提供戸数は前年比11.1%増の579万戸

「全戸一括型マンションISPシェア調査」(2024年3月末)

2024年07月30日

■2024年3月末の全戸一括型マンションISPの提供戸数は579万戸

■つなぐネットコミュニケーションズが7年連続で首位。全体の純増戸数もトップを維持

■今後3年間の平均成長率は9.2%、純増戸数は60万戸弱を維持すると予測

ⅠCT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2024年3月末時点の全戸一括型マンションISP(インターネット接続事業者)のシェア調査結果を発表した。本調査は、集合住宅の全戸にインターネット接続サービス(光回線ベース・棟内有線配線)を一括で導入・提供する事業者を対象とし、任意加入方式は含まない。市場シェア(データ1)は2024年3月末時点のサービス提供戸数を対象とし、OEM提供分を除いている。

2024年3月末時点の全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数は579.0万戸で、前年同月末比58.0万戸の増加、成長率は11.1%となった(データ2)。2023年度(2023年4月~2024年3月)の同市場は、分譲・賃貸ともに新築物件が2022年度と同等以上の規模で竣工して全戸一括型インターネットサービスの導入も進んだ。一方、既築物件の導入がやや鈍化し、前年度の純増戸数(59.5万戸)を下回った。

事業者別では、つなぐネットコミュニケーションズ(東京都千代田区)が市場シェア18.4%で、7年連続で首位となった。2位は9.6%のファミリーネット・ジャパン(東京都港区)。続いてファイバーゲートが3位、D.U-NET(東京都新宿区)が4位と順位が入れ替わった。2020年度に本格的に提供を始めた、ソニーネットワークコミュニケーションズコネクト(東京都品川区)は前年の10位から7位に浮上した。




※集計数値の見直し等により、2023年3月末以前の提供戸数については遡及修正をしている

事業者動向

つなぐネットコミュニケーションズ
アルテリアグループのつなぐネットコミュニケーションズが提供する「UCOM光 レジデンス」および「e-mansion」は、2024年3月末の提供戸数が106.4万戸(前年同月末比10.0万戸増)と首位の座を堅持した。全体の純増戸数シェアもトップを維持。棟内LAN配線による2.5Gbpsや5Gbpsを実現するサービスや、光配線方式による10Gbpsなど豊富なサービスラインアップで多様な通信ニーズに対応する。新築の分譲・賃貸物件を中心に獲得数を伸ばした。入居者向け優先通信サービス「Connectix(コネクティクス)」はデベロッパーに好評で新築物件では標準採用されている。2023年度はマンションの災害対策を支援する「防災サステナ+」の提供や、旭化成グループのコネプラ(東京都千代田区)のコミュニティ醸成サービス「GOKINJO(ゴキンジョ)」の取り扱いを始めるなど新たな価値を提供し、さらなる獲得を狙う。

ファミリーネット・ジャパン
「CYBERHOME(サイバーホーム)」を提供するファミリーネット・ジャパンは、2024年3月末の提供戸数が55.4万戸(同3.6万戸増)でシェア2位となった。新築分譲物件に加え、賃貸物件の獲得に注力した。近年はマンション管理業務の省人化にも力を入れる。分譲マンションデベロッパーや管理会社向けDXソリューション「アプリStation」は契約から引き渡し、入居までに必要な機能をひとつのプラットフォームで提供する。IoTサービス「rimoco+(リモコプラス)」やAIチャットボットサービス「Virtualレスポンス」もアプリStationに統合でき、多様な顧客の要望に応じて自在に組み合わせられる。rimoco+には各部屋の電力使用状況から居住者の退去を自動検知する機能を追加し、居住者の利用履歴が残るリスクを軽減する。東京電力グループとして今後は太陽光発電や蓄電池、EV充電設備を含めて提案し新たな顧客を獲得していく。

ファイバーゲート
「FGBB」を提供するファイバーゲートは2024年3月末の提供戸数が52.7万戸(同7.2万戸増)で、前年のシェア4位から3位に順位を上げた。全体の純増戸数シェアでは2位となった。得意とする既築の小規模賃貸アパートのほか、新築物件の営業を強化し順調に獲得数を伸ばしている。デベロッパーや管理会社などの新規パートナー開拓も好調だ。近年は10Gbpsの引き合いが増えており、自社で開発した最大2.5Gbpsのルーターを活用するなど高速通信のニーズに対応する。ネットワークカメラや顔認証インターホン「FGスマートコール」、光回線テレビサービス「FGTV」などの販売を強化し、インターネット接続サービスとのクロスセルに注力する。付加価値サービスを武器にインターネット需要を獲得していく。

