銀行、証券のクロスユース率は楽天が首位を堅持

「金融/証券サービスの携帯キャリア別利用状況調査」(2025年8月時点)

2025年11月05日

■ 銀行、証券サービスのクロスユース率は楽天モバイルがトップを維持

■ 銀行サービスでは、auが「auじぶん銀行」の利用拡大で伸び率首位

■ 楽天は自社の経済圏連携でユーザー定着を加速

概要

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、携帯キャリア4社がそれぞれ自社グループで提供する銀行及び証券サービスの利用状況の調査結果を発表した。携帯電話利用者が、契約先の携帯キャリアが提供する各種サービスを「最も利用している」と回答した比率(以下クロスユース率※1)を指標とした。このクロスユース率により、自社の各種サービスで、グループ内の相乗効果を上げ、利用者の囲い込みにつながっているかどうかがわかる。本調査では、15~79歳の携帯キャリア4社を利用している男女2万6979人を対象にWebアンケート調査を行い、銀行口座、証券口座の利用状況について確認した。

 楽天モバイルが銀行・証券ともに首位を維持した。銀行では楽天モバイル契約者の23.1%(前年と同率)が楽天銀行をメインに利用し、証券では24.5%が楽天証券を最も利用している(データ1)。特に銀行サービスにおけるクロスユース率では、2位のau(KDDI)の3.7%を大きく引き離しており、楽天経済圏の結束力が改めて示された。

一方、auは「auじぶん銀行」連携施策の拡充で前年から0.4ポイント上昇し、4キャリア中で最も伸び率が高かった。ソフトバンクはPayPay銀行が2.6%(0.3ポイント低下)とやや低下し、NTTドコモはdスマートバンクが0.1%と限定的な利用率だが、2025年10月から新サービス「d NEOBANK」との連携を始めており、今後の展開が注目される。

※1  クロスユース率:携帯電話利用者が契約先の携帯キャリアが提供するサービス(提携先も含む)をどの程度利用しているかの比率。これが高いほど「利用者の囲い込み」につながっていることになる

※2 楽天モバイルは楽天MNOサービス利用者のみ集計

携帯キャリアと銀行のクロスユース率は楽天がトップに

携帯キャリアと銀行サービスの利用率・クロスユース率をみると、楽天モバイルユーザーによる楽天銀行の利用率は54.1%と前年と同率で過半数を維持し、メイン利用(クロスユース率)は23.1%と4キャリア中で圧倒的な首位を守った(データ1)。楽天はモバイル契約者が「楽天銀行」に申し込むと1500ポイントを付与するキャンペーンを毎月実施しており、モバイル契約者に銀行口座開設を促す取り組みを実施している。また、楽天銀行・証券などの既契約者は本人確認が簡略化される「ワンクリック申し込み」に対応しており、手続き面でも利用促進が進む。

auユーザーによるauじぶん銀行のクロスユース率は3.7%(0.4ポイント上昇)で、伸び率トップとなった(データ2)。KDDIは「au PAY」や「マネ活プラン」による金融サービス連携を拡大し、通信料金の支払いにau PAYを利用することでポイント還元率が上昇するなど、経済圏内の相互利用を促している。ソフトバンクユーザーのPayPay銀行は2.6%(0.3ポイント低下)でやや低下したが、給与のデジタル払い対応やPayPayカード連携強化など、生活決済インフラとしての機能拡充を続けている。ドコモはdスマートバンクのクロスユース率が0.1%と低迷しているが、2025年10月から住信SBIネット銀行と連携した「d NEOBANK」を提供開始しており、今後の金融サービス統合に弾みをつける構えだ。

携帯キャリアとメインで利用している銀行サービスの利用状況(上位5行)をみると、ドコモ・ソフトバンク・auユーザーはいずれも地方銀行が1位となり、楽天モバイルのみが地方銀行を抑えて楽天銀行がトップとなった(データ3)

楽天モバイルでは、楽天銀行をメインで利用しているユーザーが23.1%に達し、地方銀行(19.4%)やゆうちょ銀行(15.3%)を大きく上回った。モバイル契約者が銀行口座を開設し、一定条件を達成するとポイントを付与するキャンペーンや、本人確認を簡素化できる「ワンクリック申し込み」によって、楽天グループ内でのサービス利用を促進している。

