Web統合電話帳アプリケーション市場の概況 (2015年末)

 

2016年04月06日

■ 2015年12月末の市場規模は、前年比69%増の78.2万ライセンスに拡大
■ 事業者シェアはPhone Appliがクライアントライセンス数シェアで75%を獲得
■ 大企業の導入が加速、クラウド提供の浸透で2016年末は120万規模に拡大へ

 MM総研(東京都・港区、所長・中島 洋)は、主要なソリューション事業者へのヒアリング調査等をもとに、企業内にある様々なコミュニケーションツールの統合・連携を実現するWeb統合電話帳アプリケーション(※)の市場規模及び事業者シェアをまとめた。調査結果によると、2015年12月末時点のWeb統合電話帳アプリケーション(以下、Web電話帳)のクライアントライセンス数は14年12月末時点の46.2万から69 %増となる78.2万に拡大した。

 大企業を中心に、コミュニケーションの効率化による生産性の向上、クラウドとスマートデバイスを活用したワークスタイル変革への動きが引き続き市場拡大をけん引している。チャットや名刺管理サービスとの連携など機能も多様化し、利便性も年々高まっている。PBXの販売を行ってきた通信機ディーラーだけでなく、IT系の販売店なども顧客のワークスタイル変革に応える商材の一つとして積極的に拡販を図りつつある。Web電話帳のサービス事業者も、初期投資が比較的少なく、手軽に導入できるクラウドサービスでの提供にも注力するなど、市場の裾野は大企業だけでなく、中堅中小企業にも広がりつつある。こうした状況からMM総研では、2016年末のクライアントライセンス数は120万ライセンス、2017年末には180万ライセンスに拡大するものと予想する。

【データ1】Web統合電話帳アプリケーションの市場規模及び予測(※2015年12月末)

【データ2】Web統合電話帳アプリケーションの事業者シェア(※2015年12月末)

◆Phone Appliが市場シェア(クライアントライセンス数)75%を獲得

 Web統合電話帳アプリケーション市場でトップシェアに立つのが㈱Phone Appli(以下、フォンアプリ社)である。同社が提供するWeb電話帳アプリケーション、「Phone Appli Collaboration Directory」(以下、PACD)の15年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比69%増となる58.8万に拡大、市場シェアで75.2%を獲得している。大手企業を中心に導入が進んでおり、ITサービス系企業から製造、商社、金融、流通など顧客層は幅広い。同社の強みはシスコシステムズ(以下、シスコ社)のユニファイドコミュニケーション基盤「Cisco Unified Communications Manager」(以下、CUCM)との接続技術の高さであり、これまでにも数多くの実績を上げている。

 同社のPACDを導入することで、コミュニケーションを取りたい相手の状況を確認した上で、その状況に応じて最適な連絡方法を選ぶことができ、コミュニケーションの効率化を図ることができる。直感的で使いやすいユーザーインターフェースや、社員の専門性や組織情報を効率的に管理し、必要な時に最適な社員を簡単に検索できる機能などが充実。名刺情報をセキュアな状態にしてサーバーへ送信・登録し、社員の共有データとしてすぐに活用できる名刺管理機能も、その使い易さやリアルタイム性の高さが導入企業から高い評価を得ているという。

 同社では販売チャネルの拡充に継続的に取り組んでいる。実績拡大の背景には、シスコ社のコミュニケーション製品を取り扱う大手ソリューションベンダーなどに加え、大手通信事業者や中堅中小市場を得意とするIT系の販売店などが販売パートナーに加わった点が大きい。今後も販売チャネルの拡充を進めるとともに、幅広い顧客ニーズに対応していくためにシスコ社以外のコミュニケーション製品との連携や、PACDのクラウド版である「PAクラウド」についても販促を強化していく。

 2位の日本証券テクノロジー㈱は15年12月末時点で、クライアントライセンス数は15.2万、前年比90%増とほぼ倍増した。既存顧客の大口案件を複数獲得したのに加え、幅広い業種で新規顧客を開拓したことが実績拡大につながった。同社は金融系向けの案件で多くの実績を持っており、顧客からも高い信頼を得ている。この実績の積み重ねが既存顧客の拡張案件や金融系以外の新たな顧客獲得につながっている。

 同社では、シスコ社のコミュニケーション基盤製品「Cisco Unified Communications Manager」対応のWeb電話帳アプリケーション「NSTechno-phone Manager」を軸にしたCTIソリューションの提供に注力している。近年では多様な顧客ニーズに応えるため、シスコ社製品だけでなく、NECの「UNIVERGE SV9500」や日立情報通信エンジニアリングの「NETTOWER CX-01」にも対応したWeb電話帳アプリケーションを提供し、Web電話帳をベースにした企業のワークスタイル変革を支援している。

