MM総研大賞2023 <スマートソリューション部門>DX支援ソリューション分野 最優秀賞経理DXを実現するAIソリューション「Remota / Robota」
ファーストアカウンティング株式会社

2023年09月01日

経理業務を自動化する

AI「Remota」と「Robota」

請求書・領収書を読み取り、仕訳、照合するAI ソリューション。統合基幹業務システム(ERP)やロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)との連携で経理デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する。2023年から本格始動のインボイス制度・電子帳簿保存法改正への対応に向け、話題性が高く評価された。

経理に特化したAIで国内シェア1位に

2016年に創業したファーストアカウンティング(東京都港区)は、経理業務に特化したAIソリューションを提供する。業務の大半を占める入力や承認業務を自動化し、戦略経理や報告資料の作成など、より付加価値の高い業務に注力できる環境が、同社が思い描く経理の未来だ。MM総研が実施した経理DX領域におけるAI-OCR市場動向調査によれば、2021年度の売上高ベースで、伝票処理業務のうち支払関連書類ソリューションで国内シェア1位に輝いた。

手作業の多い経理業務を自動化する

同社の主要製品は、「Robota」と「Remota」。Robotaは、スキャンされた請求書や領収書の画像から、項目名や数字を読み取るAI-OCRだ。スキャン画像の種類を振り分け、読み取りやすいように回転補正し、読み取った数字の検算のほか、勘定科目の類推と仕訳までをAIにより行う。それらの結果を、APIを通じデータとしてシステムに提供する。読み取り精度が高いため、従来人が目視で行っていた作業を代替することができる。

Remotaは、RobotaのAIに請求書処理用のインターフェース画面を追加したサービスだ。経理業務の中でも、請求書の処理に特化し、請求書にある日付・金額・仕入先などの情報をAI-OCRで読み取り、対応する仕訳情報を付加、Remotaのインターフェース上でそれらの情報を編集し、ERPやワークフローと連携できる。特に、大企業で導入の多い独SAPグループのコンカー(東京都中央区)の請求書管理サービス(コンカー・インボイス)とAPI連携しており、一気通貫で業務の効率化が可能だ。

どのような請求書・領収書でも設定なしで読み取れる点が、Remota/Robotaの最大の強みだ。多くのAI-OCRソリューションは、請求書・領収書のフォーマットを予めシステム内で設定する必要がある。Remota/Robotaは経理に特化したAIとして、膨大な量の領収書、請求書を学習してきた。その結果、ユーザーによるOCRのためのフォーマットの定義を不要とし、さらに、高精度で読み取りから照合作業までのシームレスな自動化を可能にした。

大手企業が多数採用、AIの精度向上促進

Remota/Robotaは、領収書・請求書が月10万枚を超えるような、自動化のメリットが大きい大企業から導入が進んでいる。これまでの大企業は人件費の安い海外に単純な作業を委託することが多かった。しかし世界的なインフレなど経済環境の変化による委託費の高騰を背景に、同社の顧客はRemotaにより経理事務を自動化したうえ、事務の国内回帰を実現している。こうした大企業との取引によりRemota/Robotaの領収書・請求書の学習量が増し、さらに精度が上がるという、正の循環が生まれている。

電帳法改正・インボイス制度へも対応

2023年から2024年にかけて、電子帳票保存法改正、インボイス制度が本格始動する。紙の領収書スキャン時の画素数や、事業者の登録番号の確認など、新しい法制度への対応には細かい事項まで網羅し、対処する必要がある。

経理業務AIも、こうした法制度の変化に俊敏に対応していく必要がある。国の動きをキャッチし、ソリューションに反映するというプロセスは容易ではないが、ファーストアカウンティングでは企画、開発、営業、カスタマーサクセスなど全社一丸で取り組み、いちはやく電子帳簿保存法やインボイス制度の要件に対応した機能を開発し、経理ファーストのソリューションの提供につなげている。

ファーストアカウンティングは、2021年12月に、シリーズCラウンドの資金調達を行い、これまで累計約14億円を調達した。調達した資金で開発体制を拡充し、Remota/Robotaをはじめ経理ソリューションをより使いやすく進化させる。特に尽力するのが電子インボイスの国際規格である「Peppol(ペポル)」への対応だ。国内でもPeppolに対応したサービスの増加で、企業間の電子取引の自動化や高度化が進むことが期待される。同社はデジタル庁よりPeppolサービスプロバイダーとして認定を受け、Peppolデータを送受信する企業間のアクセスポイントを提供できる。2023年10月に始まる電子インボイス制度が成長の弾みとなろう。経理DXを牽引してきた同社のさらなる飛躍に期待が高まる。