Web電話帳のクライアントライセンス数は255万件に拡大へ
「Web統合電話帳アプリケーションの市場規模調査」(2021年8月調査)
2021年08月30日
■ 市場規模は2020年末の219万件から2021年末で255万件に拡大見込み
■ 大企業のオフィス改革、コミュニケーション手段の統合化ニーズはコロナ禍でも増加、Web電話帳市場の拡大をけん引
■ 事業者別シェアではPHONE APPLIがライセンス数シェアで87.5%を獲得
ⅠCT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、主要なソリューション事業者へのヒアリング調査を実施し、Web統合電話帳アプリケーション(以下、Web電話帳)の市場規模および事業者シェアをまとめた。Web電話帳とは、社員や顧客の電話番号、メールアドレスをWeb上で一元管理し、固定電話やモバイル端末などから利用できるWebベースの電話帳アプリケーションである。ビジネスチャット、プレゼンス(在席情報)確認、Web会議の予約など、他のコミュニケーションツールとも連携できる機能を備えている。
今回の調査によれば、2020年12月末時点のWeb電話帳のクライアントライセンス数は218.9万件で前年同期比39.5万件の増加となった(データ1)。大企業のオフィス改革需要はコロナ禍でも旺盛で、フリーアドレス化して社員の発想の転換をはかり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に結びつけようとする動きや、併せてオフィス移転・リニューアルする企業が増加。また、コミュニケーション手段が固定電話やメール、スマートフォン、Web会議、ビジネスチャットなどと分散化する中、会社や企業グループとして統合したいとするニーズがいっそう高まっており、これらがWeb電話帳の導入拡大に結び付いている。既にあるSFAやCRMとの連携需要、スマートフォン導入時の統合連絡ツールの需要と並ぶ、新たな市場の潮流となった。
【データ1】Web統合電話帳アプリケーションの市場規模の推移と予測 (※2021年8月調査時点)
今後も特にコロナ禍では大企業を中心とした導入が続くと見られるが、中小企業や官公庁、医療機関でもWeb電話帳を導入する動きが広がりつつある。市場の拡大基調は続き、MM総研では2021年末のクライアントライセンス数を255万件、2022年末には290万件に拡大するものと予測する(データ1)。
【データ2】Web統合電話帳アプリケーションの事業者別シェア(2020年12月末時点)
PHONE APPLIが市場シェア(クライアントライセンス数)87.5%を獲得
Web電話帳市場でトップに立つのがPHONE APPLI(以下、フォンアプリ)である。同社が提供するWeb電話帳クラウドサービス「PHONE APPLI PEOPLE」(旧・連絡とれるくん)の2020年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比25%増となる191.5万件に拡大、市場シェアで87.5%を獲得した(データ2)。導入企業は金融、製造、商社、小売、通信などの大企業が中心で、2020年は特に製造業や一部大手商社などの導入が拡大。一方で、中堅中小企業の導入はコロナ禍で一時的に鈍ったが、医療機関や官公庁・自治体などでの導入が徐々に進み、顧客層の裾野は年々広がっている。
販売チャネルは、大手通信事業者に加え、IP-PBX製品を取り扱う大手SIer・ソリューションベンダー、中堅中小企業を得意とするIT系の販売店など顧客基盤を持つ企業が中心となっている。これらのパートナー企業はWeb電話帳との連携で利便性が高まる製品やサービスと組み合わせる形でフォンアプリのWeb電話帳を拡販している。
フォンアプリのWeb電話帳クラウドサービスの強みは、シスコシステムズなど主要な国内事業者の音声基盤(IP-PBX)に対応している点だ。アプリケーション領域でも、Microsoft TeamsやZoom、Salesforce、ビジネスチャットのLINE WORKSなど多様なコミュニケーションツールとの連携を実現している。機能面では直感的で使いやすいユーザーインターフェースや名刺管理機能などがあり、昨今のコロナ禍のテレワーク需要においてもコミュニケーションの核となる機能を備えている。