一方、ドコモユーザーは地方銀行(30.8%)が最も多く、次いでゆうちょ銀行(17.1%)、三菱UFJ銀行(11.0%)と続いた。ドコモは三菱UFJ銀行と連携した「dスマートバンク」や住信SBIネット銀行がドコモグループに参画することに伴い開始した「d NEOBANK」など、金融サービスの一体化を進めている。ソフトバンクユーザーでは地方銀行が26.7%で首位、続いてゆうちょ銀行(14.9%)、三菱UFJ銀行(14.3%)。PayPay銀行は給与のデジタル払いなどで存在感を増すが、メイン口座としての利用では地方銀行などの根強いシェアが残る。auユーザーも地方銀行(28.4%)が1位で、ゆうちょ銀行(16.8%)、三菱UFJ銀行(11.1%)が続いた。auじぶん銀行は上位5行に入らなかったが、「au PAY」や「マネ活プラン」による金融連携強化で利用率そのものは上昇しており、今後のクロスユース率拡大が期待される。

携帯キャリアと証券のクロスユース率は楽天がトップ

携帯キャリアと証券サービスのクロスユース率をみると、楽天モバイルユーザーによる楽天証券の利用率が32.7%、そのうち最も利用しているとの回答(クロスユース率)は24.5%で、前年から0.2ポイント上昇し、4キャリア中トップを維持した(データ1、4)。楽天はモバイル契約者がエントリーし楽天証券の口座を開設すると2000ポイント、さらにNISA(少額投資非課税制度)口座を同時開設すると1000ポイントを追加で付与するキャンペーンを継続しており、金融サービス間のシナジー形成に成功している。楽天証券はauユーザーでも最も利用率が高く、ドコモ・ソフトバンクユーザーにおいても2位にランクインしており、キャリアを超えて支持を広げている。

auユーザーでは三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券)のクロスユース率が2.3%(0.1ポイント低下)となり、わずかに低下した。2025年2月に「三菱UFJ eスマート証券」へ社名変更し、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下のネット証券としてブランドを再定義。auじぶん銀行やpontaポイントとの連携は継続し、「auマネ活プラン」でのクレカ積み立てによるポイント還元や、全国のauショップで実施される「マネ活セミナー」など、金融リテラシー向上と顧客囲い込みの両面で活動を強化している。

ソフトバンクユーザーのPayPay証券はクロスユース率1.2%(0.1ポイント低下)となった。PayPayマネーやカードを通じた資産運用サービスは拡充しているものの、他社のような通信・証券連携キャンペーンは限定的で、クロスユース率には反映されにくい状況にある。もっとも、2024年末から2025年春にかけて「PayPay資産運用」利用者を対象に抽選で購入金額の最大100%が当たる大型キャンペーンを展開しており、今後の利用促進効果が期待される。

ドコモユーザーのマネックス証券はクロスユース率1.9%(0.1ポイント上昇)で、前年からわずかに上昇した。2024年1月にマネックスグループとの業務提携を開始し、同年9月からdアカウント連携をスタート。投資信託の保有でdポイントが貯まり、ポイントで投資信託の購入も可能となった。さらに、NISA口座開設やクレカ積み立てでポイントが付与されるキャンペーンを拡大しており、ドコモ経済圏における金融連携を着実に強化している。2025年6月に終了した「eximoポイ活」に代わり、「ドコモポイ活20」「ドコモポイ活MAX」など新たな料金体系でもクレカ積み立て還元率を引き上げており、今後の定着が注目される。また、ドコモ・ソフトバンク両ユーザーではSBI証券の利用率が最も高い(auユーザーは楽天証券が1位)。SBI証券は国内株式取引の売買手数料を無料化しており、キャリアの垣根を越えて支持を集めている。

 

楽天はグループ内連携で圧倒、ドコモ・ソフトバンクはSBIがリード

携帯キャリアと証券会社の利用状況(上位5社)をみると、楽天モバイルでは楽天証券が24.5%で1位、SBI証券が11.4%で2位、野村証券が3.9%で3位となった(データ5)。楽天グループはモバイル契約者向けに証券口座開設やNISA同時開設でポイントを付与するキャンペーンを継続しており、強固なグループ内シナジーによってトップシェアを維持している。

