キャリアショップは販売拠点から地域サービス拠点へ

「スマートフォン販売店舗数の実態調査(2024年3月時点)」

2024年12月19日

■携帯電話の販売店舗数は全国で10,742店舗、うちキャリアショップは7,269店舗

■キャリアショップを運営する代理店企業は約800社

■1店舗あたりの人口カバーは16,841人、カバー面積は2平方キロメートル

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2024年3月時点の日本における携帯電話販売店の店舗数や運営代理店および地域別特性を調査し、その実態をまとめた。日本における携帯電話・スマートフォンの販売店舗数は全体で10,742店舗である。その内訳として「キャリアショップ」が7,269店舗(構成比67.7%)、「家電量販店」が3,157店舗(同29.4%)、「一般販売店」が316店舗(同2.9%)となっている。ショップの数という視点ではキャリアショップが圧倒的なシェアを持っており、多くの消費者は同ショップが提供する専門的なサービスや対面による細やかなサポートを重視していることが伺える。

キャリアごとの店舗数を比較すると、ソフトバンクが2,531店舗(シェア34.8%)で最も多く、次いでKDDIが2,319店舗(同31.9%)、NTTドコモ(以下ドコモ)が2,071店舗(28.5%)、楽天モバイルが348店舗(4.8%)となっている。ソフトバンクとKDDIの大部分のショップでは、それぞれワイモバイル、UQモバイルのサブブランドを取り扱っているが、上記店舗数にはワイモバイル、UQモバイルを単独で取り扱う小型店舗を含めている。

KDDIとソフトバンクはサブブランドも積極的に取り扱う店舗展開により、他キャリア利用者を含めた顧客接点を増やす戦略をとっているようだ。ドコモはショップ数こそ3番手だが、店舗の立地や1店舗あたりの広さには定評がある。楽天モバイルは2020年にMNOサービスを開始して4年あまりであり、先行する3社と比較すると店舗数は見劣りするのは致し方ないだろう。しかし、楽天市場を運営する同社はオンラインでの契約獲得には強みがあり、2024年10月には契約数が800万件を突破したことを発表した。

キャリアショップを運営する代理店企業は約800社

キャリアショップは、通信事業者とユーザーをつなぐ重要な役割を果たしており、その運営の大半はキャリア自身ではなく、販売代理店によって行われている。また、販売代理店は1次代理店と2次代理店の2層構造で成り立っており、1次代理店は通信事業者と直接契約を結び、商品やサービスの販売を行う役割を担い、2次代理店に対しては運営業務の一部を委託し、販売促進や営業支援を行うことで競争力を高めることが求められる。この構造により、1次代理店は広範囲な市場にアクセスして多くの販売台数を確保し、2次代理店は地域密着型の事業を迅速に展開することが可能になっている。

キャリアショップを運営する販売代理店の企業数は1次、2次をあわせて約800社あり、うち1次代理店は36%、2次代理店は64%となっている。運営する店舗数でみると、1次代理店による運営(直営)が64%、2次代理店による運営(FC)が34%、通信キャリアによる運営(キャリア直営)が2%となっている。

キャリアごとの特徴を相対的にみると、ドコモとKDDIは運営代理店の数が多く、各企業が地域に密着したサービスを提供し、顧客との接点を増やすための戦略を取っていることが伺える。一方、ソフトバンクは運営代理店1社あたりの店舗数を増やすことで効率的な運営を目指すとともに、ドミナント戦略の一環として特定の代理店が特定の地域に集中して出店することで店舗の運営効率を高め、競争優位性を確立するアプローチをとっていると分析する。キャリアショップの数では見劣りする楽天モバイルは、家電量販店における楽天モバイルコーナーの自社運営化や郵便局内でのオンラインスマホ相談窓口を開設するなど、新規獲得に向けた取り組みを推進している。

地域別の店舗シェアは九州で強いKDDI、東海で強いソフトバンク

キャリアショップ数の地域別シェアをみると、各通信キャリアの市場戦略や地域特性を反映していることがみてとれる。

ドコモは四国シェアが35.7%と全国平均と比較して9.5ポイントも高い。これは地域密着型のサービス展開や顧客サポートの強化が奏功しているようだ。四国は人口が少なく、競争が比較的緩やかなため、地域のニーズに応じたサービスを提供しやすい環境にあるためと分析する。