D.U-NET
大和ハウスグループのD.U-NETは、2024年3月末の提供戸数が52.5万戸(同2.5万戸増)でシェア4位となった。大和リビングの管理物件を中心に賃貸住宅での導入ニーズを獲得したほか、大和ハウスグループ以外の物件からの受注も年々増加している。近年はインターネット回線の品質向上を目的として10Gbps化も積極的に進めており、まずは政令指定都市の再開発で建設された大規模な賃貸物件を主なターゲットに導入を進める。今後はドローンやセンサーなどを用いた画像解析技術を活用し、建物や敷地内の保守・点検を行うことで賃貸住宅の管理業務の効率化を図る方針だ。

ギガプライズ
ギガプライズは本調査のカウントでは数に含まないOEM提供分を含めると、2024年4月時点※1の提供戸数は120.9万戸(2023年3月末比15.7万戸増)と市場シェアを伸ばしている。メインの小規模賃貸物件に加え、大規模な分譲物件もターゲット。引き続きOEM戦略で販売を拡大しつつ、中小規模の管理会社への提案を積極的に進め、新築・既築ともにさらなる獲得を目指す。付加価値サービスはクラウドカメラやスマートロックのほか、2024年4月に業務提携したTerra Charge(東京都港区)のEV充電インフラ「テラチャージ」の取り次ぎを始めるなど、インターネット接続サービスを軸に事業拡大を進める。
※1:2024年4月期は決算期変更に伴い、開示数値を2024年4月末時点に変更。

ソニーネットワークコミュニケーションズコネクト
ソニーネットワークコミュニケーションズコネクトが提供する「NURO 光 Connect」の2023年度の成長率は42%で、前年のシェア10位から7位へと順位を上げた。「NURO 光」を集合住宅向けの全戸一括型サービスとして提供し、純増戸数シェア3位と勢いを見せた。世界的な光ファイバーの伝送規格「GPON(Gigabit Capable Passive Optical Network)」の採用と、「NURO 光 Connect」の導入先に「NURO 光」用に開発した宅内終端装置(ONU)を設置。全戸一括型マンションISP市場では後発の参入ながらも、高速通信を訴求し好調に獲得数を伸ばしている。

市場動向

2023年度の同市場は、分譲・賃貸ともに新築物件が2022年度と同等以上の規模で竣工し、全戸一括型インターネットサービスの導入も進んだ。一方、既築物件への導入がやや鈍化し、全体の純増戸数は58.0万戸となり、前年度(59.5万戸)を下回った。コロナ特需によるインターネット需要が落ち着いたことで反動減になったと推察する。

同市場では全戸一括型のインターネットサービス同士の乗り換え競争も徐々に始まっている。そこには依然として過度な価格競争が見受けられる。関係者からは「物価が上がる一方で、インターネットサービスはデフレ状態が長く続いている。業界全体で価格競争から脱却する必要がある」との声が上がっている。

集合住宅ではインターネットをはじめデジタルの利用が欠かせないものになっている。動画視聴やオンラインゲームなどの娯楽利用にとどまらず、在宅勤務やオンライン授業が普及したことで、通信品質の重要性が高まっている。集合住宅のデジタル環境を高度化することを目的として、2023年11月に集合住宅デジタル高度化協議会(東京都港区、江崎浩理事長、CDEfC)が発足した。マンションISP事業者や通信キャリア、VNE(仮想通信提供者、Virtual Network Enabler)が参画し、通信品質の向上をはじめ同市場を活性化させる働きかけをしている。

2024年度以降の新築物件の竣工は分譲・賃貸ともに減少に向かう見通しだが、全戸一括型インターネットの採用率が継続的に高まっていくことで、全戸一括型マンションISPによるサービス提供戸数は賃貸物件を中心に一定の規模を確保するとみられる。引き続き年間純増戸数は60万戸弱の規模を維持する見込みだ。2024年度からの3年間の年平均成長率は9.2%と予測する。

 

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