ベンダーシェアに変化、自働化に向け生成AI×RPAに期待集まる

「RPA国内利活用動向調査2024」(2024年3月時点)

2024年07月24日

  • 中小企業の導入率は15%と着実に成長、シェア1位はコク―とマイクロソフト
  • 中堅・大手企業では部門浸透率が43%に向上、シェアはマイクロソフトが初めて首位に
  • 生成AI×RPAを利用しているRPAユーザーは31%、検討中の企業も53%と期待は高い

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称 MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、企業1599社を対象にWebアンケート調査を実施し、2024年3月時点のRPA(Robotic Process Automation)の利用状況をまとめた。RPAは主にデスクワークなどで発生する定型作業を、ソフトウエア型ロボットが代行・自動化する技術。調査から、中小企業では導入が着実に増え、安価で使いやすいユーザーインターフェース(UI)やサポートの充実したツールが選択されるようになった。中堅・大手企業では導入率は横ばいだが、企業内利用は進み、ツールの集約が進んだ。今後は「生成AI(人工知能)×RPA」にも期待が集まる。

 

◆中小企業のRPA導入率が15%と着実に成長

年商50億円未満の中小企業では社数ベースの導入率※1が15%となり、前年から3ポイント増加した(データ1)。導入率は右肩上がりで伸びており、準備中・検討中とする企業も23%あることから、今後も成長が続くとみられる。

RPA未検討の中小企業は62%と半数以上を占める。利用しない主な理由として「どういうことができるかわからない」が28%、「効果を期待できない/費用対効果がわからない」が27%、「今の従業員体制で業務を十分こなせている」が24%などを挙げた(複数回答)。RPAに対する理解が進んでいない面もあり、より具体的でわかりやすい効果や用途を示す必要があるだろう。導入率だけをみると、中小企業も普及期に入ろうとしているが、上述のような理由から、中堅・大手企業のような急成長ではなく、年間数ポイントずつの着実な成長をみせると予想する。

 

【データ1】RPAの導入率推移

※1 導入率は分母をWebアンケート調査に回答した社数、分子をRPA導入していると回答した社数で計算。調査は1社1回答に制御している

 

◆中小企業向けシェア1位はコク―社の「マクロマン」と「Microsoft Power Automate」

中小企業におけるRPAベンダーシェア※2は、1位がコク―(東京都千代田区)の「マクロマン」とマイクロソフトの「Microsoft Power Automate」で、同率の18%だった(データ2)。マクロマンはツール無料で、RPA人材の派遣や教育・サポートを有償化するビジネスモデルでシェアを伸ばした。Microsoft Power AutomateはMicrosoft365のシェア拡大に合わせて導入が進んだ。3位はFCEプロセス&テクノロジー(東京都新宿区)の「Robo-Pat DX」で16%だった。専門用語を極力排除し、使いやすさにこだわったUI、無償の伴走サポートなどが導入ハードルを下げている。4位はユーザックシステム(大阪市)の「Auto名人シリーズ」で14%だった。ディヴォートソリューション(東京都港区)の「アシロボ」やキーエンスの「RKシリーズ」なども類似したアプローチでシェアを伸ばしている。

各ツールのシェアは僅差で、ツールも乱立している状況である。前回調査(2022年9月)ではNTTアドバンステクノロジ(東京都新宿区)の「WinActor」などRPA黎明期から知られるツール群がランクインしていたが、中小企業向けにサポートやUIなどを改善したベンダーにシェアを奪われた格好だ。

 

【データ2】中小企業におけるベンダーシェア上位のRPA(n=88) ※複数回答

※2 ベンダーシェアは社数ベース。1社1回答に制御し、複数回答で聴取。RPA導入済みで、年商50億円未満の中小企業を対象に集計した。

 

◆中堅・大手企業では部門への浸透率が向上

年商50億円以上の中堅・大手企業では、導入率は44%と前回調査から1ポイント減となり、伸び悩んだ。2021年度に40%超えとなって以降、横ばいが続いている。利用検討企業も18%と大きく変わっていない。

