FTTHの2023年度純増数は100万件割れ

「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2024年3月末時点)

2024年06月18日

■2023年度のFTTH年間純増数は82.4万件で、2002年度以来の100万件割れ

■NTT東西のFTTHは第4四半期に初の純減

■固定ブロードバンドシェアはワイヤレスを伸ばしNTTドコモが首位を維持

■2024年度のFTTH純増数はさらに落ち込み、ワイヤレスと同規模を予測

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI、東京都港区、関口和一所長)は、2023年度(2023年4~2024年3月)のブロードバンド回線事業者の加入件数調査結果を発表した。2024年3月末時点のFTTH(光回線サービス)の契約数は4036万件で、年間で82.4万件の純増となった(データ1)。年間の純増数として100万件を割ったのはFTTHサービスの提供が本格的に始まった2002年度以来21年ぶり。2020年度以降の在宅勤務などによるFTTH未利用層の新規需要が2022年度内で一服し、2023年度はさらなる反動減となった。ワイヤレス(ホームルーター)をFTTHの替わりとして選ぶ利用者の割合が徐々に高まっていることも影響した。

2024年度のFTTH市場の純増数は61.1万件と、2023年度をさらに下回ると予測する。ワイヤレスがFTTHの潜在需要層を取り込む流れが続き、FTTH市場の成長スピードはさらに減速する見込み。

【データ1】 FTTH契約数の純増数推移

NTTは東西ともに第4四半期に初の純減

FTTH事業者の契約件数シェア(2024年3月末)では、NTTの光回線(フレッツ光およびコラボ光)契約数が東西合計で2365.3万件(シェア58.6%)となった(データ2)。通年では純増したものの、四半期ごとでみると第4四半期は初の純減となった。シェアは2023年3月末の59.6%から1.0ポイント低下している。

事業者がNTT東西の光回線を借りて自社ブランドで展開するコラボ光の2024年3月末の総契約数は1711.6万件でFTTH市場全体に占める割合は42.4%、NTTの光回線に占める割合は72.4%となった。コラボ光の契約数シェアでは、NTTドコモがシェア首位を維持した。

光回線事業者の中で順調に契約数を伸ばしたのはソニーネットワークコミュニケーションズ。宮城県でエリアを拡大したほか、広島エリアで10Gbpsサービスに対応したNURO光などの純増が貢献し、シェアは3.8%(前年同期比0.3ポイント上昇)を獲得。市場全体の純増数が大きく落ち込むなかで、高品質・大容量の回線を前面に打ち出した積極的な販促施策が奏功した。

アルテリア・ネットワークスは主力の「UCOM光 レジデンス」を中心に集合住宅向け全戸一括型の導入が大型物件でも進み、シェア1.9%を維持した。10Gbpsなど高品質サービスの訴求で新築分譲物件への導入案件を安定的に獲得している。また、賃貸物件向けも継続的に注力している。

【データ2】FTTH契約数・回線事業者シェア(2024年3月末)

※NTT東西にはフレッツ光のほか、光コラボレーションモデルの件数が含まれる
※KDDIにはauひかりのほか、中部テレコミュニケーション(コミュファ光)および沖縄セルラー電話(auひかり ちゅら)などの件数が含まれる
※ソニーネットワークコミュニケーションズにはNURO光のほか、法人向けNUROアクセス、マンション向けNURO 光 Connectなどの件数が含まれる

固定ブロードバンド市場全体ではNTTドコモがシェア1位を維持

固定ブロードバンド(FTTH、ADSL、CATV、ワイヤレス*の合計)市場では、NTTドコモの「docomo home5G」が100万件を超えたほか、「ドコモ光」でOCNインターネットが増加し首位を維持した(データ3)

シェア2位のソフトバンクは、モバイルと「ソフトバンク光」のセット販売や「10ギガ500円ではじめよう」キャンペーンにより増加。「SoftBank Air」も5G端末を訴求し増加。ドコモとの差を再び縮めてきている。

JCOMは、固定回線サービスを軸とした販売にシフトしたことで、回線数が増加。これまで提供してきた同軸ケーブルからFTTHに転換していくことも発表した。

老舗ISPのビッグローブ、ニフティもそれぞれコラボ光を堅調に伸ばし増加している。

*無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

【データ3】固定ブロードバンド契約数・ISPシェア(2024年3月末)

※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズが提供する分が一部含まれる

FTTHは成長鈍化、ワイヤレスは安定的な拡大が続く見通し

固定ブロードバンド市場全体は緩やかに成長が続く見込みである。ADSLは、同市場でシェア首位だったソフトバンクが2024年3月末にサービス提供を終了した。CATVアクセスはFTTH化が進み、契約数の減少が継続する。FTTHやワイヤレスの市場は継続的に拡大する見込み。固定ブロードバンド市場の2024年3月末から2027年3月末までの3年間の年平均成長率は1.5%と予測する(データ4)

【データ4】固定ブロードバンド契約数の推移・予測

※2025年3月末以降は予測値
※ワイヤレスは、無線を利用した宅内据え置き型の高速インターネットサービスを指し、モバイルルーターを含まない

2024年度(2024年4月~2025年3月)のFTTHの年間純増数は61.1万件と、2023年度をさらに下回る規模になると予測する。ワイヤレスがFTTHの潜在需要層を取り込む流れが継続し、FTTH市場の成長スピードはさらに減速する。一方、CATV最大手のJCOMがFTTH化を積極的に進めることを2024年6月に発表し、中期的には同社を中心にCATVアクセスの光化がFTTH市場成長の底上げ材料となるほか、未加入宅を含む集合住宅の全戸一括型での導入やワイヤレスからの一定数の移行が続くことで、2024年度以降の3年間の年平均成長率は1.3%と緩やかな成長が継続すると予測する。FTTH事業者間の契約獲得競争はさらに激化するとみられ、高速大容量の10Gbpsサービスが主戦場になっていくと分析している。

ワイヤレス市場は、工事不要で手軽に導入できるメリットを背景に単身世帯などのニーズを取り込み、堅調に拡大。2024年3月末時点で固定ブロードバンド市場の1割超を占める。2024年度の純増数はFTTHの純増数とほぼ同規模になると見込む。ワイヤレスサービスを提供する携帯キャリア各社は自社のネットワークを使用する同サービスに力を入れる動きも見られ、2024年度以降も引き続き拡大する。今後3年間の年平均成長率は9.5%と予測する。


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