Web統合電話帳アプリケーション市場の概況 (2017年末)
2018年04月09日
■ 2017年12月末の市場規模は、前年比16%増の116.9万ライセンスに拡大
■ 事業者シェアはPhone Appliがクライアントライセンス数シェアで81%を獲得
■ クラウド利用や様々のシステムとの連携も拡大、2019年末は160万規模に拡大へ
MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は、主要なソリューション事業者へのヒアリング調査等をもとに、企業内の様々なコミュニケーションツールの統合・連携を実現するWeb統合電話帳アプリケーション(※)の市場規模及び事業者シェアをまとめた。調査結果では、2017年12月末時点のWeb統合電話帳アプリケーション(以下、Web電話帳)のクライアントライセンス数は2016年12月末時点の100.6万から16%増となる116.9万に拡大した。
「働き方改革」の実現に向けた政府の動きが加速する中で、仕事の効率や生産性向上の一環としてコミュニケーション改革に取り組む大企業を中心にWeb電話帳の導入が進んでいる。特にスマートデバイスの導入やコミュニケーション基盤の更新、事業所移転などの機会に導入するケースが増加している。企業内利用も進むチャットや名刺管理などの機能に加え、SFA(営業支援システム)などの他のシステムとの連携ニーズなど、Web電話帳の活用ニーズが拡大している。
市場の裾野も大企業だけでなく、中堅中小市場にも広がっている。人手不足の深刻さは大企業以上であり、業務効率化は喫緊の経営課題だ。こうした状況から社内外におけるコミュニケーションの効率化を手軽に実現できるWeb電話帳を、初期投資が少なく、手軽に導入できるクラウドベースで利用する中堅中小企業が着実に増えている。こうした状況からMM総研では2018年末のクライアントライセンス数を135万ライセンス、2019年末には160万ライセンスに拡大するものと予想する。
【データ1】Web統合電話帳アプリケーションの市場規模及び予測 (※2017年12月末)
<クライアントライセンス数の推移>
※2018年12月末以降はMM総研予測値
【データ2】Web統合電話帳アプリケーションの事業者シェア(※2017年12月末)
Phone Appliが市場シェア(クライアントライセンス数)81%を獲得
Web電話帳市場でトップシェアに立つのが㈱Phone Appli(以下、フォンアプリ)である。同社が提供する「Phone Appli Web電話帳」の2017年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比20%増となる94.7万に拡大、市場シェアで81.0%を獲得した。大企業を中心に、ITサービス系企業から製造、商社、金融、流通などに加え、近年では多種多様なサービス業などにも顧客層が広がっている。同社のWeb電話帳の特長は、シスコシステムズ(以下、シスコ)のコミュニケーション基盤との豊富な連携実績に加え、主要な国内事業者の音声基盤(IP-PBX)や、マイクロソフト、セールスフォースなどとの連携を実現している点だ。マルチデバイス・マルチキャリア対応も含め、多様な顧客ニーズに対応できる点が顧客からも高く評価されている。充実した販売チャネルも同社の強みであり、IP-PBX製品を取り扱う大手ソリューションベンダーなどに加え、大手通信事業者や中堅中小市場を得意とするIT系の販売店などが販売パートナーとなっている。
フォンアプリのWeb電話帳を導入することで、社内外の連絡先を一元管理し、連絡を取りたい時に、取りたい相手と簡単につながることができる。直感的で使いやすいユーザーインターフェースや充実した検索機能に加え、名刺管理機能など様々なコミュニケーション製品と連携できる点も高い評価を得ている。クラウド版のWeb電話帳サービス「連絡とれるくん」は、機能を簡素化し、価格も1ユーザーからの月額制にすることで、より小規模な企業や部門単位での導入が進んでいる。そのオプションサービスである「居場所わかるくん」は、無線環境や小型のビーコンを用い、社員やモノの位置情報をWeb電話上で可視化できるサービスだ。コミュニケーションを図る上で必要となる対面や対話の機会を確保するためのツールとなっている。フォンアプリでは、Web電話帳を中核に、人と人、人とモノをインターネットでつなぎ、コミュニケーションの効率化と働き方改革を支援するソリューションの拡充・提供に今後も注力していく方針だ。
2位の日本証券テクノロジー㈱は2017年12月末時点で、クライアントライセンス数は17.2万となった。2017年は新規案件の獲得に加え、既存顧客のカスタマイズ対応が増加した。新規案件の獲得では金融業界向けの実績に対する信頼性が大きな強みとなっている。同社は金融向けの案件で数多くの実績を持っており、顧客からも高い評価と信頼を得ている。この実績の積み重ねが既存顧客の拡張案件や新たな顧客獲得にもつながっている。
