FTTH市場はモバイルとの相乗効果に期待
―ブロードバンド回線事業者の加入件数調査 (11年9月末時点)―
2011年12月01日
■ FTTHは急増するスマートフォンのデータオフロード需要の取り込みへ
■ 二段階定額制や継続割引プランなど新サービスの導入が進む
■ ISPではYahoo! BBのFTTHが急速にシェアを拡大
FTTH加入件数 2,143万件 (11年9月末時点) 115万件の増加 (11年3月末比)
ADSL加入件数 744.5万件 (11年9月末時点) 77万件の減少 (11年3月末比)
MM総研(東京都港区、所長・中島 洋)は11月29日、11年9月末時点でのブロードバンド回線事業者の加入件数を調査し、結果をまとめた。
FTTH(光接続サービス)の加入件数は2,143万件となり、11年3月末より115万件の増加となった。地デジ移行に伴う需要が一部であったものの、前年度に比べると上期のFTTHの純増はやや鈍った。FTTH事業者間の競争は激化しており、各事業者は解約抑制に向けた取り組みや新規需要の掘り起こしに動いている。ADSLは744万5,000件で11年3月末より77万件減少した。
■ FTTH市場、KDDIが堅調にシェアを拡大
KDDIグループは、11年9月末207万件で、3月末から17万件の増加となった。11年度上期は戸建て向けサービスのエリアを13都道県増やし、25都道県で利用が可能となった。12年春までに戸建て提供エリアの世帯カバー率約70%をめざす。KDDIグループで12年3月末までにFTTH契約数を240万件、年間純増数で約50万件を目標としており、引き続き価格訴求と新規エリア拡大により獲得を増やしていく。
激戦区の関西地域を中心に展開するケイ・オプティコムは、順調に契約数を伸ばし11年9月末で126万件となった。6月からタブレット端末を利用した宅内サービス「eoスマートリンク」のトライアルを開始し、今年度の事業化をめざす。8月に50万件を超えたeo光テレビなどのクワトロサービスや12年2月から開始する長期継続割引プランの導入により、11年度末に契約数134万件をめざす。
迎え撃つNTTは、11年9月末の東西合計の加入件数が1,596万件となりシェアは合わせて74.5%となった。NTT東日本が6月に二段階定額制プラン「フレッツ 光ライト」を開始。9月末10.6万件とまずまずの立ち上がりだが、光回線ユーザーの裾野を広げインターネット未利用者やノンPC層を取り込む。NTT東日本はフレッツ光が9月に900万件を突破。「フレッツ光メンバーズクラブ」は8月に200万会員を突破した。NTT西日本は料金割引サービス「光ぐっと割引」のエリア拡大の実施や、12年1月から開始する「フレッツ光 ライト」の提供などにより年間純増計画85万件を達成させる。NTT東西合わせ11年度末に契約数1,716万件を目標としている。
UCOMは、11年9月末50万件と3月末からやや純減だが、7月のコーポレートロゴやスローガンの刷新を手始めに個人向け・法人向け光ファイバー固定通信事業のブランド名を「UCOM光」に統一。ブランド力向上によりユーザーへの訴求力を一層高める。9月には会員向け優待サービス「UCOMクラブオフ」を開始し、継続利用を促す施策を積極的に展開する。
回線事業者は、スマートフォン市場の急激な拡大で増え続けるモバイルネットワーク・トラフィックのオフロードにも対応し、宅内・宅外のWi-Fi環境の提案も積極的に行う。モバイル端末の快適な利用環境を整えることで固定回線の価値向上につなげ、今後の利用者増加に大きな期待を寄せる。
■ ADSL市場、ソフトバンクBBとイー・アクセスが奮闘
ADSL回線事業者で首位は、ソフトバンクBBのYahoo! BB ADSL。11年9月末のシェアは、ソフトバンクBBが38.6%、2位のイー・アクセスが23.4%となった。各社とも大幅な純減傾向で、厳しい環境にさらされている。
■ Yahoo! BBが一気に5位に浮上
ISP事業者のFTTHシェアでは、OCNが引き続き2位以下に大きく差をつけているものの、11年3月末からシェアをわずかに落とした。BIGLOBE は2位の座を守った。
3位のぷららは9月末に会員数165万件となった「ひかりTV」との同時申し込みキャンペーンなどで連携を強化し、TVサービスとの相乗効果を狙う。
So-netはWiMAXサービスへの注力など、モバイルサービスによるオプションの幅も広げる。アクトビラ普及拡大に伴う接続ニーズを取り込むことで堅調に獲得を増やしていく。
ソフトバンクBBは、09年2月から開始した「Yahoo! BB 光 with フレッツ」が3月末からシェアを1.3ポイント伸ばすなど急激な増加を見せている。シェア順位では3月末7位から一気に5位に浮上した。引き続き会員獲得に注力しシェア拡大を狙う。
各事業者は、高速モバイルサービス(3G、WiMAX)へ本腰を入れ始めており、固定サービスとモバイルサービスの両方を提供することで利用者の利便性を一層高める。契約数を順調に伸ばし拡大を掲げる事業者と、新規獲得コストのコントロールを行いながら継続利用に軸足を置く事業者に二分化する傾向が鮮明になりつつある。
■ ブロードバンドにおけるFTTHは、12年度に7割を超える
11年9月末時点のブロードバンド契約者数は3,361万件となり、回線種別ではADSLが745万件、FTTHが2,143万件、CATVが473万件となった。ブロードバンド契約者数を回線種別比率でみると、ADSLが22.2%、FTTHが63.8%、CATVが14.1%となった。
FTTH市場は12年3月末に2,260万件、13年3月末には2,475万件まで拡大し、ブロードバンドに占める割合は70.1%になると予想される。モバイルブロードバンドのデータオフロード需要やNTT東西によるPSTNのIP網への移行計画を受け、FTTHへのマイグレーションが一段と進み16年3月末には3,000万件を超える見通し。
ADSLの減少やFTTHの伸び率鈍化はあるものの、16年3月末にブロードバンドサービス全体で3,854万件と契約数は今後も拡大するものと予想される。
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