サービス提供戸数は2ケタ成長を維持し、500万戸に

「全戸一括型マンションISPシェア調査」(2023年3月末)

2023年08月02日

■ 2023年3月末の全戸一括型マンションISPの提供戸数は500万戸
■ 事業者シェアでは、つなぐネットコミュニケーションズが6年連続で首位
■ 今後は新築物件の竣工数回復で2022年度を上回る60万戸規模の増加が続く見通し

ⅠCT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2023年3月末時点の全戸一括型マンションISP(インターネット接続事業者)のシェア調査結果を発表した。本調査は、集合住宅の全戸にインターネット接続サービス(光回線ベース・棟内有線配線)を一括で導入・提供する事業者を対象とし、任意加入方式は含まない。市場シェア(データ1)は2023年3月末時点のサービス提供戸数を対象とし、OEM提供分を除いている。

2023年3月末時点の全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数は500.0万戸で、前年同月末比57.3万戸の増加、成長率は12.9%となった(データ2)。2022年度(2022年4月~2023年3月)の同市場は、分譲マンションの竣工数が減少したことや既築賃貸マンションでの導入がそれほど進まなかったことから、前年度(61.0万戸の増加)をやや下回ったものの増加数としては高水準を維持。新築賃貸マンションの竣工数の回復とオーナーの全戸一括型インターネット採用率の継続的な上昇が成長を下支えした。

事業者別では、つなぐネットコミュニケーションズ(東京都千代田区)が市場シェア19.3%となり、6年連続で首位となった。2位は11.2%のファミリーネット・ジャパン(東京都港区)、3位は10.0%のD.U-NET(東京都新宿区)と続く。ブロードエンタープライズがギガプライズを抜き、8位に浮上した。

 

【データ1】全戸一括型マンションISPシェア(2023年3月末のサービス提供戸数)

 

【データ2】全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数の推移

事業者動向

つなぐネットコミュニケーションズ
シェア1位のアルテリアグループのつなぐネットコミュニケーションズが提供する「UCOM光 レジデンス」および「e-mansion」は、2023年3月末の提供戸数が96.4万戸(前年同月末比9.3万戸増)となった。2022年度は引き続き賃貸物件の獲得が好調で、近年の同物件への注力が形となった。分譲物件の導入も21年度を上回る伸びとなった。棟内LAN配線で各住戸まで2.5Gbpsや5Gbpsの通信速度を実現するサービスや、光配線方式による10Gbpsなどで高まる高速・高品質サービスのニーズを獲得。住戸ごとに優先ルートでインターネットに接続する「Connectix(コネクティクス)」では、動画やゲームなどを快適に利用できる点を訴求し好評を得ている。今後も新築賃貸物件の開拓を進めるほか分譲物件の掘り起こしも行い、さらなる獲得増を狙う。協業を開始した三菱地所の総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」も活用し、提供サービスの付加価値を高めていく。

 

ファミリーネット・ジャパン
「CYBERHOME(サイバーホーム)」を提供するファミリーネット・ジャパンは、2023年3月末の提供戸数が55.8万戸(同2.6万戸増)でシェア2位となった。2022年度は分譲物件、賃貸物件ともに堅調に獲得が進んだものの、賃貸市場を中心に競争が激化し伸びがやや鈍化した。2022年7月に分譲マンションデベロッパーや同管理会社向けに本格提供を開始したDXソリューション「アプリStation」は、提供開始後11社61物件で早期に採用が決まり導入が進む。複雑な顧客管理に対応するほか、IoTサービス「rimoco+(リモコプラス)」やチャットボット、施設予約などの機能を物件ごとにカスタマイズできる。また、近年は東京電力グループのシナジーを活かした再生可能エネルギーの供給で大手デベロッパーの新規開拓を行うなど、カーボンニュートラル対応サービスを強化している。2023年度以降は、東急不動産物件向けにインターネット回線の冗長化を標準採用するなど、通信品質の向上にさらに力を入れる。