一方で、SBI証券は株式売買手数料の無料化を背景に、どのキャリアでも上位にランクイン。ソフトバンクユーザーではSBI証券が8.7%で1位、楽天証券が7.5%で2位。ドコモユーザーでもSBI証券(8.2%)がトップ、楽天証券(7.8%)が僅差で続いた。手数料無料化の効果がキャリアを問わず浸透しており、メガバンク系証券から個人投資家を取り込んでいるとみられる。

auユーザーでは楽天証券(7.7%)が1位で、SBI証券(6.7%)、野村証券(6.1%)が続く。2025年2月に社名変更した「三菱UFJ eスマート証券」は5位(2.3%)に入り、グループ内でのクロスユースは限定的ながらも、auじぶん銀行やpontaポイントとの連携施策で徐々に存在感を高めている。また、大和証券やSMBC日興証券といった大手証券も、依然として全キャリアで上位に位置しており、対面型サービスや信頼感による安定的な支持が続いている。

銀行、証券のまとめ意向では楽天が圧倒的

各キャリアのユーザーに「メインで使っている携帯電話会社と、銀行や証券などのサービスをまとめたいか」を尋ねた。銀行口座をみると、楽天モバイルユーザーでは「すでに利用している」との回答が54%と圧倒的に高く、さらに「まとめたい」「ややまとめたい」とした回答も7%に上った。一方で、「まとめたくない」「あまりまとめたくない」とネガティブな回答は20%にとどまり、4キャリアの中で最も“まとめ利用”への前向き姿勢が強いことがわかった(データ6)

auとソフトバンクは「すでに利用している」との回答がそれぞれ17%、16%。「まとめたい」「ややまとめたい」意向が14%、12%と両キャリアユーザーは慎重ながらも一定の関心を示しているとみられる。一方、ドコモは「すでに利用している」が1%と最も低く、「まとめたい」「ややまとめたい」意向が15%あるものの、「まとめたくない」「あまりまとめたくない」が43%に達した。このことから、楽天モバイルが自社経済圏の浸透度で他社を大きく引き離している一方、ドコモは依然として通信と金融を分けて利用する傾向が強いことがうかがえる。

証券口座のまとめ意向についても、楽天モバイルユーザーが突出しており、すでに利用している人が約3割を占めたうえ、「まとめたい」「ややまとめたい」と回答した割合もそれぞれ3%あった(データ7)

au・ソフトバンク・ドコモは、「すでに利用している」「まとめたい」「ややまとめたい」の割合の合計がいずれも1割前後で拮抗しており、金融サービスをキャリア内で完結させる意向は依然として限定的である。楽天モバイルがモバイル・銀行・証券の一体運用を通じて経済圏内完結型の利用スタイルを確立しつつあるのに対し、他キャリアは依然「通信と金融の分離利用」が主流であることが浮き彫りとなった。

銀行・証券のクロスユース率では、今回の調査でも楽天モバイルの優位が鮮明だった。モバイル契約者へのポイント付与キャンペーンや、楽天銀行・楽天証券の口座開設による本人確認の簡素化など、モバイルと金融サービスを一体化した利用体験が定着していることが要因とみられる。これにより、楽天は通信と金融を往来する利用導線を完成させ、他キャリアに先んじて「楽天経済圏」の中核を固めた。

一方、ドコモはマネックス証券との連携を軸にdポイント経済圏との統合を進め、auは「マネ活プラン」を通じた金融教育と店舗施策を強化。ソフトバンクもPayPay銀行、PayPay証券を中心に金融領域を拡大しているが、依然として利用率は限定的だ。

2024年に始まった新NISAが投資層のすそ野を広げる中、通信と金融の融合は「料金プラン」からポイ活をメインとした「資産形成プラン」へと進化しつつある。2025年以降は、単なるサービス連携ではなく、キャリアごとの経済圏戦略でユーザーの金融行動そのものをどう変えるかが焦点になるだろう。

以上

 

■調査概要

  1. 調査対象:15~79歳の携帯キャリア4社を利用している男女
  2. 回答件数:3万2916人

(うち、現在4キャリアを個人利用かつメインで利用している回答者を対象に分析。

ドコモ:1万6073人、au :7750人、ソフトバンク:4719人、楽天モバイル:4374人)

  1. 調査方法:Webアンケート
  2. 調査期間:2025年8月8~16日

■注意事項

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