日本のiPhone販売価格は世界39の国・地域の中で安値水準

「世界のiPhone販売価格調査(2024年9月)」

2024年09月18日

■日本のiPhone 16販売価格は世界39の国・地域で3位(iPhone16 Plus除く)

■日本のiPhone指数(2.74%)は24番目。iPhoneシェア40%以上の中で最下位

■日米金利差の縮小による円高揺り戻しでiPhone販売価格の値上げを回避か

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、世界39の国・地域(以下、国と記載)を対象にiPhoneの販売価格を調査し、その結果を発表した。本調査では、米アップルが2024 年9月9日(現地時間)に米国で発表、9月20日に発売開始されるiPhone 16シリーズを中心に各国のアップルオンラインストア(以下、アップルストア)の価格を比較分析した。対象モデルはiPhone 16シリーズからiPhone 16 128GB(以下iPhone 16)、iPhone 16 Plus 256GB(以下iPhone 16 Plus)、iPhone 16 Pro 512GB(以下iPhone 16 Pro)、iPhone 16 Pro Max 1TB(以下iPhone 16 Pro Max)の4モデル、加えて2023年9月発売のiPhone 15 128GB(以下iPhone 15)及び2022年3月発売のiPhone SE第3世代 64GB(以下iPhone SE3)の計6モデルを対象とした。比較分析はアップルストアによる直販価格に各国通貨と円の為替レートを用いた円換算ベースの金額とした。

iPhone 16シリーズの日本での販売価格は、iPhone 16(124,800円)、iPhone 16 Plus(154,800円)、iPhone 16 Pro(204,800円)、iPhone 16 Pro Max(249,800円)で、前モデルiPhone15シリーズと価格は据え置きとなった。この結果、日本はiPhone 16 Plusを除く3モデルで39の国・地域の中で3番目に安く、iPhone 16 Plusは2番目に安い国となった。iPhone 15(112,800円)は6番目に安く、iPhone SE3(62,800円)は最安だった。

iPhone 16シリーズは最安水準

2024年9月発売のiPhone16の販売価格は124,800円で、日本は3番目に安い国であった。最安は中国(119,980円)、2番目はタイ(124,583円)、4番目は香港(125,436円)、5番目はオーストラリア(127,182円)となった。日本以外の平均は147,611円で日本よりも約22,800円高く、最高値のトルコ(270,829円)は日本の約2.2倍となっている。

iPhone 16 Plusは日本が154,800円で2番目に安い国であった。最安は香港(154,527円)、3番目は台湾(158,261円)、4番目は韓国(158,730円)、5番目は中国(159,980円)となった。日本以外の平均は186,453円で日本よりも約31,700円高く、最高値のトルコ(329,163円)は日本よりも約174,000円高くなっている。

iPhone 16 Proは日本が204,800円で3番目に安い国であった。最安は香港(201,800円)、2番目はアップルが本社を構える米国(202,041円)、4番目は台湾(206,087円)、5番目は韓国(211,640円)となった。日本以外の平均は243,023円で日本よりも約38,200円高く、最高値のトルコ(408,329円)は日本よりも約204,000円高くなっている。

iPhone 16 Pro Maxは日本が249,800円で3番目に安い国であった。最安は香港(247,255円)、2番目は米国(248,702円)、4番目は台湾(256,087円)、5番目はオーストラリア(259,000円)となった。日本以外の平均は299,100円で日本よりも49,300円高く、最高値のトルコ(499,996円)は日本の2倍となっている。

日本のiPhone販売価格は世界で2~3番目に安い国であった。日本以外で安値の国はアップルが本社を構える米国、加えて中国・香港、台湾、オーストラリア、タイといったアジア・オセアニア地域となっていることが明らかとなった。一方、最高値は4モデルともにトルコとなった。トルコに次いでブラジルが高くなっている。その要因は消費税や付加価値税及び輸入品に対する関税という特有の税制度が影響していると分析する。安値・高値ともに傾向は2022年6月、2022年9月、2023年9月調査結果と同様である。

iPhone 16シリーズの発売時価格とiPhone 15シリーズの発売時価格を比較して値上げ(値下げ)率を算出した。日本では、iPhone 15シリーズからiPhone16シリーズは価格据え置きとなった。なお、米国における現地販売価格もiPhone 15シリーズからiPhone16シリーズはiPhone 14シリーズからiPhone 15シリーズの際と同様据え置きとなった。iPhone 16の現地通貨による価格比較の結果では、2023年調査対象外のチリを除く38カ国中5カ国で値上げとなった。値下げとなった国数は8カ国でiPhone 15シリーズの19カ国から、11カ国減となった。iPhoneの発売価格の設定については、為替レートが影響していると推察される。

為替相場の影響に伴い順位が変動、iPhone 15/SE3は日本が再び最安水準に

iPhone 16シリーズが発売されたことで、型落ちモデルとなったiPhone 15は世界各国で値下げされた。日本は112,800円でiPhone 16発売前(124,800円)から12,000円の値下げで、日本の価格は6番目の安さとなった。最安は中国(107,980円)、2番目は香港(109,073円)、3番目はタイ(112,083円)、4番目はフィリピン(112,475円)、5番目は台湾(112,609円)の順となった。日本以外の平均は129,535円、最高値はiPhone16シリーズ同様にトルコ(237,496円)であった。

