Web統合電話帳アプリケーション市場の概況 (2016年末)

2017年04月06日

■ 2016年12月末の市場規模は、前年比29%増の100.6万ライセンスに拡大

■ 事業者シェアはPhone Appliがクライアントライセンス数シェアで79%を獲得

■ 「働き方改革」の追い風とクラウド利用の浸透で2018年末は170万規模に拡大へ

 MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は、主要なソリューション事業者へのヒアリング調査等をもとに、企業内にある様々なコミュニケーションツールの統合・連携を実現するWeb統合電話帳アプリケーション(※)の市場規模及び事業者シェアをまとめた。調査結果によると、2016年12月末時点のWeb統合電話帳アプリケーション(以下、Web電話帳)のクライアントライセンス数は15年12月末時点の78.2万から29%増となる100.6万に拡大、初めて100万の大台に達した。

 大企業を中心に、「働き方改革」への意識が急速に高まるなかで、仕事の効率や生産性の向上、コミュニケーションの活性化を図ろうとする動きが市場拡大をけん引している。特に、既存のコミュニケーション基盤の更新や事業所の移転などの機会に新たなIT武装としてWeb電話帳を導入しようとする動きが広がっている。チャットや名刺管理サービスとの連携など機能も多様化し、利便性も年々高まっている点も魅力だ。通信系やIT系の販売店も、人手不足から生産性の向上が急務となっている中堅中小企業のニーズに応える商材の一つとしてWeb電話帳の拡販を強化。初期投資が比較的少なく、手軽に導入できるクラウドサービスの提案に注力するなど、市場の裾野は大企業だけでなく、中堅中小企業にも広がりつつある。こうした状況からMM総研では、2017年末のクライアントライセンス数は135万ライセンス、2018年末には170万ライセンスに拡大するものと予想する。

【データ1】Web統合電話帳アプリケーションの市場規模及び予測 (※2016年12月末)

※2017年12月末以降はMM総研予測値

 

【データ2】Web統合電話帳アプリケーションの事業者シェア(※2016年12月末)

Phone Appliが市場シェア(クライアントライセンス数)79%を獲得

 Web統合電話帳アプリケーション市場でトップシェアに立つのが㈱Phone Appli(以下、フォンアプリ社)である。同社が提供するWeb電話帳アプリケーション、「Phone Appli Collaboration Directory」(以下、PACD)などの16年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比35%増となる79.1万に拡大、市場シェアで78.6%を獲得した。大企業を中心に導入が進んでおり、ITサービス系企業から製造、商社、金融、流通など顧客層は幅広い。同社の強みはシスコシステムズ(以下、シスコ社)のユニファイドコミュニケーション基盤「Cisco Unified Communications Manager」(以下、CUCM)との接続技術の高さであり、これまでにも数多くの実績を上げている。また、充実した販売チャネルも同社の強みであり、シスコ社のコミュニケーション製品を取り扱う大手ソリューションベンダーなどに加え、大手通信事業者や中堅中小市場を得意とするIT系の販売店などが販売パートナーに名を連ねている。

 フォンアプリでは「働き方改革」を実現するコミュニケーションポータルとしてWeb電話帳を位置付けている。コミュニケーションを取りたい相手の状況をWeb電話帳で確認し、その状況に応じて最適な連絡方法を選ぶことができ、コミュニケーションの効率化を図ることができる。直感的で使いやすいユーザーインターフェースや、社員の専門性や組織情報を効率的に管理し、必要な時に最適な社員を簡単に検索できる機能などが充実。名刺情報をセキュアな状態にしてサーバーへ送信・登録し、社員の共有データとしてすぐに活用できる名刺管理機能も、その使い易さやリアルタイム性の高さが導入企業から高い評価を得ているという。

 今後も幅広い顧客ニーズに対応していくためにシスコ社以外のコミュニケーション製品との連携、PACDのクラウド版である「PA CLOUD Enterprise」などの販促も引き続き強化する。また、様々なセンサーから取得した社員の状態をWeb電話帳に表示し把握できるソリューションである「コラボレーティブIoT」を発表するなど、IoTを活用した新しいコミュニケーションづくりを支援していく。