 

D.U-NET
大和ハウスグループのD.U-NETは、2023年3月末の提供戸数が50.0万戸(同4.1万戸増)でシェア3位となった。大和リビングの管理物件を中心に賃貸住宅での導入ニーズを安定的に獲得したほか、大和ハウスグループ以外の物件からの受注も年々増加しており、対応を強化した。近年はインターネット回線品質の向上を目的に10Gbps化も積極的に進めており、他社導入物件の切り替え需要も取り込む。2023年度は、ドローンを活用した高所メンテナンスサービスを開始。ギガプライズおよびドローンによる洗浄システムの特許を保有するFlight PILOT(長崎県佐世保市)と協業し、大和リビング管理物件の屋根などを保守・点検する。賃貸住宅の管理業務の効率化に貢献し、顧客との関係強化を図る。

 

ファイバーゲート
ファイバーゲートは2023年3月末の提供戸数が45.5万戸(同8.2万戸増)と、昨年に続きシェア4位となった。マンションWi-Fi入居者無料サービス「FGBB」は、主力とする既築の小規模賃貸アパートのほか、新たに開拓したハウスメーカーの新築賃貸物件や投資用分譲マンションでの導入も進んだことから大きく伸びた。同業のテンフィートライト(東京都中央区)と開発したカスタマイズ性の高い顔認証インターホン「FGスマートコール」の販売を強化するほか、2023年4月に業務提携したテラモーターズ(東京都港区)のEV充電インフラ「Terra Charge」の取次など、集合住宅のニーズに対応した商材をラインアップしてインターネット需要を取り込んでいく。

 

ギガプライズ
ギガプライズは、本調査では同社の提供戸数に含まれないOEM提供分を含めると2023年3月時点の提供戸数は105.1万戸(同15.1万戸増)と好調に数を伸ばし、100万戸を超えた。昨年に引き続き新築、既築物件ともにOEM提供先での導入が拡大したほか、回線品質訴求による他社導入物件の切り替えも進んだ。クラウドカメラをはじめ、Wi-Fi6に対応した脱着式Wi-Fiアクセスポイント「PWINS(ピーウィンズ)」やスマートロックを活用した無人内覧システム「セルフ内覧」など、付加価値サービスを武器にインターネット需要を獲得する。今後は、中小規模の管理会社も取り込んでいくほか、新築分譲物件の開拓も進めていき、さらなる事業拡大を目指す。

市場動向

2023年度(2023年4月~2024年3月)は、分譲マンション・賃貸マンションともに新築物件の竣工数回復により増加数は60万戸近くまで伸びると予測する。以降も賃貸マンションを中心に新築物件での全戸一括型インターネット導入率は高まり、年間60万戸超規模の増加を維持する見込み。2023年度からの3年間の年平均成長率は10.8%と予測する。また、市場規模拡大に伴って全戸一括型インターネットサービス同士の乗り換えも徐々に増えており、今後もこうした乗り換え競争が激化していくことが予想される。

2023年度以降も社会的に浸透した在宅勤務やオンライン授業に加え、動画配信サービスの視聴やオンラインゲームなどの利用によるトラフィック(通信量)の増加が続く見通しだ。全戸一括型インターネットでは通信品質の重要性が継続的に高まっており、各住戸まで光回線を引くマンション棟内光配線方式や10Gbpsなど1Gbpsを超える通信速度のインターネット回線への需要が年々高まっている。各社が料金含め対応を強化している。

インターネットと親和性が高い付加価値サービスでは、クラウドカメラをはじめIoTサービス(スマートロック、インターホン、ホームIoTなど)や宅配ロッカーのほか、近年ではエネルギー関連サービスや管理会社など向けのデジタルトランスフォーメーション(DX)サービスが注目されている。引き続き各社は、各種の付加価値サービスをフックに全戸一括型マンションインターネットの導入を進めつつ、収益を拡大させていく見通しだ。

 

 


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