2022年3月発売のiPhone SE3の日本における販売価格はiPhone 16の発売による変化はみられず、62,800円で最安となった。2番目は台湾(64,783円)、3番目はオーストラリア(65,364円)、4番目は米国(66,725円)、5番目は香港(67,255円)の順となった。日本以外の平均は79,893円、最高値は同様にトルコ(133,329円)となった。

 

iPhone 15が発売された2023年9月から2024年9月までの13カ月間のiPhone 15及びiPhone SE3の日本販売価格の順位(安い順)は以下のように推移した。iPhone 15は2023年9月の発売月では2位であったが、2023年8月から2024年7月は2024年1月の2位を除いて最安で推移した。2024年は米ドル・円の為替が一時期161円台に突入するほど円安が進行した。しかし、7月末に日銀が政策金利を0.25%引き上げた後に急速に円高への揺り戻しが起こった影響で、2024年8月以降は順位を下げる結果になったと分析する。iPhone SE3は2023年9月以降、13カ月間最安で推移している。直近の為替変動を加味しても最安となるほど、日本の販売価格は諸外国と比較して安く設定されているためと分析する。

日本のiPhone指数(iPhone 16価格÷平均所得)は2.74%

国や地域で異なる通貨や価格設定となるが、iPhoneの購入のしやすさを比較するため、iPhone 16の価格が年間の平均所得に占める比率を「iPhone指数」として算出した。なお、平均所得はOECD(経済協力開発機構)のデータを参照した(出典1)。OECD加盟国以外はIMF(国際通貨基金)による1人当たりGDPを代替データとして活用した(出典2)。同指数は値が小さいほどiPhoneが購入しやすいといえる。

日本のiPhone指数は2.74%で、39の国・地域の中で24番目(小さい順)と下位にランクされた。最も小さいのはシンガポールで0.77%、2番目はスイス、3番目はアラブ首長国連邦、4番目は米国、5番目はルクセンブルクの順となった。最も高いのはインドで10.19%となった。

日米金利差の縮小による円高シフトがiPhone価格の据え置きに寄与か

2024年のiPhone 16シリーズは2022年から3年連続で、無印/Plus/Pro/Pro Maxの4モデル構成となった。アップルが世界で1位、2位を争う端末ベンダーとして、昨今注目を集めているフォルダブル(画面が折り畳める)端末など、新たなラインアップのサプライズも期待したが、それは2025年以降の楽しみとなった。

日本におけるiPhone 16シリーズの販売価格はすべてiPhone 15シリーズと同じ(据え置き)となった。上述の通り、2024年の米ドル・円の為替が一時期161円台に突入するなど、一時期は急速な円安が進んだ。2022年には円安が原因と想定される理由により、日本のiPhone販売価格は10%以上値上がりした。日本のiPhone 16シリーズの価格はiPhone 15シリーズから据え置きとなったが、これは米国における販売価格(ドル価格)が据え置きとなったことと同様である。今回調査時の米ドル・円レートは142.32円としたが、前回調査時(2023年9月)は147.35円であった。つまり、2024年は円安進行の印象が強いが、8月以降の急激な揺り戻しにより、本調査においては前回調査時よりも円高ということになる。仮に米ドル・円レートが160円を超える円安が続いていた場合、日本のiPhone 16シリーズ価格は1割程度高く設定されていた可能性も残る。2022年の値上げ実績を考慮すれば、為替の状況次第では今後の価格改定の可能性もあるだろう。政治・金融・紛争問題など、様々な不確定要因により為替は常に変動している。日本のiPhone価格にとって、行き過ぎた円安はリスクとなるかもしれない。

 

■調査手法
「販売価格」:アップルストアでの直販価格
      (消費税などの税金を含む。米国はニューヨーク州、カナダはオンタリオ州として計算)
「為替」:各iPhoneの発売(発表)時点、2022年10月以降の月初調査時点
「対象国・地域(全39)」2024年9月のiPhone 16販売価格が安い順(”/”は同額の意)
 中国、タイ、日本、香港、オーストラリア、米国、台湾、アラブ首長国連邦、韓国、ベトナム、カナダ、マレーシア、インド、フィリピン、シンガポール、スイス、チリ、メキシコ、ニュージーランド、ルクセンブルク、英国、ポーランド、ドイツ/オーストリア、スペイン、チェコ、フランス/オランダ/ベルギー、イタリア/アイルランド、ポルトガル、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ハンガリー、ブラジル、トルコ。 

出典1:OECD(経済協力開発機構)「平均所得」
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/average-wages-japanese-version.htm
現地通貨による平均所得を採用

出典2:IMF(国際通貨基金)「一人当たりGDP」
https://www.imf.org/external/datamapper/PPPPC@WEO/OEMDC/ADVEC/WEOWORLD
一人当たりGDPの購買力平価(PPP)換算の米国ドル金額に2024年9月10日時点の為替をかけて算出

参考1:MM総研「2023年度通期 国内携帯電話端末の出荷台数調査」
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=624

 

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