携帯キャリアの競争激化でスマートフォン出荷台数は回復

「2024年度上期 国内携帯電話端末の出荷台数調査」

2024年11月13日

■ 2024年度上期の携帯電話出荷台数は1325.1万台(前年同期比8.3%増)

■ スマートフォンは1279.2万台(10.5%増)、アップルが上期として13年連続1位

■ 通期出荷は2903万台(8.8%増)、うちスマートフォン2797万台(9.8%増)と予測

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2024年度上期(2024年4~9月)の国内携帯電話端末の出荷台数を調査し、その結果を発表した。

2024年度上期の総出荷台数は1325.1万台(前年同期比8.3%増)となった。2000年度以降の上期出荷統計として最少であった2023年度上期を上回ったものの、2番目に少ない台数となった。内訳をみると、スマートフォンが1279.2万台(10.5%増)、フィーチャーフォンは45.9万台(29.6%減)、総出荷台数に占めるスマートフォン比率は96.5%(1.8ポイント増)となった。

5Gスマートフォンは1272.9万台(11.1%増)、スマートフォン全体に占める5G対応比率は99.5%に拡大した。スマートフォン出荷台数が上昇した要因は、過去2年間で減少した買い替え需要の回復が大きい。携帯キャリアは新規獲得に加えて、既存顧客の流出防止を含めた機種変更を重視した販売戦略を強化したことも後押しした。AIスマートフォンや折りたたみ形状など、新しいテクノロジーを訴求した新製品も多数登場していることも影響したと分析。一方、フィーチャーフォンは過去最少を更新した。

2024年度通期の総出荷台数は2903万台(8.8%増)、そのうちスマートフォン出荷台数は2797万台(前年度比9.8%増)と予測する。競争激化による携帯キャリア施策の継続により、上期同様に新規獲得・機種変更ともに堅調に推移する見通しである。懸念すべき事案として、総務省による電気通信事業法の省令改正に向けた議論が進んでいる。施行されると携帯キャリアによる1、2年後の下取りを前提とした購入プログラムの見直しや6カ月以内のお試し制度の導入などにより、携帯電話出荷台数にはプラス・マイナス双方の影響を与える可能性があるため、動向を注視する必要がある。

アップルが13期連続で1位を獲得

2024年度上期のメーカー別総出荷台数シェア1位はアップルで、上期実績としては13期連続で1位を獲得した。スマートフォン出荷台数シェアは44.7%(4.5ポイント減)となった。2024年9月に発表した最新のiPhone 16シリーズは無印/Plus/Pro/Pro Maxの全4モデルであった。2022年発売のiPhone 14シリーズ以降はラインアップに変化がない点は新鮮味に欠けるが、1年前(iPhone 15シリーズ)、2年前(iPhone 14シリーズ)モデルも根強い人気が続いている。価格改定をしながら、2年間以上の出荷が期待できることが、安定してシェア1位を獲得できる仕組みとなっている。アップルによる独自の生成AI「Apple Intelligence」の日本語対応は2025年とアナウンスされており、対応以降のiPhone 16シリーズのプロモーションとユーザーの反応が注目される。

 

以下、2位シャープ、3位グーグル、4位サムスン電子、5位の順となった。上位5メーカーで約85%を占める。その他にはFCNT、京セラ、ソニーなど9メーカーが含まれている。

2024年度通期の総出荷台数は2903万台

2024年度通期の総出荷台数は2903万台(前年度比8.8%増)で、2000年度以降の通期出荷台数としては過去2番目に少なくなると予測する。

2024年度通期のスマートフォン出荷台数は2797万台(9.8%増)と予測する。そのうち、5Gスマートフォンの出荷台数比率は2024年度(99.6%)、2025年度(99.7%)、2026年度(99.9%)と限りなく100%に近付き、2027年度以降は5G対応比率が100%になると予測する。

電気通信事業法の一部改正による市場動向の変化に注目

2024年11月現在、総務省による電気通信事業法に基づく省令の改正に向けた議論が進んでいる、ポイントは、①下取り金額プログラムの是正②ミリ波(日本では28GHz帯)対応スマートフォンの割引上限1.5万円引き上げ③お試し契約として6カ月以内最大2万円の割引(すべて税別)――の3点である。

下取りプログラムは購入モデル次第では、1年後や2年後に下取りすることで実質的な値引きとして数十円で購入することができる下取り金額を設定するケースも散見されており、これが中古端末の買い取り及び販売を行う事業者との競争環境に影響を与えているとして見直しされる。下取り施策によって喚起していた端末需要が一時的には減少することが予測されるが、定価を意識した端末ラインアップの見直しや新たな施策の導入により、その影響は長期には及ばないと分析する。

割引上限額は、2023年の電気通信事業法の省令改正により8万円以上の端末では最大4万円と設定された。今回はこの8万円以上のミリ波対応端末の場合はさらに1.5万円の割引を容認するというものだ。ミリ波対応モデルは一部の高価格帯Androidに限定されており、アップル製品は最新のiPhone 16シリーズを含めてすべてミリ波非対応である(米国で販売されるiPhone 16シリーズはすべて対応)。ミリ波端末の普及が進まない理由としては、メーカーの開発における技術的な難易度、対応時の価格転嫁による需要低下、携帯キャリアのネットワーク構築状況と分析する。割引額の1.5万円増額がミリ波非対応でも半数近いシェアを獲得するアップルの戦略を含めて、市場にどのような影響をもたらすか興味深い。

お試し制度の割引は楽天モバイルが要望していたもので、これが容認される見通しである。MNP(携帯番号ポータビリティ)の利用件数は近年では増加の一途をたどっているが、これによりMNP件数のさらなる増加と一時的な利用を含めて複数回線所有としての契約増加が想定され、スマートフォン出荷台数には少なからずプラス影響を与えるだろう。2023年に続いて、電気通信事業法の省令改正が行われる見通しだが、今回の変更による市場動向の変化が注目される。

■携帯電話出荷台数に含まれる端末
① 従来型携帯電話(以下、フィーチャーフォン)
② スマートフォン
・通信事業者別(5分類):1.ドコモ、2.KDDI(au・UQモバイル含む)、3.ソフトバンク(ワイモ
バイル含む)、4.楽天モバイル、5.オープン(メーカー直販やMVNO・
量販店・ECサイトなどを経由して販売されるSIMフリー端末)
③ 総出荷台数(①+②)

■スマートフォンの定義 以下を条件としてMM総研による分類
①以下OSを搭載 (Android、iOS、Windows)
②音声通話が可能 (画面7インチ以上でヘッドセット利用を想定した端末は含まない)
③アプリやソフトウェアなどのカスタマイズが可能
④OS環境として(アプリ)開発仕様が公開されていること
⑤キャリア及びメーカーがスマートフォンと位置づけている製品
※調査時点のため、今後の端末発売状況等に応じて予告なしに変更する可能性があります

補足1:2023年度通期 国内携帯電話端末の出荷台数調査
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=624

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