ポイント/クレカ/EC連携で楽天善戦、QRはソフトバンク優勢
「ポイント/決済サービスの携帯キャリア別利用状況調査」(2020年6月末時点)
2020年08月07日
■ ポイント/クレジットカード/ECサイトのクロスユース率で楽天がトップを維持
■ ポイントサービスのクロスユース率でau、ドコモが追い上げ
■ QRコード決済ではソフトバンクのクロスユース率が大幅に増加
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は15歳~79歳の男女5万3451人を対象にWEBアンケート調査を実施し、2020年6月末時点のポイント/決済サービスの携帯キャリア別利用状況をまとめた。携帯電話利用者が、契約先の携帯キャリア会社が提供する各種サービスを「最も利用している」と回答した比率(以下、クロスユース率)を指標とした。本調査では、①ポイントサービス、②クレジットカード、③QRコード決済、④ECサイトの4領域を分析した。なお、携帯電話はメインで利用しているものを対象とした。
調査結果によると、ポイントサービス/クレジットカード/ECサイトのクロスユース率は楽天モバイル※1が前回に引き続きトップだった(データ1・2・4・5)。これまで楽天は、グループ内でのサービス利用状況に応じてポイントの還元率が変わる「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」の設置などを通して、グループ内の複数サービス利用を推進してきた。モバイル市場は依然3大キャリアの寡占状態にあるものの、楽天モバイルは第4のキャリアとしてポイント連携戦略で攻勢をかけている。
※1楽天モバイルには楽天MNOサービスと楽天MVNOサービス利用者の両者を含む。
だが、3大キャリアも負けてはいない。ポイントサービスのクロスユース率では、auが前回調査(2019年9月時点)より7.4ポイント増加し18.2%、ドコモが6.6ポイント増の28.0%と伸長した(データ2)。ポイントの利便性や認知度を高める施策を実施し、ユーザーの囲い込みを進めた。QRコード決済のクロスユース率ではソフトバンクが前回調査時より24.9ポイント増の40.8%。還元特典をTポイントからPayPay残高にシフトした結果、大幅に伸びたとみられる(データ3)。
【データ1】サービスごとのキャリア別クロスユース状況
ポイントサービスでau、ドコモが追い上げ
各携帯キャリア(グループ企業含む)が提供するポイントサービスのクロスユース率は、楽天モバイルユーザーによる「楽天スーパーポイント」が74.5%で最も高く、次いでソフトバンクユーザーによる「Tポイント※2」の37.1%だった(データ2)。
※2 Tポイントはソフトバンクと提携関係
【データ2】 携帯キャリアとポイントサービスのクロスユース状況
2019年9月調査時と比較して最も高い伸びを示したのは、auユーザーによる「Pontaポイント」で7.4ポイント増の18.2%。au Payブランドへの統一やPontaポイントとの統合などの施策が功を奏したとみられる。次いで高かったのは、ドコモユーザーによる「dポイント」で6.6ポイント増の28.0%だった。CMの投下や利用店舗の拡大などの施策が伸びにつながった。楽天モバイルは、前回調査時から5.5ポイント増と堅調な伸びをみせた。ソフトバンクは3.6ポイント減と唯一減少に転じた。還元特典をTポイントからPayPay残高にシフトした影響と考えられる。
QRコード決済ではソフトバンクが大幅に増加
各携帯キャリアが提供するQRコード決済のクロスユース率では、ソフトバンクユーザーによる「PayPay」が40.8%で最も高く、次いで楽天モバイルユーザーによる「楽天Pay」が19.1%だった(データ3)。ソフトバンクは2019年9月調査時より24.9ポイントの増加。また、楽天モバイルは9.2ポイントの増加だった。auユーザーによる「au Pay」は14.2ポイント増の15.9%で、ドコモユーザーによる「d払い」の15.7%(7.4ポイント増)を上回った。ソフトバンクは19年7月より携帯料金支払いでPayPay残高を使えるようにし、8月には長期継続特典を期間限定TポイントからPayPayボーナスに変更した。そうしたQRコード決済による囲い込み施策が、クロスユース率の大幅な増加につながったとみられる。
【データ3】携帯キャリアとQRコード決済のクロスユース状況
クレジットカードでは楽天がさらに囲い込みを強化
各携帯キャリアが提供するクレジットカードのクロスユース率では、楽天モバイルユーザーによる「楽天カード」が64.7%で最も高く、次いでドコモユーザーによる「dカード」が14.7%だった(データ4)。元々顧客基盤を持つ楽天モバイルがさらに囲い込みを進める結果となった。
【データ4】 携帯キャリアとクレジットカードのクロスユース状況
ECサイトでは3大キャリアともに携帯利用者への誘導が課題
各携帯キャリアが提供するECサイトのクロスユース率では、楽天モバイルユーザーによる「楽天市場」が62.9%で最も高く、次いで高かったのはソフトバンクユーザーによる「Yahoo!ショッピング」の26.7%だった。3位はauユーザーによる「au Payマーケット」で5.5%、ドコモユーザーによる「dショッピング」は1.7%と低かった(データ5)。各社伸び幅は少なく、ECサイト分野では依然楽天市場の存在感が大きい結果となった。
【データ5】携帯キャリアとECサイトのクロスユース状況
最後発キャリアである楽天モバイルは、ポイント連携やキャンペーンを通してユーザーの獲得を進めている。今後自社回線エリアが拡大すれば、同社が有する顧客基盤に対してさらにリーチをかけやすくなるだろう。一方、3大キャリアも積極的に施策を打ち、ポイントサービスやQRコード決済事業で存在感を高めている。すでに7月から申し込み受付が始まっている「マイナポイント」を機に、自社サービス利用率をさらに高められるかが今後のカギとなる。キャリアの囲い込み戦略を考える上で、固定インターネットや電気といった要素も欠かせない。本調査では決済関連におけるクロスユース率に着目したが、他領域も含め今後も注視していくつもりだ。
【調査結果1】携帯キャリアと各種サービスのクロスユース状況
【調査結果2】携帯キャリアと各種サービスのクロスユース状況 (上位5サービス)
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