クラウド会計ソフトの利用状況調査(16年12月末)

2017年01月18日

■ 個人事業主の会計ソフト利用率は32.7%、その内、クラウド会計ソフトは9.7%

■ クラウド会計ソフトの認知度は65.7%に上昇、帳簿や申告書作成の負担軽減等を評価

■ クラウド会計ソフトの事業者シェアでは弥生が52.8%、freeeが22.3%

 MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は、個人事業主(1万6,453事業者)を対象にWebアンケート調査を実施し、2016年12月末時点のクラウド会計ソフトの利用状況をまとめた。本調査では、平成28年(2016年)分の確定申告を予定している個人事業主を対象とした。調査結果から、会計ソフトを利用している個人事業主は32.7%で、そのうち、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフト(※1)の利用率は9.7%となった(図表1)。利用しているクラウド会計ソフトの事業者別シェアでは、「弥生」が52.8%、次いで「freee」が22.3%、「マネーフォワード」が17.7%となり、3社で92.8%を占めた(図表3)。

 クラウド会計ソフトは、IT技術を使った金融サービスとして成長が期待される「FinTech(フィンテック)」を代表するサービスの一つ。複雑な勘定科目の自動判別機能など日々の帳簿付けから確定申告書の作成における負担軽減などクラウドならではの利便性の高さが評価され、認知が広がっている。本調査結果でも、個人事業主の認知度は65.7%に拡大。確定申告予定者を対象に1年前に行った15年12月調査の57.4%から8.3ポイント増となった(図表2)。

 クラウド会計ソフトを認知しながらも、現在利用していない個人事業主に今後の利用意向を確認したところ、「今後利用したい」(6.5%)と「どちらかといえば今後利用したい」(27.7%)を合わせたクラウド会計ソフトの利用意向率は34.2%(図表4)となった。

※1. クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用できるソフトのこと。パソコンに会計ソフトをインストールしたもの、会計データのみをインターネット上に保管するソフトは含まない。

◆クラウド会計ソフトの認知度は65.7%に上昇

 多くの個人事業主は1月~12月の1年間の「所得」を確定させ、翌年2月から3月にかけて税務署に「申告」する、いわゆる「確定申告」を行っている。1月、2月は会計ソフトやクラウド会計ソフトを導入・変更する1年で最大のタイミングとなる。MM総研では2015年12月に確定申告を予定している個人事業主を対象に第1回目の調査を実施。その後、2016年3月には確定申告を実際に行った個人事業主を対象に第2回目の調査を行い、確定申告の前後で利用ソフトやクラウド会計ソフトの認知度などを調査し比較した。今回の第3回目となる2016年12月調査では、2017年2月から3月にかけて確定申告を行う予定の個人事業主 (1万6,453事業者)を対象とした。

 上記の条件に当てはまる個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施したところ、「会計ソフトを利用している」との回答は32.7%(5,373事業者)となった。この会計ソフト利用者に、利用している会計ソフトを確認したところ、パソコンにインストールして利用する従来型の会計ソフト(※会計データのみをクラウド上で保管するものを含む)が80.3%を占めた。クラウド会計ソフトを利用している個人事業主は9.7%となり、2015年12月調査時(1年前の調査)よりも1.6ポイント上昇した(図表1)。

 今回の調査でも、クラウド会計ソフトの認知度を確認したところ、「知っている」との回答は全体(1万6,453事業者)の65.7%に達し、2015年12月調査時(1年前の調査)よりも8.3ポイント上昇した(図表2)。クラウド上にデータを保管し、ネット環境さえあれば、どこでも利用でき、複雑な勘定科目を自動で判別、仕訳してくれる機能などへの認知が進んでいる。着実にクラウド会計ソフトの浸透は進んではいるものの、現状では会計ソフト利用者の1割程度に止まっており、まだまだ市場の開拓余地は大きいともいえるだろう。

  一方、「会計ソフトを利用していない」と回答した個人事業主は53.6%(8,820事業者)となった(図表1)。この非利用者に会計ソフトの代わりに利用しているものを確認したところ、「市販の帳簿やノートなどへの手書き」が40.7%、「エクセルなどの表計算ソフトに入力」が38.8%で多く、次いで「税理士や会計事務所への外部委託」が12.9%となった。

◆「弥生」、「マネーフォワード」はシェアを拡大、「freee」はシェアを縮小

 クラウド会計ソフト利用者に、実際に利用しているクラウド会計ソフトを回答してもらったところ、事業者別では「弥生」が52.8%で最も多く、次いで「freee」が22.3%、「マネーフォワード」が17.7%、「全国商工会連合会」が3.3%となった(図表3)。

※対象ソフト
・弥生・・・「やよいの青色申告 オンライン」、「やよいの白色申告 オンライン」
・freee・・・「freee」
・マネーフォワード・・・「MFクラウド確定申告」
・全国商工会連合会・・・「ネットde記帳」

 トップシェアとなった弥生は2015年12月調査時(1年前の調査)の50.5%からシェアを2.3ポイント上げている。シェア50%を超えてもなお個人事業主からの支持を伸ばし、他の事業者に大きな差をつけている。個人事業主におけるクラウド会計ソフト市場は「弥生」と、「freee」、「マネーフォワード」などのベンチャー系事業者を中心としたその他事業者との争いになっている。さらに言えば、市場は「弥生」、「freee」、「マネーフォワード」の上位3社への集約が進んでいる。2015年12月調査時(1年前の調査)の上位3社の合計シェアは85.2%であったが、2016年12月調査では92.8%に拡大。特に、3位のマネーフォワードは9.8%から7.9ポイント増となる17.7%とシェアを上げている。一方で「freee」は24.9%から2.6ポイント減となる22.3%と、上位3社の中で、唯一シェアを落としている。

◆起業を考えている個人事業主がクラウド会計ソフトを積極的に導入

 今後の個人事業主におけるクラウド会計ソフトの導入意向を分析するにあたり、クラウド会計ソフトを認知しながらも、現在利用していない個人事業主(9,481事業者)に今後の利用意向を確認した。「今後利用したい」(6.5%)と「どちらかといえば今後利用したい」(27.7%)を合わせたクラウド会計ソフトの利用予備軍は34.2%となった(図表4・5)。                                                                                                                                                                                                                                  この利用予備軍を事業継続年数で分析したところ、2年未満が51.4%、2年以上5年未満が41.4%、5年以上20年未満が32.1%、20年以上が31.6%と、事業継続年数が若いほど利用意向が高い結果となり(図表5)、過去2回の調査と同様の傾向となった。起業や独立をめざす比較的事業継続年数の若い個人事業主を中心に、今後もクラウド会計ソフトの導入が進んでいくものと見られる。

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■調査概要 

1. 調査対象:平成28年(2016年)分の確定申告を予定している個人事業主
    ※申告期間:2017年2月16日(木)から3月15日(水)
2.回答件数:1万6,453事業者
3.調査方法:Webアンケート
4.調査期間:2016年12月12日~21日

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