Web統合電話帳アプリケーション市場の概況 (2014年末)

 

2015年03月19日

■ 2014年12月末時点の市場規模は、前年比57%増の46.2万ライセンスに拡大
■ 事業者シェアはクライアントライセンス数でPhoneAppliが75%を獲得
■ 業務システムとの連携、クラウド対応の進展で2015年末は68万規模に拡大へ

 MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は、主要なソリューション事業者へのヒアリング調査等をもとに、企業内にある様々なコミュニケーションツールの統合・連携を実現するWeb統合電話帳アプリケーション(※)の市場規模及び事業者シェアをまとめた。調査結果によると、2014年12月末時点のWeb統合電話帳アプリケーション(以下、Web電話帳)のクライアントライセンス数は13年12月末時点の29.5万に比べ57%増となる46.2万に拡大した。
 
 大企業を中心に、コミュニケーションの効率化による生産性の向上や業務効率化、クラウドとスマートデバイスを活用したワークスタイル導入への動きが引き続き市場拡大をけん引している。さらには、CRMやSFAといった顧客情報を扱う既存の業務システムとの連携も始まっている。市場の裾野は、大企業だけでなく、中堅中小企業にも広がっており、PBXの販売を行ってきた通信機ディーラーなども顧客のIP化ニーズに応える商材の一つとして積極的に取り扱いを開始している。

 Web電話帳のサービス事業者も、初期投資が比較的少なく、手軽に導入できるクラウドサービスでの提供を開始するなど、導入が加速する環境が整いつつある。こうした状況からMM総研では、2015年末のクライアントライセンス数は68万ライセンス、2016年末には95万ライセンスにまで拡大し、2017年には100万ライセンスを突破するものと予想する。

 

 

◆PhoneAppliが市場シェア(クライアントライセンス数)75%を獲得

 Web統合電話帳アプリケーション市場でトップシェアに立つのが㈱PhoneAppli(以下、フォンアプリ社)である。同社が提供するWeb電話帳アプリケーション、フォンアプリ「Collaboration Directory」(以下、PACD)の14年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比66%増となる34.8万に拡大、市場シェアで75.3%を獲得している。導入企業は大手企業を中心に拡大しており、ITサービス系企業から製造、商社、金融、流通など顧客層は幅広い。同社の強みはシスコシステムズ(以下、シスコ社)のユニファイドコミュニケーション基盤「Cisco Unified Communications Manager」(以下、CUCM)との接続技術の高さであり、これまでにも数多くの実績を上げている。

 同社のPACDを導入することで、コミュニケーションを取りたい相手の状況を確認した上で、その状況に応じて最適な連絡方法を選べ、コミュニケーションの効率化を図ることができる。直感的で使いやすいユーザーインターフェースや、社員の専門性や組織情報を効率的に管理し、必要な時に最適な社員を簡単に検索できる機能などが充実しており、導入企業からも高い評価を得ているという。14年10月には名刺情報をセキュアな状態でサーバーへ送信し、登録できる機能も追加。これにより登録、データ入力などに手間がかかり、リアルタイム性に欠けていた名刺情報の管理が改善されるという。
 
 同社の販売チャネルは、シスコ社のコミュニケーション製品を取り扱う大手ソリューションベンダーなどに加え、近年では大手通信事業者や中堅中小市場を得意とするIT系の販売店なども一次代理店やOEMの販売パートナーとなっており、今後も販売チャネルの拡充を進めていく。また、幅広い顧客ニーズに対応していくためにシスコ社以外のコミュニケーション製品との連携やクラウド対応についても強化していく方針だ。
 
 2位の日本証券テクノロジー㈱の14年12月末時点のクライアントライセンス数は8万で、前年比45%増と大きく伸長した。特に金融系での大口案件の獲得が実績拡大につながった。同社は金融系向けの案件で多くの実績を持っており、顧客からも高い信頼を得ている。この実績の積み重ねが新たなビジネス獲得にもつながっているようだ。

 同社では、シスコ社のコミュニケーション基盤製品「Cisco Unified Communications Manager」対応のWeb電話帳アプリケーション「NSTechno-phone Manager」を軸にしたCTIソリューションの提供に注力している。近年では多様な顧客ニーズに応えるため、シスコ社製品だけでなく、NECの「UNIVERGE SV9500」や日立の「NETTOWER CX-01」にも対応したWeb電話帳アプリケーションの提供を開始。Web電話帳をベースにした企業のワークスタイル変革を支援している。