同社では、シスコのコミュニケーション基盤に対応したWeb電話帳アプリケーション「NSTechno-phone Manager」を軸にしたCTIソリューションの提供に注力している。同社が提供するWeb電話帳は、多様なIP電話の機能をPC画面上に集約、クリック発信や着信時の発信者情報の表示、プレゼンス機能、チャット機能など豊富な機能を備えている。これに加え同社の強みとなっているのが、顧客からの要望に柔軟に対応できるSI力だ。Web電話帳の有用性に対する評価が上がる中で、他のシステムやクラウドサービスとの連携を求めるニーズは年々高まっている。同社はこれまでにもSFAとのシステム連携など、多くのカスタマイズ要望に応えてきた実績を持っている。
日本証券テクノロジーでは今後も強みであるSI力を軸にしたWeb電話帳ソリューションの提供に注力していく。同社ではWeb電話帳を個人情報のデータベースと捉え、様々なシステムに分散しがちな顧客や社員情報を集約し、システム間を連携させるハブと位置付けている。Web電話帳を中核にしたシステム連携を図ることで、様々な業務の中に隠れたコミュニケーション上の課題を解決できるという。今後もWeb電話帳の機能強化に加え、個々の顧客ニーズをかたちにできるSIサービスを武器にしたビジネス展開を図っていく方針である。
3位の富士通㈱のクライアントライセンス数は2.8万。富士通のWeb電話帳ソフト「FUJITSU Network ContactFind」(以下、ContactFind)は、シスコ社の「Cisco Unified Communications Manager」と連携し、電話、プレゼンス、インスタントメッセージ、Web会議など多彩なコミュニケーションツールと連携できる。コミュニケーションポータルとして、企業内のコミュニケーションの効率化を実現し、さらにはMicrosoft社のActive Directory(以下、AD)との連携によって、ADのデータ(アドレス情報や部門情報など)をWeb電話帳に簡単に取り込むことができ、組織変更に伴う電話帳データの登録やメンテナンス作業の効率化など、運用負担を大幅に削減できる。富士通ではコミュニケーションの効率化や活性化を図ることが、「働き方改革」を実現する上で必要不可欠な要素と考えている。富士通グループとして、働き方改革関連ビジネスを拡大していく上で、「ContactFind」は、付加価値提案の一つとなる商材だ。今後も「クラウド連絡帳サービス」など、クラウド対応サービスの提供と合わせて引き続き注力していく。
2018年末に135万ライセンス、2019年末で160万ライセンスに拡大へ
MM総研の分析では、2018年末にWeb電話帳市場は、クライアントライセンス数ベースで135万、2019年末時点で160万ライセンスに拡大するものと予測する。大企業を中心に、スマートデバイスの導入やコミュニケーション基盤の更改の動きは引き続き堅調であり、その機会にWeb電話帳の導入を検討する企業は今後も増えるだろう。導入利用している企業の満足度も高く、自社にとどまらず子会社やグループ会社までを含めた拡張への動きも広がっている。Web電話帳と他のシステムやクラウドサービスとの連携もさらに加速し、利便性を高めていく中で、Web電話帳は企業内のコミュニケーション基盤として必要不可欠なものとなるだろう。初期投資が比較的少なく、手軽に導入できるクラウドでの利用は大企業だけでなく、中堅中小市場にも広がりつつある。同市場における導入ペースは着実に上がっており、今後、Web電話帳市場の底上げに貢献するものと見られる。仕事の効率や生産性の向上、コミュニケーションの活性化は「働き方改革」を実現する上での重要な経営課題となっている。この課題解決につながる実効的なソリューションとしてのWeb電話帳の導入・活用の動きは引き続き拡大していくだろう。
※Web統合電話帳アプリケーションの定義
・IP-PBX/SIPサーバー等と連携し、電話番号、メールアドレスなどの電話帳を、固定電話やモバイル端末(PC、スマートフォン、タブレット端末など)などから、社内・社外を問わず、利用できるようにするWebベースの電話帳アプリケーションであること。
・電話帳の画面上で、電話、メール、プレゼンス確認、インスタントメッセージ、Web会議などのコミュニケーションツールと連携できる機能を持っていること
・Web上での電話帳データの共有管理・一括管理に機能が限定されたソフトウェアは含まない。
・PBX等の一機能として提供されているものは除く
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。
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