FTTH市場はテレワーク需要の一巡で成長鈍化
「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2022年3月末時点)
2022年05月31日
■2022年3月末のFTTH契約数は3666万件で2021年度の純増数は164.7万件
■FTTHのISPシェアではソフトバンクがNTTコムを抜き初の首位
■2022年度以降は5Gのエリア拡大によりワイヤレスのさらなる普及を予測
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2021年度通期(2021年4月~2022年3月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2022年3月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は前年同月末比4.7%増の3666.0万件で、年間で164.7万件の純増となった(データ1)。純増数は2020年度の194.5万件から29.8万件の減少となった。2021年度上期は新型コロナウイルスの影響でテレワークやWeb会議などが普及する中、自宅やオフィスでのFTTHの需要が大幅に増加し、前年並みの純増数を維持した。しかし、下期はテレワーク需要の鈍化や5G対応のワイヤレスホームルーターの普及により純増数は26.3万件の減少となった。
在宅需要の一巡とワイヤレスサービスの普及拡大が2022年度以降も進むことで、FTTH市場の成長鈍化が予測される。2022年度通期の純増数は134.4万件となり、2021年度の純増を下回ると予測する。
【データ1】 FTTH契約数の純増数の推移
コラボ光がNTT光回線の7割に
FTTH事業者の契約件数シェア(2022年3月末)では、NTTの光回線(フレッツ光およびコラボ光)契約数が東西合計で2326.6万件(シェア63.5%)となった(データ2)。
コラボ光の2022年3月末の総契約数は1629.2万件でFTTH市場全体に占める割合は44.4%、NTTの光回線に占める割合は70.0%となった。コラボ光の契約数シェアでは、スマートフォンとのセット販売で獲得するNTTドコモが726万件でシェア首位を維持。ソフトバンクと合わせた携帯2キャリアのシェアは、引き続き7割超を占める。
NTT東西に次いで契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。2Gbpsのサービスを中心に販売する「NURO光」がエリア拡大や積極的な販促展開で大幅に増加。シェアを継続的に拡大させている。
アルテリア・ネットワークスは、主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が継続的に進み、2022年3月末にシェア1.9%となった。新築分譲物件への導入需要を安定的に獲得したほか、近年注力する賃貸物件での導入も好調に進んだ。
【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2022年3月末)
※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる
FTTHのISPシェアはソフトバンクがNTTコムを抜き初の首位
2022年3月末のISP事業者のFTTH契約数では、ソフトバンクが件数を伸ばしNTTコミュニケーションズ(OCN)を抜き初の首位となった(データ3)。「NURO光」が好調なソニーネットワークコミュニケーションズのほか、ニフティも堅調に顧客を増やした。
【データ3】FTTH契約数・ISPシェア(2022年3月末)
ソフトバンクが固定ブロードバンド市場でシェア首位を維持
固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場では、ソフトバンクがシェア首位を維持した(データ4)。モバイルとのセット訴求を行うFTTHサービス「SoftBank光」で契約数を伸ばした。2位以下のシェア順位も、2021年9月末時点から変動はなかった。
*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない
【データ4】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2022年3月末)
在宅需要一巡とワイヤレス普及でFTTHの成長鈍化を予測
固定ブロードバンド市場では、2023年以降にサービス終了予定のADSLや光化が進むCATVアクセスで減少が続く見込みである。一方、FTTHおよびワイヤレスの増加により固定ブロードバンド市場全体では継続的な拡大が予測される。2022年3月末から2025年3月末までの3年間の年平均成長率は3.1%で、2023年3月末には5000万件を超える見込みである(データ5)。
【データ5】固定ブロードバンド契約数の推移・予測
※2023年3月末以降は予測値
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない
2022年度のFTTH市場は134万件の純増で、前年度の165万件から減少すると予測する。テレワーク等の在宅通信需要はひと段落し、新型コロナ拡大前の2019年度並みの純増数となる見込み。中期的にはCATVインフラの光化や集合住宅の全戸一括型導入が継続的に進むことなどがFTTH市場にプラスに働く一方、5Gのワイヤレスサービスの普及が進むことから、一部の需要がそちらに流れると分析する。2022年度以降の3年間の年平均成長率は2.9%で、2025年3 月末の契約数は4000万件を予測する。
ワイヤレス市場は2022年3月末時点で445万件となり、FTTHと同様にテレワーク等の需要を一定数取り込んで契約数が増加。2021年度は各社が5G対応製品の提供を開始したほか、NTTドコモの新規参入が市場拡大の後押しをした。2022年度以降は、5G対応エリアが一層拡大されることから、従来のFTTH等の固定ブロードバンド回線を一部代替するサービスとして普及が進む。2023年3月末には固定ブロードバンド契約数の1割以上を占める見込みで、2022年度以降の3年間の年平均成長率は15.0%と大きく成長すると予測する。
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