MM総研大賞2023 <スマートソリューション部門>メタバース分野 最優秀賞「αU(アルファユー)」
KDDI株式会社

2023年09月06日

誰もが使いやすいWeb3を目指す

KDDIは2023年3月7日、メタバース・Web3のサービス「αU(アルファユー)」を発表した。アバター同士の交流、360度自由視点音楽ライブ、バーチャルショッピング、非代替性トークン(NFT)など新世代に寄り添うサービス。グローバル展開に向けたアライアンス戦略や誰もが使いやすいWeb3構築といった将来性が評価され、スマートソリューション部門メタバース分野で最優秀賞を受賞した。

メタバースとデジタルツインの特徴を活かした設計

αUは2020年5月にKDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会の3者を主幹として始めた「バーチャル渋谷」での気づきが活かされている。バーチャル渋谷はコロナ禍に救済目的で始まった偶発的なものだったが、結果的に日本初のメタバースと言われ、様々なパートナーとプロジェクトに取り組んだ。そのなかで、実店舗の商業体験とメタバース上の人の賑わいは現段階では共存できないことに気付く。そこで考えたのが、商業体験とメタバースを切り離すこと。仮想空間内に現実空間の環境を再現するデジタルツイン技術を活用したECの「αU place」(今夏商用サービス開始予定)だ。メタバースに実店舗を再現すると、商品点数が多いと1万点もあり、それらを3Dモデル化すると多額の費用がかかる。メタバース内店舗で購入できる商品は限定Tシャツのみで、他の商品はECサイトへ誘導、というのが今のメタバースで商業体験を再現する構造的限界だ。αU placeでは、スマートフォンで撮った3D写真をつなぎ合わせ、デジタルツイン空間を作る。すべての商品を3Dモデル化するのではなく、店全体の空間を3D写真で再現することで費用を抑えられる点が好評を得ている。

またαUでは、現在メタバースとデジタルツインは分かれている。デフォルメされて拡張された世界をメタバースとすると、よりリアルに忠実に再現したものをデジタルツインと呼んでいる。バーチャル渋谷はメタバースで、街は渋谷そのものである必要はなく、みんなに遊んで改造してもらえばいい。それに対して店舗などリアルと連動するものはデジタルツインがいい。勝手に改造してしまうとリアルの世界と乖離してしまうからだ。大人数がいる賑わいやコミュニケーションを活発にするために求められるメタバースの要件と、特定の空間を再現するための忠実性が求められるデジタルツインの要件は全く異なる。人が集うメタバースを中心に、よりリアルと連携したいシーンである観光や買い物などのデジタルツインを外にたくさん作り上げた、その世界全体が「αU」だ。最終的にはたくさん作ったデジタルツインとメタバースを接続し、それぞれをシームレスに行き来できるようなプラットフォームとする構想を掲げている。

誰もが使いやすいWeb3を提示

αUのひとつである「αU live」(今夏商用サービス開始予定)はバーチャルヒューマンも登場する。アバターよりも限りなくリアルヒューマンに近いようなアーティストは、現在のマシンスペックではメタバースで表現できない。そこでKDDIはGoogle Cloud と協働し、同社のストリーミングサービス「Immersive Stream for XR」を利用したαU liveを開始する。通常の第5世代移動通信システム(5G)回線レベルで、バーチャルヒューマンを360度自由視点でもリアルで質の高い体験を提供する。KDDIは複数社と業務提携し、バーチャルアーティストの開発も行う。360度自由視点音楽ライブという新しいカテゴリーの標準を作るため、実際にマネタイズを示していく。

NFTアイテムや暗号通貨を管理する「αU wallet」もラインアップ。αUはメタバースに実社会と同様の経済圏、経済性を与え、新しいコミュニティの場にアップデートしたいという思いから、ブロックチェーン技術に対応している。デジタルコンテンツにNFTを付与することもでき、メタバースイベントでファンが購入するTシャツなどのアイテムもNFTアイテムとして売ることができる。こうしたNFTアイテムや暗号通貨を管理するのがαU walletだ。現在クリプトウォレットのスタンダードであるMetamaskなどは、暗号鍵を12個の英単語のシークレットフレーズで生成する。暗号鍵はユーザー自身で管理する必要があり、紛失しても再発行できない。そこでαU walletはID、パスワードを紛失しても復旧可能な「バックアップ機能」を備えた。リテラシーの高い人だけでなく、誰もが簡単に利用できることをコンセプトにしている。

KDDIはαUを基軸に、音楽や買い物などの様々なメタバース、デジタルツインを自由に行き来できる構造にする「オープンメタバース構想」を掲げている。別のメタバース、デジタルツインと相互接続することで、ひとつのID、同じアバターで様々なメタバースを自由に行き来し、あるメタバース内で購入したアイテムを別のメタバースでもそのまま使えるようになる。こうしたオープンメタバースの輪を徐々に広げていきたいと考えている。