教育ICTが生徒の学ぶモチベーション向上に寄与、 将来的に産業界のDX推進にも貢献

「生徒による学校でのICT端末の利用動向調査」(2024年11月時点)

2024年12月26日

  • GIGAスクール構想以降、中学校での端末の利用率は94%と全国的に普及
  • 端末を使った学習に対する生徒の満足度は75%で、非GIGA世代より39ポイント上昇
  • 「授業が楽しい」「グループワーク増えた」の割合も上昇、端末を使った学習を評価
  • 「端末利用の学習が楽しい」とした回答者の61%がデジタル職種に興味

OECD(経済協力開発機構)が実施するPISA(生徒の国際学習到達度調査)によると、日本や東アジア諸国は学力が高い半面、学習への自信や意欲が低い傾向がある。また、国内の企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を急ぐ一方で、年々IT(情報技術)人材の不足が深刻化し、ボトルネックとなっている。ICT(情報通信技術)市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は中学3年生から大学生に対しWebアンケート調査を実施し、中学生の時のパソコンやタブレットの学校での利用状況について聞いた。学校でのパソコンやタブレット学習が生徒の学習意欲の向上やIT関連の職業への興味に貢献するかについてまとめた。

GIGAスクール構想以降、端末の利用率は56ポイント上昇

GIGA世代と非GIGA世代を比較すると、中学校でパソコンやタブレットを利用して学習した割合はGIGA世代の方が56ポイント上回った。GIGA世代の端末利用率は94%に達し、全国で広く利用が普及している(データ1)

【データ1】中学生の時のパソコン・タブレットの学校での利用率

 

※GIGAスクール構想は全国の児童・生徒1人に1台のパソコン・タブレットと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。2019年度に開始し、2021年度にはほとんどの公立の中・小学校で「1人1台端末」を活用した学びが始まっている。本リリースでは、現在、授業で端末を利用している中学3年生および高校1年生の回答者を「GIGA世代」としている。一方、「非GIGA世代」は、GIGAスクールの環境が整う前の2020年度以前の世代で、現在大学生である回答者を対象としている。

端末を使った学習に対する生徒の満足度は39ポイント上昇

パソコンやタブレットを使った学習に満足している割合は、GIGA世代は75%、非GIGA世代は36%となり、39ポイントの差が開いた。GIGA世代は利用率に加え、学習への満足度も上がっている(データ2)

【データ2】パソコン・タブレットを使った学習の生徒による満足度 

 

「授業が楽しい」「グループワーク増えた」の割合も上昇、学習意欲向上に貢献

パソコンやタブレットを使った学習の効果として、「パソコンやタブレットを使った学習の方が楽しい」と答えた割合はGIGA世代の方が非GIGA世代を8ポイント上回り、「グループワークやペアワークが増えた」と答えた割合も14ポイント上回った(データ3)。パソコンやタブレットを使った学習が学習意欲の向上に貢献する可能性が示された。

【データ3】パソコン・タブレットを使った学習による授業の変化 ※複数回答

 

「端末利用の学習が楽しい」とした回答者の61%がデジタル職種に興味

パソコンやタブレットを使った学習の長期的な効果として、新しい技術を積極的に取り入れる企業で働きたいかどうかを聞いたところ、「働きたい」と回答した割合がGIGA世代は55%で、非GIGA世代の48%に比べ7ポイントの差にとどまった(データ4)。一方、「パソコンやタブレットを使った学習の方が楽しい」と答えた回答者では、デジタル職種に興味のある割合は61%と高く、「楽しいと思わない」と答えた回答者と比較すると25ポイントの差が開いた(データ5)

【データ4】新しい技術を積極的に取り入れる会社で働きたい割合

 

 

【データ5】デジタル職種への興味

※デジタル職種は情報処理推進機構(IPA)が定めるビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウエアエンジニア、サイバーセキュリティの5つの職種を指す。

教育では学力に加え、自己肯定感や他者とのつながりといった精神的な豊かさも重要視されるようになってきた。OECD(経済協力開発機構)の「Learning Compass2030(学びの羅針盤2030)」や文部科学省の2023~2027年版「教育振興基本計画」でも強調する。教育ICTの効果を考える際にも、このような学習意欲を評価することが重要だ。本調査ではパソコンやタブレットを活用した学習の増加により、学習意欲が高まった子どもが増加したことが明らかになった。端末の利用頻度が高まりや授業の取り入れ方のノウハウができてきたことが影響すると考えられる。学校での端末利用に慎重な意見もあるが、有効な活用方法を集めて共有するとともに、適切な支援をしながら教育現場でのICT活用をさらに推進することが重要だ。

また、GIGAスクール構想を経験した世代は、新しい技術を取り入れる企業への興味を示す割合が若干高かった。世代間の比較では微増にとどまったが、パソコンやタブレットを使うことで、学習意欲が高くなった子どもは、IT関連の職業への興味も高い。学校でのパソコンやタブレットの活用が進むことで、将来的には、国内産業のIT推進や人材不足解消に寄与する可能性を期待する。
以上

レポート発刊のお知らせ
調査対象:中学3年生、高校生、大学生
回答件数:1,200人
調査方法:Webアンケート
調査期間:2024年11月

レポート発刊のお知らせ
本調査結果を掲載したレポートを発刊いたします。詳細については担当(正置)までお問合せください。

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  1. 本プレスリリースは、MM総研が実施した市場調査の結果と分析について、報道機関限定で詳細データを提供するものです。
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■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社です。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀以上にわたって経験と実績を重ねてきました。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供しています。

 

【補足】詳細データ

【データ1(詳細)】回答者が中学生の時のパソコン・タブレットの学校での利用率

 

【データ2(詳細)】パソコン・タブレットを使った学習の生徒による満足度 

 

【データ3(詳細)】パソコン・タブレットを使った学習による授業の変化 ※複数回答

 

【データ4(詳細)】新しい技術を積極的に取り入れる会社で働きたい割合

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