 2位の日本証券テクノロジー㈱は16年12月末時点で、クライアントライセンス数が16.9万に拡大、着実に実績を伸ばしている。2016年も大口案件を含む新規顧客の増加に加え、既存顧客の拡張案件などを獲得し、実績を伸ばした。同社は金融系向けの案件で数多くの実績を持っており、顧客からも高い信頼を得ている。この実績の積み重ねが既存顧客の拡張案件や金融系以外の新たな顧客獲得につながっている。

 同社では、シスコ社のコミュニケーション基盤製品「Cisco Unified Communications Manager」対応のWeb電話帳アプリケーション「NSTechno-phone Manager」を軸にしたCTIソリューションの提供に注力している。近年では多様な顧客ニーズに応えるため、シスコ社製品以外のコミュニケーション製品にも対応したWeb電話帳も提供している。同社が提供するWeb電話帳は、「在席管理・話中確認機能」や「着信監視・表示機能」など多彩な機能を備えている。顧客からのニーズが高かったチャット対応機能の追加など継続的な機能拡充を進めている。近年ではCRM(顧客管理)やSFA(販売管理)などとのシステム連携を求める声が増えており、こうした顧客ニーズへの対応も進めている。

 日本証券テクノロジーでは単なる売切り型のビジネスではなく、強みであるSI力を軸にした事業展開を今後も進めていく。Web電話帳の導入に当たっては、カスタマイズの要望も多く、案件によっては要件定義の段階から深く入り込むこともある。「働き方改革」ひとつとっても、業種業態、企業規模、社風などの違いよって、その中身も変わってくる。顧客企業にとって最適な「働き方改革」を支える製品に加え、顧客ニーズをかたちにできるSIサービスを武器にした同社のビジネス機会は今後も広がっていくことが予想される。

 3位の富士通㈱のクライアントライセンス数は2.6万。富士通のWeb電話帳ソフト「FUJITSU Network ContactFind」(以下、ContactFind)は、シスコ社の「Cisco Unified Communications Manager」と連携し、電話、プレゼンス、インスタントメッセージ、Web会議など多彩なコミュニケーションツールと連携できる。コミュニケーションポータルとして、企業内のコミュニケーションの効率化を実現し、さらにはMicrosoft社のActive Directory(以下、AD)との連携によって、ADのデータ(アドレス情報や部門情報など)をWeb電話帳に簡単に取り込むことができ、組織変更に伴う電話帳データの登録やメンテナンス作業の効率化など、運用負担を大幅に削減できる。富士通では「働き方改革」の実現をめざし、コミュニケーション基盤の刷新・強化を進めている企業に対する支援を強化している。「ContactFind」もその付加価値提案の一つとなりうるだろう。

 

2017年末には135万ライセンス、2018年末で170万ライセンスに拡大へ

 MM総研の分析では、2017年末にWeb電話帳市場は、クライアントライセンス数ベースで135万、2017年末時点で170万ライセンスに拡大するものと予測する。大企業を中心に、スマートデバイスの導入やコミュニケーション基盤の更改、オフィスの移転や拠点拡大などの際に、Web電話帳の導入を検討する企業が着実に増えている。すでに導入している企業の利用満足度も高く、自社にとどまらず子会社やグループ会社までを含めた拡張に動くケースもある。コミュニケーションポータルとして、チャットや名刺管理などの周辺サービスとも連携し、利便性を高めていく中で、企業のコミュニケーション基盤としての存在感を高めている。初期投資が比較的少なく、手軽に導入できるクラウドでの利用も大企業だけでなく、中堅中小市場にも広がりつつある。

 政府主導による長時間労働の是正などをめざした動きが加速する中で、民間レベルでも「働き方改革」が大きな経営課題として認識されつつある。仕事の効率や生産性の向上、コミュニケーションの活性化など従来からある経営課題への取り組みが、「働き方改革」の実現に向けて一層加速されることが予想される中で、Web電話帳を導入・活用しようとする動きもさらに広がっていくだろう。

※Web統合電話帳アプリケーションの定義

・IP-PBX/SIPサーバー等と連携し、電話番号、メールアドレスなどの電話帳を、固定電話やモバイル端末(PC、スマートフォン、タブレット端末など)などから、社内・社外を問わず、利用できるようにするWebベースの電話帳アプリケーションであること。
・電話帳の画面上で、電話、メール、プレゼンス確認、インスタントメッセージ、Web会議などのコミュニケーションツールと連携できる機能を持っていること
・Web上での電話帳データの共有管理・一括管理に機能が限定されたソフトウェアは含まない。
・PBX等の一機能として提供されているものは除く


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