一方で、RPA導入企業における浸透度合いを測るため、部門浸透率※3をみると、43%と前回調査よりも6ポイント伸びた(データ3)。この1年半の間で利用部門を広げていることがわかる。利用部門として最も多いのは情報システム部門で47%と約半数が利用している(データ4)。システムの運用効率化などで利用されている。2位は営業・販売部門、3位は財務・経理部門と続いた。

ちなみに、中小企業で最も利用されているのは営業・販売部門で50%となっている。システム化されてない領域が多く効果が出やすい、効率化することで売り上げ拡大を図るといった狙いがある。そのほかの部門でも利用は進むが、バックオフィスは業務に特化したSaaS(Software as a Service)やパッケージが充実しているため、中小企業ではRPAを活用するほど大きな業務の塊にならず、人材も限られるため、中堅・大手ほど利用部門が広がっていない。

 

【データ3】中堅・大手企業におけるRPAの部門浸透率※3

※3 浸透率は企業内でのRPA展開度合を測る指標。部門浸透率はRPA導入企業が設置している部門数を分母、RPAを利用している部門を分子として計算。部門数以外にもPC台数、従業員数などで測定している。上グラフでは年商50億円以上の中堅・大手企業を対象に集計した。

 

【データ4】RPAを利用している部門

 

◆中堅・大手企業向けシェアはMicrosoft Power Automateが初めて首位に

ベンダーシェアはMicrosoft Power Automateが24%(前回調査から2ポイント増)で、調査開始以降初めて1位となった(データ5)。Microsoft365のライセンス有効活用で既存のRPAからのスイッチも進んだ。首位を獲得し続けていたWinActorは21%(5ポイント減)で2位に順位を落とした。3位は米UiPath社の「UiPath」で16%(同5ポイント減)となった。前回調査と比較すると、全体として複数利用していたツールを減らし、集約する動きがみられる。一方で、足元では中小企業向けのRPAが大手企業の各拠点や各課など企業よりも小さな単位でターゲティングし、導入され始めている。そのため今後は再び分散する形で、中堅・大手企業のRPAの浸透率が上がるとみられる。

 

【データ5】中堅・大手企業におけるベンダーシェア上位のRPA ※複数回答

 

◆中堅・大手企業では「生成AI×RPA」に期待が集まる

中堅・大手企業では半数以上の企業がRPAなどのあらゆるツールを利用して、全社レベルの自動化を実現しようとしている。その一環として、RPA導入企業の間で生成AIとRPAを組み合わせ、さらに自動化する範囲を広げる動きがある。本格的に活用済みの企業は10%とまだ少ないが、お試し段階のテスト・部分的に活用済みは21%、準備中・検討中は53%と期待は大きい(データ6)。ツールベンダー側も機能拡充やユースケースを示すなど、取り組みを強化している。

全社レベルでの自動化を実現するにあたり、SIベンダーの協力は不可欠だ。調査から約7割の企業が外部ベンダーによる支援が必要ということがわかっている。支援してほしい内容は前回調査と異なり、「適切なデジタル技術やソリューションの提案」が1位となった。生成AIをはじめ、技術進化のスピードが速く、企業側も追いつくための支援を求めるようになっている。

 

【データ6】中堅・大手企業における言語系生成AIとRPAの組み合わせ利用状況

 

AI×RPAはRPAブームが起きた2018年ごろからあるコンセプトで、AIチャットボットと組み合わせてコールセンターを効率化するといったソリューションもあった。しかし、AI構築・運用のハードルも高く、実態としては紙書類をデジタル化するためにAIを活用した光学文字認識(AI-OCR)を組み合わせることが主流だった。今回の生成AIは多くの製品がクラウドベースで企業も手軽に利用できる。こうした背景からも生成AIブームで全社レベルでのプロセス改善、顧客接点の自動化などを進める流れが来ている。この流れに乗り、RPA市場が再び盛り上げることを期待したい。

 

調査概要
調査対象・件数:国内企業1599社
調査方法:Webアンケート
調査期間:2024年3月18~22日 

レポート発刊のお知らせ
本調査結果を掲載したレポートを発刊いたします。詳細については担当(高橋)までお問合せください。 

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