいては会計業務や確定申告の電子化も進んだ。当初予定されていた制度内容よりは経過措置もとられ緩和されたが、クラウド会計を含む会計ソフト利用が進むプラス要因になっている。
ただ、クラウド会計ソフトを提供する大手事業者は、インボイス制度の開始前からすでに追加機能で対応していたため、シェア変動や乗り換えにはあまり影響しなかったと見られる。

こうした行政手続きのデジタル化やインボイス制度などの法制度変更は、すべての個人事業主にとって対応を迫られる大きなテーマとなっている。今回の調査結果でも、会計ソフトそのものを利用していない層が全体の51.8%と半数を超えているが、毎年少しずつ比率は低下しており、間もなく半分を切る見通し。会計ソフト事業者もこの流れを加速するべく、期間限定の無料キャンペーンなどを通じ、会計ソフト利用のハードルを下げる取り組みを継続的に行っている。行政手続きのデジタル化が進む中、公的支援制度の活用に関する情報や法制度の変更に関する最新情報の提供、機能追加などを実施して個人事業主に会計ソフトの利便性やメリットの高さを訴求している。こうした取り組みの積み重ねが今後も新規顧客の開拓につながっていくだろう。


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