提供戸数は昨年比21%増の272.9万戸(2019年3月末)

全戸一括型マンションISP調査

2019年09月10日

■ 全戸一括型マンションISPの提供戸数は272.9万戸で昨年比21.0%増加
■ シェア首位は昨年に続き、つなぐネットコミュニケーションズ
■ 新築物件向けインターネット市場は中長期的に成長鈍化を予測
■ 各事業者は付加価値サービスのラインアップ強化と通信品質の維持が課題

 MM総研(東京都港区、所長・関口和一)は9月10日、2019年3月末時点の全戸一括型マンションISP(インターネット接続業者)シェア調査結果を発表した。全戸一括型マンションISP全体の加入件数(提供戸数)は272.9万戸で、既築の賃貸物件向けの導入が進んだことから2018年3月末比21.0%増と大きく伸びた。事業者別シェアではアルテリアグループのつなぐネットコミュニケーションズが23.7%を占め、昨年に続き首位を維持した。2位は14.9%のファミリーネット・ジャパン。3位はD.U-NET(11.3%)で3.4ポイント伸ばした。

 

■全戸一括型マンションISPシェア(2019年3月末)

※全戸一括型マンションISP・・・集合住宅の全戸分にインターネット接続サービス(光回線ベース)を一括で導入・提供する事業者。
※全戸一括加入方式を対象とし、任意加入方式は含まない。また、数値は2018年3月末時点サービス提供分を対象とし、OEM提供分を除く。

 

~事業者動向~

 シェア1位だったアルテリアグループのつなぐネットコミュニケーションズが展開する「UCOM光 レジデンス」および「e-mansion」は、2019年3月末の提供戸数が64.6万戸(年間5.2万戸増) 、OEM提供分を含めると提供戸数は70万戸を超えた模様。得意とする新築分譲で順調に戸数を伸ばすとともに中大規模賃貸物件の伸びが全体を押し上げる結果となった。動画などの映像配信サービスの視聴増加に伴い、トラフィックが増加傾向にあり高い通信品質が求められていることから、最大10Gbpsの専有型回線の光配線方式を採用した「マンション全戸一括10Gタイプ」は分譲物件のほか学生寮で採用されている。
 その他、スマートロックやセンサーなどのマンション向けIoTサービスに加えて、管理組合支援サービス「Mcloud(エムクラウド)」を提供している。これは、資料の一元管理や会議の出欠確認等の機能により、管理組合の運営の課題を解消する。これらのソリューションとともに分譲および賃貸物件で戸数の多い大型物件への販売に強みをもっている。
 「CYBERHOME」を展開するファミリーネット・ジャパンは、2019年3月末の提供戸数が40.7万戸で昨年に続きシェア2位となった。アプリやスマートスピーカーで住宅設備や家電を制御するIoTサービス「rimoco(リモコ)」や、スマートエネルギーサービスの提供が奏功し、年間6.9万戸増えた。「AI管理員/AIコンシェルジュ」は音声等の対話型サービスで問い合わせ対応することで管理者の省力化に寄与し、物件オーナーやデベロッパーからの注目度が高い。今後もAI や IoT などの先進的技術を組み合わせたソリューションサービスとインターネット回線をセットで提供し、賃貸・分譲共に新規獲得をめざす。
 シェア3位だった「D.U-NET」を展開する大和ハウスグループのD.U-NETは、2019年3月末の提供戸数が30.8万戸で、既存の小規模賃貸物件を中心に年間 13万戸増と大きく伸びた。今後はグループ内外の賃貸・分譲物件へのアプローチも強化する。また、ネットワーク環境の整備によって遠隔からでも物件の状況確認が可能になることから、管理会社に対して業務効率と省力化のソリューションも含めて積極的に訴求していく。
 ファイバーゲートは2019年3月末の提供戸数が16.2万戸(年間4.2万戸増)と、昨年から2つ順位を上げ5位となった。提供地域は全国だが、北海道エリアに力を入れるほか、東北地方の復興需要によるインターネット無料マンション需要の高まりを受け、対応を強化する。
 昨年と同様シェア8位のギガプライズはOEM先からの受注が新規、既存物件共に大幅に増加した。本調査では同社の提供戸数には含まれないが、OEM提供分を含めると2019年3月末時点の提供戸数は42.5万戸(年間16.8万戸増)と躍進し、1位のつなぐネットコミュニケーションズに次ぐ規模となった。 

~市場動向~

 足元では引き続き、新築賃貸アパート・マンションの大量供給に伴い全戸一括型インターネットの導入が進む。一方、中長期的には空室率の増加や過剰供給の警戒から新規着工数が減るほか、一部金融機関の不正融資問題により融資基準が厳格化されていることから、供給はやや落ち着くとみている。同様に分譲物件の供給数も減少傾向にあり、新築物件向けインターネットの導入は減少するとみられる。全戸一括型マンションISP各社は既築の賃貸物件への導入に一層注力することから、同既築向け市場におけるインターネット導入が増加すると予測する。
 マンションISP各社は入居者や管理会社、オーナーそれぞれの多様な要望に対応する。マンション向けIoTサービスや管理者向けの支援サービス、コミュニケーションツールなどを導入することで利便性の向上や業務の効率化・省力化を図る。そのほか、再配達の社会問題を受けて、賃貸物件を中心に宅配ボックスの設置も増え始めている。インターネット回線と付加価値サービスをセット提供することで、他社との差別化を図るとともに収益向上をねらう。また、動画などの大容量のリッチコンテンツやクラウドサービスの利用によるトラフィックが一貫して増加していることから、マンションISP事業者は安定したインターネット環境を提供する回線品質の維持が課題となっている。

 

 


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