2016年度の国内クラウド市場は4割増の1.4兆円 

ーーMM総研調査 詳細レポートを1月発売

2017年12月27日

■ 2016年度の国内クラウド市場規模は前年度比38.5%増の1兆4,003億円、21年度には3.5兆円と予測

■ クラウドのセキュリティに対する不安イメージがさらに低下

■ FaaS/PaaS/IaaS領域ではAWSが利用率でトップを獲得

■ クラウドサービスを活用したAIの導入目的はコスト削減

 MM総研(東京都港区、所長・中島 洋)は12月27日、国内クラウドサービス市場規模の2016年度(2016年4月~2017年3月)の実績と2021年度までの予測、および需要動向に関する調査結果を発表した。
 この調査はクラウドサービスを導入済または検討中の法人計1,360社を対象に2017年12月にMM総研が実施したアンケートをもとに、取りまとめた。2016年度の国内クラウドサービス市場は前年度比38.5%増の1兆4,003億円となった。
 クラウドサービスに対しユーザーが持つセキュリティ面での不安はさらに低下。クラウドサービス事業者のセキュリティ対応力の向上に加え、クラウドサービス利用者の増加に伴い、クラウドサービスの正しい理解が進んだ。それにより、「自前でセキュリティ対策をするより、クラウド事業者に任せた方が安心」というイメージに変わりつつある。
 パブリッククラウド事業者間の競争は2016年と同様に、2017年12月調査時点の結果で利用率トップがAmazon Web Services、2位がMicrosoft Azureと続く結果になった。また、グローバルベンダーのプライベートクラウド領域への進出は、国内ベンダーにとって大きな脅威となり、生き残りをかけたイノベーションが必要な状況になってきている。

国内クラウド市場は4割増の1.4兆円(2016年度)

 今回の調査において、2016年度におけるクラウドサービス市場全体の規模は対前年度比38.5%増の1兆4,003億円となり市場が大きく成長した。クラウドの持つコストメリットやスピードメリットを背景に、社内の既存システムのクラウド移行が加速する結果、2021年度までの年平均成長率は20.6%となる。2018年度は2兆1,289億円と2兆円を超え、2020年度には3兆2,063億円と3兆円を超える。2021年度には2016年度比2.6倍の3兆5,713億円に成長すると予測する。
 パブリッククラウド(SaaS/FaaS ※/PaaS/IaaS)は2016年度3,883億円で前年度比40.9%増となった。パブリッククラウドは2021年度までの年平均は22.1%で、2021年度には2016年度比2.7倍の1兆556億円に達すると予測する。
 プライベートクラウド(デディケイテッド/オンプレミス/コミュニティ)は2016年度1兆121億円で前年度比37.7%増と1兆円を超えた。2021年度までの年平均成長率は20.0%で推移し、デディケイテッドプライベートクラウドの拡大により、2021年度には2016年度比2.5倍の2兆5,157億円になると予測する。
 また、特定の機能や関数を「REST API」や「HTTP」、「モバイルアプリ」などで呼び出し、その実行環境をサーバーレスで利用できるサービス「FaaS(ファース、Function as a Service)」の導入が2016年度から増加。2016年度の実績は76億円となった。

※FaaS(パブリッククラウド)・・・「Function as a Service」の略称。特定の機能や関数を「REST API」や「HTTP」、「モバイルアプリ」などで呼び出し、その実行環境をインターネット等を経由して利用できるサービス。サーバーレスで処理を実行でき、利用した機能分だけ料金計算されるのが特徴。