 同社が提供するWeb電話帳は、「在席管理・話中確認機能」や「着信監視・表示機能」など多彩な機能を備えている。最近では顧客からのニーズが高かったチャット対応機能を追加するなど、継続的な機能拡充も進めている。他社と大きく異なっているのは、単なる売切り型のビジネスではなく、SIを強みとしている点。Web電話帳の導入に当たっては、SIの要望も多くなっており、案件によっては要件定義の段階から深く入り込むこともあるという。2015年の見通しについては、不確定要素はあるものの、前年以上をめざすとしており、電話とCRMとの連携など、SIをより深化させたビジネスを推進していく。

 3位の富士通㈱はクライアントライセンス数が2.2万と、前年比10%増の伸びとなった。導入ユーザーは数千ライセンス規模が多いという。富士通のWeb電話帳ソフト「FUJITSU Network ContactFind」は、パソコンや携帯電話に加え、スマートフォン、タブレットなど、様々なデバイスから簡単に利用できるWebベースの電話帳アプリケーション。シスコ社の「Cisco Unified Communications Manager」と連携し、電話、プレゼンス、インスタントメッセージ、Web会議など多彩なコミュニケーションツールとの連携が可能だ。コミュニケーションポータルとして、企業内のコミュニケーションの効率化を実現し、さらにはMicrosoft社のActive Directory(以下、AD)との連携によって、ADのデータ(アドレス情報や部門情報など)をWeb電話帳に簡単に取り込むことが可能で、組織変更に伴う電話帳データの登録やメンテナンス作業の効率化など、運用負担を大幅に削減できる。富士通ではワークスタイルの変革をめざし、コミュニケーション基盤の入れ替えを進めている企業に対する提案の一つとして、今後も拡販を進めていく。

 「その他」に含まれてはいるものの、今後確実に実績を伸ばす事業者と見られるのが、㈱日立情報通信エンジニアリング(商品名「日立IP-PBX『NETTOWER CX-01』連携Web電話帳ソリューション」とアルファコム㈱(商品名:Mobile First Box Access)の2社である。両社とも昨年から本格的にサービスの提供を開始したが、商品に対する認知度も広がりつつあり、取扱いパートナーの拡大など拡販体制の整備も進んでいる。すでに複数の案件を獲得しており、2015年も更なる顧客獲得が期待されている。

◆2015年末には60万ライセンスを突破、2017年末で100万ライセンスに拡大へ

 MM総研の分析では、2015年末にWeb統合電話帳アプリケーション市場(以下、Web電話帳)は、クライアントライセンス数ベースで68万に達し、2016年末時点で95万ライセンス、2017年中には100万に達するものと予測している。Web電話帳の導入企業は大企業が中心であり、利用満足度も高いことから、自社にとどまらず、グループ会社や子会社までを含めた拡張が進んでいる。CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)など顧客情報を扱う業務システムとの連携ニーズも高まっており、企業システム内におけるWeb電話帳の価値は高まっている。
Web電話帳の導入には、IP-PBXなどのユニファイドコミュニケーションシステムの導入が必要となるが、中堅中小市場でも、IP化を支援する低価格なIP-PBXやクラウドによる提供などによりWeb電話帳の導入の敷居も低くなりつつある。これまでPBXを主要商材としていた通信系ディーラーや、IT系の販売店も中堅中小企業へのIP化提案において、IP化の効果を体感してもらえる商材としてWeb電話帳の提案に注力し始めている。
 
 Web電話帳の認知度の向上、取扱い販売チャネルの拡大、さらにはクラウドサービスによる提供が浸透することで、今後も市場の拡大基調は続くものと予想される。

※Web統合電話帳アプリケーションの定義
・IP-PBX/SIPサーバー等と連携し、電話番号、メールアドレスなどの電話帳を、固定電話やモバイル端末(PC、スマートフォン、タブレット端末など)などから、社内・社外を問わず、利用できるようにするWebベースの電話帳アプリケーションであること。
・電話帳の画面上で、電話、メール、プレゼンス確認、インスタントメッセージ、Web会議などの
コミュニケーションツールと連携できる機能を持っていること
・Web上での電話帳データの共有管理・一括管理に機能が限定されたソフトウェアは含まない。
・PBX等の一機能として提供されているものは除く


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