KDDIは九州シェアが33.2%で全国平均より2.4ポイント高い。これはKDDIのグループ企業である沖縄セルラーが地域特化型の営業戦略を持ち、沖縄県民のニーズに合ったサービスやキャンペーンを展開するためである。その結果、契約数においても沖縄のKDDIシェアは高くなっていると分析する。

ソフトバンクは東海シェアが38.8%で全国平均より6.6ポイント高い。これはソフトバンクの前身であるボーダフォンよりもさらに前の東海デジタルホンが愛知県を中心とした同エリアで積極的に営業していた影響も残っているようだ。楽天モバイルは関西シェアが13.3%、関東シェアが13.2%で全国平均より2ポイント以上高い。新規参入の楽天としては、人口密度が高く効率的な獲得が期待できる両地域に注力したためと分析する。

総じて、地域別キャリアショップのシェアは、各社の戦略や地域特性に基づく競争の結果であり、今後も地域ごとのニーズに応じたサービスの提供が重要になるだろう。

キャリアショップ1店舗あたりの人口カバーは16,841人

総務省による人口統計(2023年10月)をもとに、全国のキャリアショップがカバーする人口をみると、全国平均では1店舗あたり16,841人となった。地域別でみると、関東が20,813人と最も多く、四国が12,643人で最も少なくなった。また、国土交通省による都道府県別の面積データをもとに、キャリアショップがカバーする面積データを算出すると、全国平均では1店舗あたり51.2平方キロメートルとなった。地域別でみると、北海道が236.3平方キロメートルと最も広く、関西が22.1平方キロメートルと最も小さくなった。

今後は大型ショッピングモールでの競争が激化か

飽和状態となりつつあるスマートフォン市場では他社ユーザーの獲得を狙って、各社はファミリーや友人同士など複数人の同時接客も狙える大型ショッピングモールが新たな主戦場となっており、通信キャリア各社による販売競争が過熱している。ショッピングモール内でのキャリアショップの有無に関係なく、イベントスペースへ出張販売を行っており、キャンペーンやノベルティも活用して来店者に対する積極的な声かけを行っている。

経済産業省への大規模小売店舗の届出面積が30,000平方メートルを超える大型ショッピングセンター170における、各キャリアの出店状況を調査した。その結果、最も多いのはKDDIで113店舗、次いでソフトバンクが112店舗となった。各社のキャリアショップ数に占める大型ショッピングモールへの出店比率をみると、ドコモ4.0%、KDDI4.9%、ソフトバンク4.4%、楽天モバイル23.3%、となり楽天モバイルの出店比率が最も高くなった。

今後は、デジタル化の進展により、オンラインとオフラインの融合を図る「オムニチャネル戦略」が求められる。これにより、リアル店舗の役割を再定義し、顧客との接点を増やすことが可能になる。キャリアショップのショッピングモールへの出店は、集客力やプロモーションの面で利点がある一方で、コストや競争の厳しさといった課題も抱えているため、今後は、消費者のニーズに応じた柔軟な戦略が求められる。

日本のスマートフォン市場ではキャリアショップが主導的な役割を果たしており、その影響力は今後も続くだろう。各キャリアは競争力を維持するために、店舗数のみならず接客品質の向上、サービスの充実を図ることが求められる。キャリアショップは多様な役割を果たしながら進化し、顧客ニーズに応じた柔軟な対応と地域社会への貢献が成功の鍵となるだろう。

 ■本リリースの定義(販売店舗・地域分類)
①キャリアショップはドコモ、KDDI(au,UQモバイル)、ソフトバンク(ソフトバンク,ワイモバイル)、楽天モバイルのMNO4社、6ブランドが対象。MVNOの店舗は含まない
②家電量販店は2023年度中に販売実績のあった店舗のみを集計
③「一般販売店」は複数の通信キャリアのサービスを取り扱っている店舗で「併売店」とも呼ばれる
④楽天モバイルのショップは量販店内の併設店ではなく独立した店舗のみを集計
⑤新品端末を取り扱う店舗
⑥地域区分は通信キャリアにより異なるが、本データでは内閣府が定める地域区分に基づき集計を行い、沖縄は九州に含める

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