クラウドのセキュリティに対する不安イメージがさらに低下

 パブリッククラウド・デディケイテッドクラウドに対するユーザーのイメージでは、「情報漏えいなどのセキュリティが心配」と回答したユーザーの比率が2016年12月の調査時から大幅に減少した。クラウドサービス事業者のセキュリティ対応力の向上に加え、クラウドサービス利用者の増加に伴い、クラウドサービスの正しい理解が進んだ。それにより、「自前でセキュリティ対策をするより、クラウド事業者に任せた方が安心」というイメージに変わりつつある。セキュリティ面での不安はクラウド利用の障壁として挙げられてきたが、不安なイメージの低下によって信頼が高まり、クラウド利用者の更なる増加が期待される結果となった。

FaaS/PaaS/IaaS領域ではAWSの利用率がトップを獲得

 パブリッククラウドのFaaSを基盤として活用している法人(n=116)が利用するサービスでは「AWS Lambda(Amazon)」が35.3%と最も多く、次いで、「Google Cloud Functions」が28.4%、「Azure Functions(Microsoft)」が27.6%となった。最近では、ビジネス・スピードの加速に伴い、アプリケーション開発・変更に迅速に対応することが求められており、アジャイル開発が進んできている。そのため、開発スピードだけではなく、変更への柔軟性を担保できるサービスとして期待が高まっている。
 次に、パブリッククラウドのPaaSを基盤として活用している法人(n=210)が利用するサービスでは「Amazon Web Services」が41.4%と最も多く、次いで「Microsoft Azure」が29.0%、「Google Cloud Platform (App Engine)」が17.1%と続く結果となった。PaaSの利用を検討する企業(n=247)においては「Microsoft Azure」が24.6%と最も多く選ばれた。
パブリッククラウドのIaaSを基盤として活用している法人(n=262)が利用するサービスでは「Amazon Web Services」が35.5%、次いで、「Microsoft Azure」が24.8%、「FUJITSU Cloud Services (富士通)」が12.6%となり、グローバルベンダー三強と言われる中で富士通が3位と健闘を見せた。
 一方、AWSを追いかける「Microsoft Azure(PaaS/IaaS領域)」はユーザーの積極的な取り込みにより利用率が高まっており、2016年12月の調査時より、3ポイント差を縮めた。上位2社における顧客獲得競争は一層激化することが予想される。

クラウドサービスを活用したAIの導入目的はコスト削減

 人工知能(AI)の導入を目的にクラウドサービスを利用・検討するユーザー(n=100)は、「業務効率化」が42.0%と最も多く、次いで、「リスク管理」が34.0%、「製品・事業としての展開」、「開発力の強化」、「新しい事業付加価値創出またはビジネス機会発見」が31.0%と続く結果となった。AI導入の目的は「コスト削減」と「売上拡大」の2点に分けられる。上位2つの「業務効率化」「リスク管理」と3位の「開発力強化」はコスト削減、同率3位の「製品・事業としての展開」と「新しい事業付加価値創出またはビジネス機会発見」は売上拡大を目的としており、国内のクラウドサービス利用・検討ユーザーのAI導入目的は、コスト削減に期待を寄せていることが分かった。国内の産業では金融業や情報通信業、製造業のAI導入率が高くなっており、いずれも業務や作業の効率化、自動化など、コスト削減のために導入するケースが多い。


 この調査では、クラウド市場をパブリッククラウド(SaaS/FaaS/PaaS/IaaS)とプライベートクラウド(デディケイテッド、オンプレミスおよびコミュニティ)に分類した。事前調査として、国内法人ユーザーを対象にWebアンケートを実施し、18,414社にアンケート回答を求め、その中から実際にクラウドサービスを導入済、あるいは検討している1,360社を対象に今回の調査を実施した。

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<調査概要>
1.調査対象  :国内法人ユーザー※
2.回答件数  :予備調査(n=18,414)、本調査(n=1,360)
  ※全業種を対象に情報システムやネットワークの管理・運用担当者または、決裁や選定に関与する立場
  ※ソフトウェアやシステムの開発業務担当者
  ※本調査はクラウドサービスの利用・検討者を対象
3.調査方法  :Webアンケート
4.調査期間 :2017年12月8日~12月17日

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