 同社が提供するWeb電話帳は、「在席管理・話中確認機能」や「着信監視・表示機能」など多彩な機能を備えている。顧客からのニーズが高かったチャット対応機能の追加など継続的な機能拡充を進めており、今後も更なる利便性の向上とセキュリティの強化などに取り組んでいく。同社では、単なる売切り型のビジネスではなく、強みであるSIを軸とした事業展開を今後も進めていく方針だ。Web電話帳の導入に当たっては、SIの要望も多く、案件によっては要件定義の段階から深く入り込むこともあるという。2016年もモバイルの内線利用やワークスタイル変革などのニーズに高まりに応える製品とSIサービスの提供に注力していく。

 3位の富士通㈱は、クライアントライセンス数が2.4万と、前年比で9%増となった。富士通のWeb電話帳ソフト「FUJITSU Network ContactFind」(以下、ContactFind)は、シスコ社の「Cisco Unified Communications Manager」と連携し、電話、プレゼンス、インスタントメッセージ、Web会議など多彩なコミュニケーションツールと連携できる。コミュニケーションポータルとして、企業内のコミュニケーションの効率化を実現し、さらにはMicrosoft社のActive Directory(以下、AD)との連携によって、ADのデータ(アドレス情報や部門情報など)をWeb電話帳に簡単に取り込むことができ、組織変更に伴う電話帳データの登録やメンテナンス作業の効率化など、運用負担を大幅に削減できる。富士通ではワークスタイル変革をめざし、コミュニケーション基盤の刷新・強化を進めている企業に対する付加価値提案の一つとしてContactFindを積極的に提案していく。また、「クラウド連絡帳サービス」など、クラウド対応サービスの提供にも注力。セミナーや研修会で実際に利用した販売店からの評価も高く、今後の拡販に手ごたえを感じているという。

 今回、その他に含まれてはいるものの、今後確実に実績を伸ばす事業者と見られるのが、㈱日立情報通信エンジニアリング(商品名「IP-PBX『NETTOWER CX-01/MX-01』連携Web電話帳ソリューション」)だ。商品に対する認知度も広がり、取扱いパートナーによる案件獲得も増えているという。すでに導入済みの案件では今後の拡張も期待できるだけに、2016年も更なる実績拡大が見込まれる。

◆2016年末には120万ライセンスに到達、2017年末で180万ライセンスに拡大へ

 MM総研の分析では、2016年末にWeb統合電話帳アプリケーション市場(以下、Web電話帳)は、クライアントライセンス数ベースで120万に達し、2017年末時点で180万ライセンスに達するものと予測する。スマートデバイスの導入やコミュニケーション基盤の刷新を図る大企業を中心に、Web電話帳の導入企業が増加し、利用満足度も高いことから、自社にとどまらずグループ会社や子会社までを含めた拡張が加速している。中堅中小企業でも、オンプレミス型のシステム構築に比べ、初期投資が安いクラウドベースのWeb電話帳サービスが増加。導入の敷居も低くなり、これまでPBXを主要商材としていた通信系ディーラーや、IT系の販売店も中堅中小企業へのIP化提案において、Web電話帳を積極的に提案している。 

 Web電話帳はビジネスシーンでの利用が一般化し、名刺管理などの機能を取り込み、利便性を高めていく中で、企業のコミュニケーション基盤として必要不可欠なものになりつつある。今後の市場も導入が加速する大企業での利用が市場をけん引するだろう。これに加え、Web電話帳の認知度向上、販売チャネルの拡大、クラウドサービスによる提供が進む中で、市場の裾野は中堅中小市場にも確実に広がることが見込まれ、更なる市場の拡大を後押しするものと予想される。

※Web統合電話帳アプリケーションの定義
・IP-PBX/SIPサーバー等と連携し、電話番号、メールアドレスなどの電話帳を、固定電話やモバイル端末(PC、スマートフォン、タブレット端末など)などから、社内・社外を問わず、利用できるようにするWebベースの電話帳アプリケーションであること。
・電話帳の画面上で、電話、メール、プレゼンス確認、インスタントメッセージ、Web会議などの
コミュニケーションツールと連携できる機能を持っていること
・Web上での電話帳データの共有管理・一括管理に機能が限定されたソフトウェアは含まない。
・PBX等の一機能として提供されているものは除く


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