また、名刺管理ツールやSalesforceとの連携など、全方位で連携強化を進めており、現在は一旦、大企業向けを中心とした動きに傾注しているが、フォンアプリでは今後もソリューション連携やサポート体制の拡充を進めていく方針だ。
日本証券テクノロジーはSI力を強みにカスタマイズ案件、電話基盤更改案件を獲得
2位は日本証券テクノロジーで、2020年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比7%増の21.2万件となった。2020年は前年に続き既存顧客からのカスタマイズ案件、電話基盤更改案件の獲得が進み、
SI売上が高い状態を継続。同社の強みは、高い信頼性と安定性が求められる金融業界向けで数多くの導入実績を持つ点だ。顧客からも高い評価と信頼を得ており、この実績の積み重ねが新規顧客や既存顧客のカスタマイズ案件の獲得につながっている。
同社が提供するWeb電話帳アプリケーション「NSTechno-phone Manager」の特徴は、IP電話とPC・スマートフォンの機能を融合し、これを継続的に強化している点だ。多様なIP電話の機能をPC画面上に集約することで、クリック発信や着信時の発信者情報の表示、プレゼンス(在席情報など)確認、チャットなどを簡単に利用できる。マニュアルがなくとも直感的に画面を操作できる点も大きな特徴だ。近年ではスマホ導入企業の増加に対応し、モバイル版のユーザーインターフェースや機能の拡充を図っている。
Web電話帳自体の機能や操作性の高さに加え、顧客からの要望に柔軟に対応できるSI力も同社の強みとなっている。日本証券テクノロジーによれば、顧客からの要望として増えているのが、既存のSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)との連携、自社の業務に合せたカスタマイズ・電話基盤更改、テレワークの増加に伴うスマートフォン連携だという。新規顧客・既存顧客を問わず、今後もカスタマイズニーズはさらに増えてくると見ている。同社は高い信頼性を求められる金融業界で多くのカスタマイズ案件に対応してきた実績やノウハウを持つ。これをベースに連携ニーズやカスタマイズニーズへの対応を引き続き強化していく方針だ。
累計ライセンス数は2021年末で250万件を突破、2022年末で290万件を予測
先述したように、MM総研の分析では、2021年末のWeb電話帳の市場規模(クライアントライセンス数)は255万件、2022年末時点で290万件に拡大するものと予測する。大企業では顧客や社員情報の分散管理を解決し、コミュニケーションを効率化する手段としてWeb電話帳の存在感が年々高まっている。また、オフィスをフリーアドレス化して社員の発想の転換をはかる働き方改革目的の大企業も増えており、部分導入から全社導入、更には子会社やグループ会社にも導入を広げる動きも加速している。今後も大企業での導入が市場拡大をけん引していくものと見られる。
Web電話帳を導入する動きは中小企業や医療機関、官公庁でも広がっている。特にスマートフォンの導入時や既存の名刺管理ツールとの連携などを目的に導入するケースが増えている。コミュニケーションの効率化による業務効率化や顧客対応の強化は、多くの中小企業や医療機関にとっても共通の経営課題である。この課題解決につながるソリューションとしてWeb電話帳を導入する動きは今後も広がっていくだろう。
■Web統合電話帳アプリケーションの定義
・IP-PBX/SIPサーバー等と連携し、電話番号、メールアドレスなどの電話帳を、固定電話やモバイル端末(PC、スマートフォン、タブレット端末など)などから、社内・社外を問わず、利用できるようにするWebベースの電話帳アプリケーションであること
・電話帳の画面上で、電話、メール、プレゼンス確認、ビジネスチャット、Web会議などの
コミュニケーションツールと連携できる機能を持っていること
・Web上での電話帳データの共有管理・一括管理に機能が限定されたソフトウェアは含まない
・PBX等の一機能として提供されているものは除く
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■MM総研について
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